㈱実用技術研究室
超短パルスレーザー応用、レーザー微細加工、技術コンサルティング
超短パルスレーザー応用、レーザー微細加工、技術コンサルティング
レーザー微細加工は、多くの技術が組み合わさって成り立っています。レーザー微細加工の技術開発や、実際の製造に携わる方々は、ベースとなっているぞれぞれの技術に関して、広くて深い知識や技術を有していることが求められます。そのように、大変な技術分野であるにもかかわらず、この分野には参考となる「教科書」的なものがありません。
この分野の迷える初学者の方々を想定して、レーザー加工の基礎となる技術事項を、web上で「実用技術塾」として継続的に解説してきております。御所属のグループ内での勉強会や、ご自身の自習に、お役立てください。
尚、より専門的、具体的な技術内容に関するセミナーなどのご希望には、個別に対処させて頂きます。
ご遠慮なく、お問い合わせください。
㈱実用技術研究室
e-mail: yma20ka@nifty.com
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開講 (Oct. 16, 2016)、はじめに (Oct. 23, 2016)、パルスレーザー (Oct. 30, 2016)、「時間」と「距離」の目安 (Nov. 6, 2016)、熱的加工とアブレーション加工 (Nov. 13, 2016)、ns-加工プロセスとps-加工プロセスの比較 (Nov. 16, 2016)、ns-加工プロセスとps-加工プロセスの比較 (Nov. 20, 2016)、熱加工 (Nov. 23, 2016)、熱溶融のイメージ (Nov. 27, 2016)、アブレーション (Nov. 30, 2016)、アブレーションのイメージ (Dec. 4, 2016)、レーザー加工の基礎 (Dec. 7, 2016)、波長、周波数、周期、光子エネルギー (Dec. 11, 2016)、連続波、パルス波 (Dec. 14, 2016)、超短パルス波 (Dec. 18, 2016)、仕事、エネルギー、パワー (Dec. 21, 2016)、仕事-1 (Dec. 25, 2016)、物質の三態 (Dec. 28, 2016)、格子エネルギー (Jan. 1, 2017)、仕事-2 (Jan. 4, 2017)、エネルギー-1 (Jan. 8, 2017)、エネルギー-2 (Jan. 11, 2017)、パワー-1 (Jan. 15, 2017)、パワー-2 (Jan. 18, 2017)、パルス幅、パルス持続時間 (Jan. 22, 2017)、平均出力、尖頭出力-1 (Jan. 25, 2017)、平均出力、尖頭出力-2 (Jan. 29, 2017)、平均出力、尖頭出力-3 (Feb. 1, 2017)、光 = 電磁波 (Feb. 5, 2017)、直線偏光 (Feb. 8, 2017)、円偏光 (Feb. 12, 2017)、屈折率とは何か? (Feb. 15, 2017)、光路長 (Feb. 19, 2017)、波長板-1 (Feb. 22, 2017)、波長板-2 (Feb. 26, 2017)、波長板-3 (Mar. 1, 2017)、直線偏光の偏光面の回転 (Mar. 5, 2017)、直線偏光→円偏光 (Mar. 8, 2017)、光減衰器-1 (Mar. 12, 2017)、光減衰器-2 (Mar. 15, 2017)、ND フィルタ (Mar. 19, 2017)、スネルの法則 (Mar. 22, 2017)、s偏光、p偏光 (Mar. 26, 2017)、エネルギー反射率 (Mar. 29, 2017)、反射率の屈折率依存 (Apr. 2, 2017)、金属表面でのエネルギー反射 (Apr. 5, 2017)、透明材料における反射率の入射角度依存 (Apr. 9, 2017)、光を吸収する材料における反射率の入射角度依存 (Apr. 12, 2017)、ガウシアンビーム-1 (Apr. 16, 2017)、ガウシアンビーム-2 (Apr. 19, 2017)、ガウシアンビーム-2 (Oct. 22, 2017)、ガウシアンビーム-3 (Apr. 23, 2017)、コリメーション (Apr. 26, 2017)、ポインチング・スタビリティ (Apr. 30, 2017)
レーザー微細加工技術は、多くの技術から成り立っている。イメージした通りの加工を実現するためには、その前に、多くの技術・知識を学ばねばならない。然しながら、この技術分野には、初学者向けの良書と呼べるものはまだ無い。
我々は、参考となる成書がない環境で、当該技術・知識を独学で得ようと努力しているレーザー微細加工技術者のために、「新実用技術塾」を開講する。
個別の具体的なレーザー微細加工を実現する過程において、種々の問題が発生することが予想される。この塾では、
それら問題の本質が何であるかの議論や、
その問題をどのように克服するかの検討、
に必要となる基礎知識、基礎技術を解説する。何度でも読み返して、基礎体力を養ってほしい。またここでの記述を足掛かりに他の成書で学び、理解を深めてほしい。
レーザー微細加工技術を生産に展開する上での個別、具体的な問題やその解決策は、この塾で一般論として論じるのに馴染まない。また、製造用の加工機が備えるべき仕様などについては総合的に論じる必要があり、基礎技術・知識の解説の範疇を大きく超える。これらの案件に直面して技術的なサポートが必要になったら、遠慮なく我々に連絡されたい。それらは、技術コンサルタント「㈱実用技術研究室」が、最も得意とするところである。また我々を上手く活用されることが、貴社のビジネスの展開において最も効率的・効果的である。
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言葉の意味は、世代、地域で変化する。然しながら日常では、言葉の意味が曖昧であっても、然したる面倒は生じない。
一方、学術分野では、漠然とした或は曖昧な言葉の使い方は許されない。現代の科学・技術の分野では、技術用語の意味は明確に定義されている。
あなたは、ある技術用語の意味を間違って覚えているかもしれない。特に、日常生活と科学・技術の分野で同じ言葉が使われている場合は、技術用語の意味を誤解している確率が高まる。技術用語の意味を誤解していると、グループでの議論が嚙み合わなかったり、結論を誤ってしまうかもしれない。
分かっているつもりの技術用語を含めて、気になった際は面倒がらずに、用語の意味を確認することを習慣にされたい。
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マシニング・センターが一台あれば、色々な種類の加工を行うことができる。然しながら、一台のレーザー光源を持っていたとしても、限られた種類の加工しか行うことができない。実現したい加工案件毎に、それに適したレーザー光源や装置は異なっており、流用は効果的ではない。
厚い材料を切断したり、それに穴を開けたりするheavyな加工には、パルス幅が長く、平均出力の高いレーザー光源が適している。一方でパルス幅が短く、繰返し周波数が高いレーザー光源は、fineな加工に適している。
高平均出力のレーザー光源の働きは、巨木を切り倒す斧のようである。超短パルスレーザー光源の働きは、歯医者の使うドリルのようである。
パルス幅や繰返し周波数、平均出力に加えて、出力ビームの波長も重要である。加工対象の材料が、出力ビームの波長を吸収しない場合、レーザーは材料に影響を及ぼすことができない。照射したビームは材料を素通りしてしまう。レーザーの光エネルギーが材料に作用する(吸収される)ことなしに、レーザー加工は成立しない。
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ぼ~っとしていると、変化は瞬時に始まって終わるように思ってしまう。大袈裟に云うならば、これはテレポーテーションをあり得ると考えているのと同じである。少なくとも、日常の世界ではそんなことは起こらない。ナニモノも光よりも速く動くことはできない。
加工によって除去された物も、デブリスも、移動の速度は有限である。有限の距離を、有限の速度で移動するには、有限の時間が必要である。
レーザー微細加工において、熱拡散現象は、重要な役割を果たす。熱拡散の速度は、人が歩く速度よりもずっと遅い。
照射されるレーザー・パルスの持続時間内で、また周期的に照射されるパルスとパルスとの間のビームが照射されない時間の間に、どのような速度であれば、どの程度の距離を移動できるかを理解しておくことは、レーザー加工において生ずる諸問題を検討する際に役に立つ。
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レーザーによる非熱加工プロセスの実用展開において、熱加工と、非熱加工の違いを理解しておくことは大変に重要である。
キーワードは「溶融」である。
熱加工は多くの場合「溶融」の存在を前提としている。
であるならば、「溶融」を伴わないものは、非熱加工になるだろう。
アブレーションは、非熱加工の一つである。
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nsパルス・レーザー加工プロセスとpsパルス・レーザー加工プロセスを比較する。
ワークは、PET(ポリエチレンテレフタレート)製のOHP用シート。このシートに、トレパニングにより穴を開ける。
左の写真は、ナノ秒パルスレーザーを用いて加工したもので、穴のエッジに、溶融・再凝固の痕が見られる。
右の写真は、ピコ秒パルスレーザーを用いた加工で、溶融の痕跡は見られない。白い粉状のものは、「チョーキング」によるものと思われる。
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ワークは、厚さ100 μmのステンレス。水回りの排水溝の網蓋に似たパターンのスリットを開けた。
左の写真は、ナノ秒パルスレーザーを用いたスリット加工。変色や溶融の痕が明瞭に認められる。
右の写真は、ピコ秒パルスレーザーによるスリット加工。溶融や変色の痕跡は見られない。
パルス幅の長いレーザー光源を用いて加工した場合、熱影響を避けることは難しい。
一方、超短パルスレーザー光源を用いると、比較的容易に非熱加工を実現できる。
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熱プロセスに、我々は慣れ親しんでいる。
日常生活において、当たり前になっており、意識すらしないが、お湯を沸かすのも熱プロセスである。
照射されたレーザー光を材料は吸収し、材料において光エネルギーが熱エネルギーに変換される。
熱エネルギーは材料温度を上昇させる。
材料温度が融点を越えると、溶融池が形成される。
更に加熱が続くと、融液は蒸気となる。
しばしば、蒸気は溶融池の内部で発生する。
融液から蒸気への体積変化によって、周りの融液は液滴となって弾き飛ばされる。
また融液は、外部からガス・ジェットを吹き付けることにより、吹き飛ばされることもある。
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物質は、原子や分子からなっている。
物質が固体の状態を保っていられるのは、凝集エネルギーによる。
凝集エネルギーよりも大きなエネルギーを得ると、束縛を解かれ、原子や分子は固体から自由になる。
エネルギーのやり取りが熱過程として行われる場合、特定の原子や分子にのみエネルギーを与えるということはできない。
熱過程は、集団に対して等しく及ぼされる。
温められた物質では、全ての原子が等しくエネルギーを得ている。
「溶融」とは、原子の集団において生じる相変化である。
孤立状態の原子は、溶融することがない。
「気化」もまた、原子の集団において生じる相変化である。
孤立状態の原子は、既に気相にある。
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アブレーションとは、材料表面から、分子、イオン、或はクラスターとして、材料を除去するプロセスの一つである。
その材料除去では、「固相」材料表面から、直接に「気相」に変化した材料が脱離する。
そこには「液相」が存在しない。
アブレーションが成立する条件下では、材料を構成する原子の幾つかが、光から直接にエネルギーを得る。
原子が、固体を形作っている凝集エネルギーよりも大きなエネルギーを得ると、原子は固体から解き放たれ、気体として表面から脱離する。
アブレーションは、個々の原子において生じる相変化である。
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昇華とアブレーションは、よく似たプロセスである。
分子の昇華に必要なエネルギーは、時間及び空間的なエネルギーの揺らぎにより与えられる。
昇華の生じる確率は、極めて小さい。
従って、固体の昇華による体積減少は、小さい。
アブレーションは、高密度の光子束の照射により生じる。
アブレーションの生じる確率は、光子密度に依存する。
一般的に、アブレーションの生じる確率は、昇華の生じる確率よりも高い。
従って、我々は材料加工にアブレーションを適用することができる。
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レーザー微細加工技術は、多くの基礎技術分野から成っている。
光線光学、波動光学、光吸収、光計測、熱拡散、材料物性、レーザー制御、機械ステージ制御、ビーム走査、同期、コンピュータープログラミング、等々。
現在のところ、生産用の設備・機器のメーカーは、「汎用」レーザー微細加工機を実現するに十分な知識・知見を有していない。
生産に従事する技術者は、個々の加工案件毎に、「独力」で最適な生産環境を整えなくてはならない。
この「実用技術塾」では、実際のレーザー加工に関する議論のために、前提として当然に具えておかねばならない、「基礎事項」を解説する。
我々は、超短パルスレーザー加工技術を中心とした、技術コンサルタントである。
生産などの実際において技術支援が必要になったならば、遠慮なく我々のコンサルティング・サービスを利用頂きたい。
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超短パルスレーザー加工における基本波長は、1064 nmである。
これは、“Nd3+” イオンの主発振線である。
この主発振線は、主発振線の角周波数を意味するωで表記されることが多い。
我々は、波長変換結晶を用いた高調波発生により、短波長の光を得ることができる。
第二高調波の波長は532 nmであり、第二高調波の角周波数を意味する2ωで呼ばれる。
第三高調波の波長は355 nmであり3ωと、第四高調波の波長は266 nmであり4ωと呼ばれる。
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連続波は、CW (continuous wave) と略記される。
パルス波は、幾つかのパラメータで特徴づけられる。
繰返し周波数は、一秒間に出力されるパルスの数である。
周期は、繰返し周波数の逆数である。
パルス幅は、パルス持続時間 (pulse duration) とも呼ばれる。
レーザーパルスは、パケットのようである。
一つのレーザーパルスの内には、多くの光電場の振動が含まれている。
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光は二つの性質を併せ持っている。
一つは波であり、もう一つは量子である。
例えば、波長1ミクロンの光の周波数は約300 THzである。
1 msのパルス幅のレーザーパルスには、300 Giga回の光電場の振動がある。
パルス幅が長いと、パルスに含まれる光電場の振動の回数は、想像が難しい程の桁になる。
従って、パルス幅が長い光パルスは、波の性質を強く示す。
一方、
10 psのパルス幅のパルスには、光電場の振動は3,000程しかない。
100 fsのパルス幅では、それは30回程度である。
超短パルスレーザーの一つのパルスに含まれる光電場の振動は、僅かであり、指折り数えられる程である。
従って、超短パルスレーザーの光パルスは、量子の性質を示す。
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「仕事」とは何か?
日常生活では、お金を得るためにする行動である。
科学技術の分野では、「仕事」は、エネルギーの投入によって生じた変化である。
レーザー微細加工の領域では、「仕事」は、材料をその表面から除去することである。
材料の除去体積は、レーザーの照射によって投入した「エネルギー」の量に比例する。
そして、照射したレーザーの「パワー」は、単位時間当たりに除去した材料体積に比例する。
我々はそれを「仕事率」と呼んでいる。
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「仕事」が科学技術用語であることを覚えているだろうか。
レーザー微細加工における「仕事」について考える。
主な作業は、材料表面に形状を作ることである。
最も簡単な形状は、微細な穴や、溝である。
微細な窪みや止まり穴の加工には、「腕」が要る。
従来的な、試行錯誤的な加工技術開発で対処できるのは、ここまでである。
先進的な加工、例えば材料表面に沢山の微細半球形状などを加工しようとするならば、レーザー加工の理屈を理解し、科学技術の一つとしてレーザー微細加工技術に向き合わねばならない。
さて、
日常生活では「彫る」とか「削る」と表現するが、要するに、レーザー微細加工とは材料をその表面から除去するプロセスである。
穴あけや溝彫りという作業と、エネルギーの単位であるジュールの結びつきを考えることは難しい。
材料除去とジュールの関係は容易に考えられる。
お湯を沸かし続ければ、お湯の体積は減少する。
お湯を固体材料に置き換えよう。
レーザー微細加工を、「光エネルギーの投入による材料のその表面からの蒸発/昇華」と近似できる。
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固体の水は氷である。
氷が融解熱を得ると、氷は融点で水になる。
水が蒸発熱を得ると、水は沸点で蒸気になる。
固相から液相を通って気相に至る道は、「熱過程」である。
固相から気相に至る別の道がある。
昇華である。
昇華は「非熱過程」である。
昇華熱は、融解熱と蒸発熱の和にほぼ等しい。
昇華とアブレーションは良く似た過程である。
昇華とアブレーションの違いは、その発生確率である。
昇華の発生確率は極めて小さい。
特別な状況では、アブレーションの発生確率は非常に高くなる。
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材料は固体状態を、凝集エネルギーによって保っている。
格子エネルギーは、結晶材料の凝集エネルギーである。
格子エネルギーの定義は、「0 Kにおいて、結晶材料を、その要素である原子やイオン、分子にばらばらにするのに必要なエネルギー」である。
昇華熱と、格子エネルギーの意味は、殆ど同じである。
表は、幾つかの主要な材料についての、格子エネルギーと昇華熱である。
格子エネルギーと昇華熱の値は、良く一致している。
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「完全な気化」モデルは、熱過程を近似したものである。
「完全な昇華」モデルは、非熱過程を近似したものである。
我々は、「エネルギー損失がない」条件下の、材料の体積除去に必要なエネルギーを計算できるようになった。
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日常生活では、多くの人々が、エネルギーとパワーの単語を、その違いを良く意識せずに使っている。
科学技術分野における「エネルギー」の意味は、「仕事をすることができる能力」である。
光を電磁波として考えるとき、光がエネルギーであることを理解するのは、ちょっと難しい。
多分、光のもう一つの性質である光子(量子)を考えた方が、光がエネルギーであることを理解しやすいだろう。
光子の持つエネルギーは、光の周波数に比例する。
また、光の持つエネルギーは、光の波長に反比例する。
多くのエネルギーを投入するとは、多くの光子を照射することである。
強い光とは、光子密度の高い光である。
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光を波と考えると、光吸収を理解しやすい。
波の持つエネルギーは、その振幅の二乗に比例する。
電磁波の持つエネルギーも同じである。
然しながら、光を電磁波と考えると、照射エネルギーの総量や照射エネルギー密度などを想像することは難しい。
これらを考えるには、光を量子(光子)と考えると良い。
一つの光子の持つエネルギーは、10の-19乗程である。
この大きな桁の数字は、書くのも読むのも面倒である。
電位差1Vを移動する電子は、エネルギーの増減を経験する。
このエネルギーを1 eV(= 1.602E-19 J)として、光子のエネルギーの表記に用いることが多い。
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「パワー」はいろんな顔を持っている。
エネルギー源からの出力
電力の消費
仕事率
科学技術の領域では、これら全てが「パワー」と呼ばれる。
「パワー」のそれぞれの顔に共通する定義を探そう。
最も単純化された定義は、「単位時間当たりのエネルギーの量」である。
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レーザー発振器の仕様の一つに平均出力がある。
平均出力の定義は、「一秒間に、レーザー発振器から出力されるエネルギーの総和」である。
表現を変えると、平均出力とは「そのレーザー発振器を用いて実現できる仕事率の最大値」である。
この定義に基づき、我々は、要求されるスループットに適するレーザー発振器を選定することができる。
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ナノ秒よりも長い持続時間のパルス幅は、フォトダイオードを用いて計測される。
超短パルスレーザーのパルス幅は、オートコリレーターを用いて計測される。
矩形波のパルスの場合、パルス幅は矩形の辺の長さと定義される。
正規分布のように光強度が変化するパルスの場合は、FWHM(半値全幅)で定義される。
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平均出力 Pave は、パワーメーターで計測される。
レーザー発振器の繰返し周波数が Frep である時、パルスエネルギーは Pave / Frep である。
平均出力は、繰返し周波数とパルスエネルギーの積で与えられる、と云える。
パルスエネルギーが epulse であり、パルス幅が tpulse である時、尖頭出力は epulse / tpulse で与えられる。
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「パワー」の定義は、「単位時間当たりのエネルギーの量」である。
パワーは、エネルギーを時間で割って計算される。
「時間」が計測時間であり、「エネルギー」が計測されたエネルギー総量である時、平均出力が算出される。
一方、「時間」がパルス幅であり、「エネルギー」がパルスエネルギーである時、尖頭出力が計算される。
平均出力は、仕事率と同じ意味を持つ。
単位時間あたりに期待される仕事の量である。
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固体をその要素にまで分解するには、固体は凝集エネルギーに相当するエネルギーを得なければならない。
材料の凝集エネルギーは、格子エネルギーや昇華熱と呼ばれる。
我々は、材料除去に必要なエネルギーを、凝集エネルギーから推定できる。
予定する加工に適したレーザー発振器を選定するには、仕事率を計算する必要がある。
先ず、除去体積を計算する。
加工に必要なエネルギーは、凝集エネルギーと除去体積の積で与えられる。
加工を、時間T内に完了させたいのであれば、仕事率は、加工に必要なエネルギーを時間Tで割ることで得られる。
予定する加工に適したレーザー発振器とは、計算された仕事率よりも平均出力が大きなものである。
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光ビームの偏光は、レーザー加工の種々の場面で、重要な役割を果たす。
光の偏光を理解するには、光を電磁波として考える。
ファラディの電磁誘導の法則は、電場と磁場の関係を示す。
磁場の時間変化は、電場の空間変化を生成する。
電場の空間変化の大きさは磁場の時間変化に比例し、電場の方向は磁場の方向と直交している。
アンペール・マクスウェルの法則は、電流と磁場の関係を示す。
電場の時間変化は、磁場の空間変化を生成する。
磁場の空間変化の大きさは電場の時間変化に比例し、磁場のの方向は電場の方向と直交している。
これら二つの法則から、電磁波の存在は説明される。
偏光の方向は、電磁波の電場の方向と定義される。
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光は、z-軸に沿って伝搬しているものとする。
光電場は、x-y平面内にある。
光電場のx-成分は、振幅Ex0、位相φxを持つ。
y-成分の振幅と位相は、それぞれEy0、φyである。
偏光は、これらのパラメータで分類される。
φx = φy の場合を、直線偏光と呼ぶ。
Eの方向とz-軸は直交している。
光電場Eは、常に同じ方向を向いている。
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Ex0=Ey0 、|φx - φy|=π / 2 の場合を、円偏光と云う。
Eの方向とz-軸は直交している。
ベクトルEの終点は、x-y平面で円を描く。
直線偏光でも円偏光でもないものを、楕円偏光と呼ぶ。
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真空中の光電場を記述する式と、屈折率nの媒体中の光電場を記述する式を比較しよう。
λ と λ/n を除くと、両式は同じである。
如何なる媒体中であっても、光の周波数(振動数)は不変である。
真空中の光速度は c0 = ν・λ である。ここで ν と λ は、それぞれ光の周波数、真空中での波長である。
媒体中での光速度は c = ν・λ / n である。ここで n は媒体の屈折率である。
c = c0 / n
屈折率 n の媒体中の光速度は、真空中の光速度の 1 / n になる。
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媒体の光路長は n・d である。ここで n と d は、それぞれ媒体の屈折率および厚さである。
真空を含み、同じ光路長の媒体がある時、以下が成立する。
(1) 光が媒体を通過するのに要する時間は同じである。
(2) 媒体中にある光の波(節)の数は同じである。
(3) 媒体を通過する間の光の位相の変化量は同じである。
位相の変化量は 2π・n・d / λ である。
光路長の考え方は、波長板の機能を理解するのに役立つ。
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波長板は複屈折材料から成る。
光が複屈折材料内を伝搬する時に、複屈折が生じない伝搬方向がある。この方向を光学軸と呼ぶ。
光学軸を1本持つ結晶を、一軸結晶と呼ぶ。2本持つものを、二軸結晶と呼ぶ。波長板に用いられる主要材料である結晶石英は、一軸結晶である。
波長板の形状は平行平板であり、平板内に光学軸を置く。光ビームは、平板に垂直に入射させる。
複屈折材料中では、二通りの光の伝搬がある。
一つは常光線と呼ばれる。この場合、光の偏光方向と波長板の光学軸は直交している。この常光線の感じる屈折率を n0 と表記する。
もう一つは異常光線と呼ばれる。光の偏光方向は波長板の光学軸に一致している。この異常光線が感じる屈折率をneと表記する。
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一般に、波長板へは直線偏光の光ビームを入射させる。偏光方向は任意の向きである。
波長板内で、入射光は二つの成分に分かれる。一つは常光線、もう一つは異常光線である。
波長板に入射する際、常光線、異常光線ともに同じ位相を持っている。
ところが、波長板を出るところでは、二つの光線の持つ位相は互いに異なっている。
波長板を伝搬するに際しての両光線の光路差は d (n0 - ne) 、両光線の位相差は 2π・d (n0 - ne) / λ である。
光路長差が λ / 2 、位相差が π である時、この波長板は λ / 2 波長板である。
光路長差が λ / 4 、位相差が π / 2 である時、この波長板は λ / 4 波長板である。
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波長板へ光ビームが垂直入射ではなく、角度を成して入射した場合、光が波長板を通過する長さは、屈折により長くなってしまう。
これにより、光路長差、位相差は所望の値からずれてしまう。
波長板を正しく機能させたいのであれば、光ビームを波長板に垂直に入射させる。
エネルギービームを用いている場合、レンズなどの光学部品表面での反射光は、無視できないエネルギーを持っている。
不慮の事故を避けるには、光学部材に反射防止(AR)コートを施しておく。
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直線偏光の光ビームの偏光方向を回転させるのに、半波長板を用いる。
入射直線偏光ビームの偏光方向に対する半波長板の光学軸を角度θとすると、入射ビームの偏光方向に対して角度2θを成して直線偏光ビームが半波長板から出射される。
次の手順に従って、波長板をセットする。
(1) 偏光子(グラン・レーザ・プリズム、偏光ビーム・スプリッタ、等)を光路に挿入する。
(2) 偏光子を回転させて、消光位を探す。消光位に固定する。
(3) 波長板を、偏光子よりも光源側の光路に挿入する。
(4) 波長板を回し、消光位を探す。消光位の波長板の角度目盛りを読む。
(5) この状態で、光ビームの偏光方向と、波長板の光学軸は、一致している。
(6) 所望の角度に波長板を回す。
(7) 偏光子を、光路から外す。
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直線偏光を円偏光に変換するのに、λ/4 波長板を用いる。
円偏光の定義は、「直交する成分の振幅が等しく、位相差がπ/2 である偏光」である。
この条件を満足させるために、λ/4 波長板を直線偏光のビームの光路に挿入し、偏光に対して波長板の光学軸の成す角度を45°にする。
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レーザー発振器からの出力を安定した状態で用いたいならば、レーザー発振器を定格で運転し、所望のパワーに光減衰器を用いて調整する。
レーザー発振器が光減衰器を内蔵していない場合、外部にそれを自前で設置しなければならない。
一般に、微細加工用の短パルス及び超短パルスレーザーの出力ビームは、直線偏光である。
偏光子と波長板があれば、光減衰器を構築できる。
グラン・レーザー・プリズムや偏光ビーム・スプリッターなどを偏光子に用いる。
偏光子を光路に挿入し、ビームの全パワーが透過する角度に合わせる。
λ/2 波長板を、光路の偏光子よりも光源側に挿入する。
偏光子を透過するパワーを、波長板を回転させることによって調整できる。
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注意:
偏光子や波長板は、高エネルギービーム用を選ぶ。
偏光子や波長板は、反射防止膜(AR coat)が施されているものを用いる。
波長毎に、最適なAR coatは異なる。
偏光子を透過できなかったビームは、偏光子から光路外に蹴り出される。
これを適切に終端する。
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NDフィルタは、光の強度を弱める。
2種類のNDフィルタがある。
一つは体積吸収型、もう一つは反射型である。
写真や光計測の分野で、NDフィルタは重宝に用いられる。
然しながら、レーザー加工の分野でNDフィルタを用いると、深刻な問題が生じる。
体積吸収型のNDフィルタは、エネルギー・ビームの照射で溶融する。
反射型NDフィルタの表面の反射薄膜は、エネルギー・ビームの照射によって損傷を受ける。
加えて、超短パルスレーザーのパルス幅は、NDフィルタを用いると、長くなってしまう。
エネルギー・ビームに対して、NDフィルタを決して用いてはならない。
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スネルの法則は、屈折角を推定するのに便利に利用される。
然しながら、スネルの法則の本質は別の観点にある。
光は、時間的に継続した振動である。
二つの媒質の界面を光が通る場合、その界面において光の振動が途切れることはない。
光の振動とは、ある種の波である。
界面に沿った光の波の数(波数)は、界面の両側において同じである。
換言すれば、波数の界面への射影成分は、保存されなければならない。
これがスネルの法則の本質である。
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反射率の値は、偏光、屈折率、入射角に依存する。
垂直入射の場合を除き、入射光と反射光の両方が存在する平面が一つ決まる。
入射光の偏光方向がこの平面内にある時、この配置を「p-偏光」と呼ぶ。
もう一つの配置は「s-偏光」と呼ばれる。
「s-偏光」では、入射光の偏光方向と、入射光と反射光の両方が存在する平面の法線方向は、平行である。
「s」は、垂直を意味するドイツ語「 senkrechte 」の頭文字である。
垂直入射の場合は、入射光と反射光の両方が存在する平面が無数にある。
従って、垂直入射は「 s-偏光」でも「 p-偏光」でもない。
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これらの式の導出は、一般的な光学の教科書に書かれている。
興味があるのであれば参照されたい。
「p-偏光」の場合、反射率が零になる角度が存在する。
この角度を「ブリュースター角」と云う。
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材料は透明材料で、その材料表面に光が垂直入射する場合を考える。
多くの光学用のガラスの屈折率は、約1.5である。
100%のエネルギーを持つ光ビームが光学素子の表面に垂直に入射する時、一面あたり、約4%のエネルギーが反射光ビームとなり、透過するビームの持つエネルギーは約96%になる。
光学素子の“おもて“面に入射した光ビームは、”うら”面から出射する。即ち、二面を通過する。
従って、総和として約8%のエネルギーが反射光ビームとなり、透過するビームの持つエネルギーは約92%になる。
エネルギービームを用いた加工の分野では、反射防止膜(AR coat)を施した光学素子を用いる。
反射光ビームの焦点近傍に、如何なる光学素子も配置してはならない。
幾つかの透明材料は、大きな屈折率を持つ。
そのような材料を加工しようとすると、その材料表面からの反射光は大きなエネルギーを持っている。
十分に注意せよ。
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透明材料の屈折率は、実数である。
光を吸収する材料の屈折率は、虚数で表される。
光を吸収する材料表面での光のエネルギー反射率は、その材料の屈折率から算出することができる。
金属材料は屈折率の虚数部が大きな値を持っており、従ってその表面は光沢を示す。
屈折率は、波長の関数であることに注意せよ。
材料が同一であっても、波長が異なれば、屈折率は異なる値になる。
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s偏光とp偏光で、反射率の入射角度依存は異なる。
s偏光では、エネルギー反射率は入射角度の増加に伴い単調に増加する。
p偏光では、エネルギー反射率はブリュースター角で零になり、その後入射角の増加に伴い単調に増加する。
図に示されているように、エネルギー反射率は、s偏光とp偏光で、大きな入射角度において、大きく異なっている。
アブレーション加工の場合、加工閾値は照射パルスエネルギー密度(パルスフルエンス)で与えられる。
奥行きのある形状加工では、壁面が傾斜を持つ。この傾斜角の最大値は臨界角で決まる。
入射角度が臨界角を超えると、壁面におけるパルスフルエンスの実効値は閾値よりも小さくなってしまう。
この臨界角は、s-偏光、p-偏光で異なる。
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光を吸収する材料の屈折率は、複素数で与えられる。
従って、光を透過する材料と吸収する材料とでは、エネルギー反射率の入射角度依存の様子は異なる。
光を吸収する材料では、ブリュースター角に相当する入射角度でもエネルギー反射率は零にならない。
大きな入射角において、s偏光とp偏光のエネルギー反射率の値が大きく異なることは、光を吸収する材料でも、光を透過する材料でも同じである。
アブレーション加工による奥行きのある加工において、壁面の傾斜角はs-偏光とp-偏光とで異なる。
これを避けるために、我々は円偏光を用いる。
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一般に、レーザー微細加工用に市販されている短パルス及び超短パルスレーザーの出力ビームは、断面内のエネルギー分布が回転対称のガウス分布である。
これを「ガウシアンビーム」と呼ぶ。
ガウシアンビームを凸レンズで集光して得られる焦点におけるエネルギー分布もまた、回転対称のガウス分布である。
レーザー加工の分野では、ガウシアンビームの直径(半径)として、1/e2強度直径(半径)を用いる。
ガウス分布を持つ焦点に対する、直径(半径)の定義も同じである。
図中に、集光スポットの直径dg1/e2の表式を示す。 λ、 f、D1/e2 は、 それぞれ波長、凸レンズの焦点距離、入射ガウシアンビームの凸レンズ位置における直径である。
式中の1.27は4/πである。
F-θレンズによる集光の場合は、この係数を変える必要がある。
表式はM2 = 1の場合である。
M2は「モード因子」と呼ばれる。
M2≠1の場合、分子にM2を乗じる。
ガウシアンビームの集光スポットの焦点深度zfgの表式も図中に見ることができる。
ガウシアンビームの集光スポットの焦点深度の定義を、図中に示す。
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フレネル回折に基づく計算から、ガウシアンビームの発散角 θhalf は得られる。
λ、w0 = d1/e2 / 2 は、それぞれ波長、集光スポット半径である。この表式はM2 = 1の場合である。
M2≠1の場合、分子にM2を乗じる。
焦点近傍において、ガウシアンビームの半径 w(z)は、双曲線的に変化するものと仮定する。
双曲線の一般式と、ガウシアンビームの発散角 θhalf から、w(z)に関する式が得られる。
ガウシアンビームの集光スポット直径についての表式は、発散角 θhalf から直接に導かれる。
w(z)の表式を用いて、w(z) = √2 w0 である位置 z について解け。
これが焦点深度の定義であり、焦点深度の表式が得られる。
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ガウシアンビームに関して、半径 r の円の領域内に含まれるエネルギーの割合を知る必要が、しばしば生じる。
図は、1/e2半径で規格化された、計算結果である。
ガウシアンビームでは、 1/e2半径の円の領域内に含まれるエネルギーの割合は、約86%である。
ガウシアンビームの半径は、簡単な手順で推定可能である。
先ず、パワーメーターで、ガウシアンビームの全パワーを計測する。
光路に虹彩絞りを設置する。
虹彩絞りの中心を、ガウシアンビームの中心に、注意深く合わせる。
虹彩絞りの開口を調節する。
パワーメーターの表示する値が、全パワーの86%を示すとき、調節した虹彩絞りの直径が、ガウシアンビームの直径である。
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ビームウエストが有限の断面積であるビームの直径は、ウエストから遠ざかるに従い単調に増大する。
ウエストが細いビームの直径は、急速に増大する。
ウエストが太いビームの直径は、ゆっくりと太くなる。
「コリメーション」とは、光ビームのウエストサイズを変えることである。
ビームの発散角(half)がθであり、またコリメートしたい位置でのビームの半径がrである時、焦点距離 f = r / θ の凸レンズを挿入する。
光学に関する主要な議論の殆どは、「近軸光線」「ガウシアンイメージング」の制約下で行われている。
この制約下では、次の関係が成立する。
sin θ = tan θ = θ [rad単位]
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レーザー発振器からの出力ビームの出射方向は、厳密には、一定ではない。
時間とともにレーザービームの出射方向が僅かに変化する理由は、主に温度である。
レーザー微細加工の場合を考える。レーザー光源のポインチング・スタビリティがθ radであり、凸レンズの焦点距離が100 mmである時、焦点面上の焦点の位置は、半径 0.1 θ の円形領域内で揺らいでいる。
ポインティング・スタビリティが1 mrad であるならば、この円の半径は100 μm である。
この程度のポインティング・スタビリティは、レーザー微細加工に十分ではない。
焦点面における位置決め誤差として1 μm以内を望むのであれば、ポインティング・スタビリティが10 μrad のレーザー光源を用いなければならない。
最近、レーザーメーカーは、ポインティング・スタビリティの単位に[rad ℃]を用いるようになってきている。
この[℃]は、レーザーが置かれた環境の温度安定性である。
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