㈱実用技術研究室
超短パルスレーザー応用、レーザー微細加工、技術コンサルティング
超短パルスレーザー応用、レーザー微細加工、技術コンサルティング
SUS_S溝のL、T字接続 (Jul. 1, 2015)
SUS_V溝の十字接続 (Jun. 21, 2015)
SUS_従来技術による溝加工 (Jun. 11, 2015)
ガラス_溝断面形状の制御 (Jun. 1, 2015)
SUS_マイクロテクスチャ・亀甲網目溝 (May 21, 2015)
SUS_マイクロテクスチャ・微小突起(2) (May 11, 2015)
SUS_マイクロテクスチャ・微小突起(1) (May 1, 2015)
SUS_微小円錐浮彫 (Apr. 21, 2015)
SUS_円錐浮彫加工 (Apr. 11, 2015)
SUS_四角錐浮彫 (Apr. 1, 2015)
ガラス_半球浮彫 (Mar. 21, 2015)
SUS_球面浮彫 (Mar. 11, 2015)
Cu_微細窪み (Mar. 1, 2015)
SUS_四角錐台窪み (Feb. 22, 2015)
SUS_円錐窪み (Feb. 15, 2015)
SUS_四角錐窪み (Feb. 8, 2015)
SUS_球面窪み (Feb. 1, 2015)
Al_平坦丸段浮彫 (Jan. 30, 2015)
Al_平坦底丸段彫 (Jan. 30, 2015)
SUS_平坦丸浮彫 (Jan. 28, 2015)
SUS_平坦底丸窪み (Jan. 28, 2015)
これらの他に、SUSホイルのメッシュ加工、SUS板へのマイクロテクスチャ形成、SUS板への亀甲窪み加工などを、弊社の 英語版ホームページ でご覧頂けます。
長さの短い溝を、L字、T字形状に接続するのは、難度の高い加工技術です。
均一な加工の基本条件は、走査線速度が一定であることです。短い線分の場合、一定速度の継続時間は短く、加速・減速停止を挟んで、それが何度も繰り返されます。長い線分であれば、ムラは然程目立ちませんが、今回の加工のような短い線分の数多く接続される場合は、ちょっとしたムラも目立ってしまいます。
従来のレーザー加工は、厚板鋼板の切断や溶接をはじめとして、局所部位に大量のエネルギーを投入できる特徴を活かした、力に頼ったものでした。
ご紹介してきた加工例によって、「超短パルスレーザー加工」は、従来の力技による加工の段階よりも高次の段階にあり、空間座標や投入エネルギー量を精密に制御するものであることを、十分にご理解頂けたと思います。
さて、次回からは、幾分趣を変えてみたいと思っています。
超短パルスレーザー光源を用いた微細加工を考える際、必要となる基礎的な技術事項を、解説していく予定です。
ここ数カ月と同じように、毎月、1日、11日、21日に掲載の積りです。
美味しそうな「板チョコの写真」に見えますが、SUS板に刻んだ十字溝の電顕写真です。
割るのに難儀しますし、齧りつくと歯を痛めます。
十字線の交点の加工深さは、溝の他の部分での深さと、同じです。
凹溝と異なり、V溝では十字溝の交点はより小さな領域となりますから、「二度撃ち」を防ぐためには精密な座標管理が必要となります。
加工形状自体が単純であると、ごまかしが効きません。
台形形状の斜面の平らさ・滑らかさ、四つの稜線が一点に交わるところの対称性、...、どれも大変美しく、綺麗です。
我々が開発した微細加工技術の実力を、感じ取って下されば、幸いです。
レーザー加工は、非接触型の加工技術です。
これに対して、一般的な機械加工技術は、接触型の加工技術です。工具刃がワークに触れることで、加工が進展します。従って、工具刃の押込み量で、加工深さを制御することができます。
従来型の機械加工によって、十字溝を彫り込む場合を考えてみると、溝の交差部分とその他の部分で深さが変わることはありません。
レーザー加工では、様子は変わります。
厳密には、ワーク表面の凹凸が焦点深度に対してどの程度であるかを考慮する必要があるのですが、今回は、溝深さは焦点深度よりも十分に浅いとしましょう。
すると、レーザー加工では、ワーク表面の凹凸に関わらず、加工毎に同じ深さを刻みます。従って、十字溝加工において、交差部分は、その他の溝部分の深さの2倍の深さになってしまいます。
従来型のガルバノスキャナを用いたレーザー加工では、数~数十μmの精密な位置管理は困難で、この溝加工の問題を克服できずにいました。
我々の加工方式による交差溝加工を、次回以降、いくつかご紹介します。
微細な形状を形作れるようになると、溝加工においても、ただ単に溝を彫るだけでなく、その断面形状を制御することが可能になります。
写真は、硼珪酸ガラス(パイレックス(R)やテンパックス(R)等の耐熱ガラス)に、溝幅125μm、深さ50μm、ピッチ150μmで、凹、U、V、S溝を刻んだものです。
レーザー加工の場合、垂直な壁の形成には、特殊な手法を用いなければならず、普通に加工すると必ずテーパーが付きます。凹溝の断面形状は、実際には台形状で、金のインゴットの鋳型のような形状になっています。
凹溝とU溝は、溝底が角張っているか、滑らかな曲線を描いているかの違いがあります。
S溝は、溝幅とピッチを同じにした場合に、正弦波的な高低変化となるような断面形状です。
この電顕写真は、通常の二次電子像ではなく、低真空下の反射電子像として、金コートなしに観察しています。
微小な亀甲網目溝をSUS304板に刻みました。
基本となる六角形の一辺の長さは50μm、溝の深さは10μmです。
一寸見たところでは、何の変哲のない加工に思えます。
然しながら、ガルバノ・スキャナから成るマーキング・システムを、レーザー微細加工に転用した経験のある方であれば、この加工は、なるべく行いたくない種類のものであることを理解されるでしょう。
ガルバノ・スキャナ・マーカーでは、線分を一本ずつ描画します。
線分の描画は、ポジショニング・加速・等速描画・減速・停止、により実行されます。
従って線分が短いと、総加工時間に占める等速描画時間はどんどんと小さくなり、総描画長さが然程長くなくても、膨大な加工時間を要するようになってしまいます。
加工時間短縮の方策は「一筆書き」のパスを使うことですが、この亀甲網目模様は一筆書きを許してくれません。
我々は、マーキング・システムの流用ではなく、レーザー微細加工に適したスキャニング・システムの開発を行ってきています。
前回の微小突起は、六方最密配置で、突起間距離(ピッチ)が約20μmでした。
今回ご紹介するのは同様の微小突起ですが、配置が若干変則です。
亀甲(ハニカム)模様の交点に微小突起が形成されており、基本となっている六角形の頂点間距離(ピッチ)は、約13μmです。
このように微細なパタンを広範囲にわたって形成するには、加工機が十分な位置・寸法精度を持っている必要があります。
レーザー加工機は、レーザー発振器、レンズやミラーなどの光路、機械ステージ、ガルバノスキャナなどのビーム走査ディバイスから成ります。
加工の位置・寸法精度は、これらの機器の持つ精度の足し合せになります。
超短パルスレーザーを導入すれば、直ぐにレーザー微細加工が実施できるのではありません。
加工機を自作する場合は、加工精度を確保できる構成・設計能力を、加工機を導入する場合は、加工機及び構成要素の精度を維持できるメンテナンス能力を有している必要があります。
これまでは、単位形状が100~数100μmの窪みや浮彫の加工をご紹介してきました。
今回から幾つか、我々がマイクロテクスチャと呼ぶ、加工に用いる集光スポットと同程度のサイズの形状加工をご紹介したいと思います。
写真は、SUS430に、高さ約20μmの微小突起を、ピッチ約20μmの六方最密配置で形成したものです。
一辺10mmの正方形の面積の中に、約26万個もの微小突起が形成されています。
加工に用いた集光スポットの直径は、15~20μm程度です。
写真中のスケールバーが、丁度集光スポットの直径程度だと思って、もう一度加工写真をじっくりご覧頂くと、この加工の素晴らしさがご理解頂けるかと思います。
集光スポット内でエネルギーは、光軸を中心とした回転対称の正規分布を成しています。
直径は、光軸中心の強度の1/e2となる半径の2倍として定義されます。
このエネルギー分布の結果として、滑らかな突起形状を得ることができます。
一方で、加工の量を増やしても、このエネルギー分布ゆえに、谷が深くなるのと同時に突起も削られてしまい、突起高さを増やすことはできません。
これまで、窪みや浮彫加工でご紹介してきた単位形状のサイズは100~200μm程度のものでした。
今回の微小円錐浮彫は、底面直径が50μm、高さが50μm、六方最密配置の周期が100μmです。
髪の毛の直径が100μm程度です。
TV-CFでお馴染の毛髪のキューティクルの鱗状の様子を思い浮かべてから、もう一度加工写真をご覧頂くと、加工表面が滑らかであることをご理解頂けると思います。
この加工の難しさは、加工底面の荒れを抑えるところにあります。
従来の熱的なレーザー加工では、このサイズ領域の形状を確保すること自体が困難ですし、超短パルスレーザー光源を用いても、力に頼った加工を行うと、見るも無残な底面になってしまいます。
「超短パルスレーザー光源さえ手に入れれば微細形状加工が実現できる」と思いがちですが、この領域では加工技術の方がより重要であることをご理解下さればと思います。
前回の四角錐と同様に、円錐窪み (Feb. 15, 2015)と比較すると、凹み/凸り具合の立体的認識が容易になるでしょう。
四角錐の形状は、傾きが同じで向きが異なる四種類の斜面からできています。
平面を保ちながら掘り下げる場合を含み、このような加工面全体が一つの同じ傾斜面である形状の場合、加工のされ方(様子)は加工面のどこでも同じで、加工条件検討は比較的容易です。
今回の円錐形状は、斜面と底面がそれぞれ異なる傾斜を持っています。
このような形状の場合、傾斜毎に加工のされ方が異なるので、加工結果を見ながら斜面と底面の加工の状態のバランスが取れる加工条件の探索が必要になります。
最も面倒なのは、球面のように、場所場所で傾きが変化する形状です。
加工屋の腕の見せ所であり、上手く行ったときは、独りこっそりと悦に入ります。
以前ご紹介したのは、四角錐窪み (Feb. 8, 2015)でした。
今回の浮彫と、以前の窪みの写真を比較(交互に見比べる)して頂くと、凹み具合、凸り具合を、より立体感をもって見ることができるでしょう。
加工の基となる図形データは、窪み加工も浮彫加工も同じものです。
異なるのは、3次元座標のそれぞれにおいて、レーザー・パルスを照射する/しない、の判定が反転している点です。
四角錐の体積は、四角柱の1/3です。
四角錐を浮彫する(削り残す)場合の除去しなければならない材料の体積は、四角錐の窪み加工の場合のそれの、2倍になります。
材料に光エネルギーを作用させるためには、材料がその光の波長で「吸収」を持つ必要があります。
ガラスは透明な材料の代表ですから、目に見える光の波長域ではほとんど「吸収」を持ちません。
超短パルスレーザーを用いると、時間的・空間的に光の密度を非常に高めることができ、普通の光では極く稀にしか生じない「多光子過程」と呼ばれるものが比較的容易に生じるようになり、加工ができるようになります。
先の「SUS_球面浮彫」では曲率半径125umに対して高さ50μmでしたが、このガラスへの半球浮彫では曲率半径125μmに対して高さが125μmですから、半球形状になります。
ピッチは280μmで、六方最密配置で形成しています。
(元記事掲載日 Jan. 10, 2015)
これまで彫込み(窪み)加工が続きましたので、これからは浮彫加工をご紹介していこうと思います。
ブローチのカメオなどと同じように、彫り残すことによって所望の形状を作り出します。
写真は、SUS304の表面に、底面直径200μm、曲率半径125μm、高さ50μmの球面を、ピッチ250μmの正方配置で浮彫加工したものです。
曲面も底面(平面)も荒れが少なく、形状が良好に賦与されていることが見てとれます。
同じ窪み形成ですが、Jan. 28, 2015 にご紹介した窪みが直径100μmであったのに対して、今回ご紹介するものは直径35μmと小さくなっています。直径が約1/3ですので、面積では約1/10になります。
これまでの窪み形成や浮彫加工は、集光スポットの大きさよりも形成する形状の方が大きいので、集光スポットをワーク上で走査して加工をおこないました。
形成する形状が小さくなれば、それに従って用いる集光スポットを小さくすることも対処の一つですが、その場合焦点深度が浅くなってしまい、焦点位置管理を厳密にしなくてはならなくなります。
形成する窪みの寸法がこの程度になってきますと、集光スポットをこの大きさに作り、窪みを作りたい場所に集光スポットを固定したまま、何ショットもレーザーパルスを照射します。
この加工方法を、パーカッション加工と呼びます。
形成される窪みの深さ方向の形状は、集光スポット内のエネルギー分布にほぼ同じになります。
詳細は、「レーザー研究」、41巻(2013年)846頁 を参照ください。
(元記事掲載日 Jan. 4, 2015)
錐だけでなく、錐台形状の窪みも加工できます。
写真は、SUS304に、錐台底面190μm▢、錐台上面140μm▢、深さ50μmの四角錐台形状の窪みを、ピッチ200μmで正方配置したものです。
高倍率の写真では壁が薄いように見えますが、撮影に際して、傾斜角を大きくとったためです。
低倍率の写真(撮影時の傾斜角が小さい)で見られるように、桟上部で10μm、桟下部で60μmの厚みがあります。
レーザー微細加工では、特殊な手法を用いない限り、垂直な壁を形成することは困難で、一般的には傾斜がついてしまいます。
加工底面の荒れを抑えて、良好な形状を確保する加工条件では、SUSでは大よそこの程度の壁の傾斜となります。
球面窪みと同じように見えますが、窪みの形状を良くご覧ください。
円錐(コーン)形状が形成されています。
SUS3004に、円錐底面直径200μm、円錐深さ50μm、ピッチ225μmで六方最密で配置されています。
このような窪み形成加工では、ワーク表面に穿った開口の大きさよりも大きな形状を、彫り込んでいったワーク内部に形成することは(簡単には)できません。
深くなるにしたがって、先細りになるような形状であれば、基本的にはどのような形状も加工可能です。
SUS304に、190μm▢、深さ50μmの四角錐形状の窪みを、ピッチ200μmで正方配置した加工の電子顕微鏡写真です。
前回の球面窪み加工では、深さ方向も、周に沿った方向も、滑らかな面が形成されていました。
今回の加工では、4つの平坦な平面により構成される四角錐形状が出来上がっており、面と面の交わる稜を明瞭に見ることができます。
加工において熱影響が現れると、加工面を融かす場合があり、球面形状の場合には、非熱的に精密な形状加工が実現できているのか、熱により融けた結果としての滑らかな球面なのかを判定することが難しいです。
今回のように、稜が現れる形状では、熱による溶融が生じたならば、稜がぼやけてしまうでしょう。
この四角錐窪みの加工結果から、加工に際して加工面を溶融させるような熱影響は発生しておらず、非熱的な加工が実現できていることが分かります。
超短パルスレーザー加工でご紹介してきている加工では、15~20μm程度の直径にレーザー光を集光したスポットを用い、これをワーク面上で「走査」して、所望の形状を作っていきます。
例えば、先にご紹介した段彫、段浮彫では、各段ごとに走査するパターンを用意し、一段ずつ形状を仕上げていきます。
段数が少ない場合には、先の例のように階段構造となりますし、段数を増やし、一段ずつの高さ(深さ)を極僅かにしてやることで、高さ(深さ)方向に滑らかな形状を与えることができます。
今回ご紹介するのは、SUS304に、直径200μm、深さ50μm(曲率半径125μm)の球面窪みを、ピッチ225μmで六方最密に配置加工したもののSEM写真です。
このような滑らかな曲面の窪みを形成するには、段数、各段の高さ(深さ)の他に、幾つものパラメータの最適化が必要になります。
ここでSEM写真を示した段浮彫は5段で、各段の高さは6μmです。
この程度であれば、階段構造が明瞭に現れています。
段数を非常に大きくし、各段の高さ(深さ)を非常に小さくすることで、滑らかな曲面や斜面が形成できそうです。
その結果については、また後ほど、ご紹介します。
(元記事掲載日 Dec. 22, 2014)
ナノ秒パルスレーザー加工の構造形成の光学顕微鏡写真と対比すると、超短パルスレーザーを用いることで、寸法精度が格段に向上しているのが見てとれます。
ナノ秒パルスレーザーを用いた場合、階段構造の最小ステップ幅は100μm程度と考えられます。
従ってナノ秒パルスレーザーによる多段加工が対象とする加工パタンは ≧ 1mm が実力値でしょう。
一方、超短パルスレーザーを用いた場合、50μmのステップ幅でも階段構造を良好に形成できています。
また深さ制御も、ナノ秒パルスレーザーよりも大幅に向上しています。
(元記事掲載日 Dec. 22, 2014)
従来型レーザーでは、主に切断・穴あけなどの加工を行ってきました。
局所部に高い密度のエネルギーを投入できるのがレーザーの特徴ですから、「力技」の加工でこれを良く生かすことができます。
一方で、「力技」に頼れば頼るほど、ワークにダメージが現れやすくなり、また実現できる寸法精度は低下していきます。
超短パルスレーザーの出現によって、状況は変化しつつあります。
一度に多量の加工はできない代わりに、彫刻刀で削るように、ワークへのダメージを最小限に抑えながら、精密な加工が実現できます。
精密切削・研削にように、ワークから微細な形状を削り出すことが可能になります。
レーザーによる削り出し加工の比較的単純な例として、SUS304の表面に、直径100μmの薄い円板形状を、ピッチ200μmで浮彫加工したもののSEM写真を示します。
(元記事掲載日 Dec. 21, 2014)
これまでは、従来技術としてのナノ秒レーザー加工や、ピコ秒パルスレーザー加工の中でも割と早い時期に行ったもの、また、ナノ秒とピコ秒のパルスレーザー加工の比較をご紹介してきました。
これからは、新しい加工技術である「ピコ秒・フェムト秒などの超短パルスレーザーによる大面積微細加工」について、電子顕微鏡写真を(不定期に)ご紹介していきます。
レーザーによる形状加工の方法の一つは、表面から材料を除去することによって、凹んだ形状を作ることです。
穴をあける、窪みを作る、溝を彫るなどの加工です。
その中の比較的単純な加工として、SUS304に直径100μm、深さ12μmの、底な平らな丸い窪みを、ピッチ200μmで形成したもののSEM写真を示します。
(元記事掲載日 Dec. 21, 2014)