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ツール講習実施例を掲載しました
産業界に広く活用される光電子分光データを,適切に取り扱うことができる研究者・技術者が渇望されている.そこで,熟練した研究者の負担軽減を目指して,初等的な光電子分光データの解析を教育するツールの開発を行う.
1. ツール内容
私は,以下に示す2つの光電子分光データの解析に関する教育ツール開発を提案する.本提案は分光データの知識の蓄積およびその共有に主眼を置く.
1.分光データの教育ツール
・実装表面分析研究会が発行する用語解説の記事(TASSAのたまご)[4]などに基づく,分光データの初頭的な知識に関するQ&A教育システムの実装を行う.
2.熟練者による解析例の蓄積
熟練者による解析(推定パラメータやフィッティング結果)の結果をデータベースに蓄積するためのインターフェイスの提供を行う.さらに,計測や解析の設定に関するメタ情報のフォーマットについて,専門家と議論を行う.
2. ターゲット
分光計測の初学者
3. 学べること
X線光電子分光スペクトル(XPS)は,X線照射により放出される光電子の運動エネルギー分布を測定し,試料表面(数nm程度の深さ)の元素種や化合物種,化学結合状態に関する知見を得る手法である(図2).そして,XPSは,産業界において品質管理や材料開発などに幅広く利用されている.そのため,XPSスペクトルを適切に取り扱うことができる研究者・技術者が渇望されている.しかしながら,計測したXPSスペクトルは主に以下の3点により解析が困難になっている.
・データが計測摂動や帯電現象を含んでいるため,参照データとの比較が困難である.
・化合物種や化学結合状態に対応する光電子ピークが重なり合って計測される.
・エネルギーを失った電子によりバックグラウンド形成され,処理が困難な場合がある.
XPSの初学者にとって,適切にスペクトル解析することは困難であり,光電子分光スペクトルの計測やデータ処理について教育を行う必要がある.一方で,現状の教育は,熟練した研究者が膨大な時間を使って指導を行なっており,非効率的である.そこで,熟練した研究者の負担軽減を目指して,初等的な光電子分光データを教育するツールの開発を行う.
4. 特徴・魅力
私は,これまでにXPSスペクトルの計測および自動解析ツールの研究開発を行ってきた.この手法は,XPSに熟練した解析者の解析手順を模倣し,その作業を数式化することで実現している.この研究開発を経て,XPSスペクトルのデータ処理についての知識を身につけることができた.また,解析ツールの開発により,ソフトウェア開発の能力を養うことができた.図1に示すように,光電子分光スペクトル解析の教育ツール開発は,「光電子分光スペクトルの知識」と「ソフトウェア開発の能力」の両者を持つ私のオリジナルな提案である.
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