博士論文『想起と反復』(1995)

箭内匡「想起と反復-現代マプーチェ社会における文化的生成-」 (東京大学大学院総合文化研究科、1995年、624頁)

これは私が1989年8月〜1992年3月にかけてチリ南部で行なったフィールドワークに基づく博士論文です。原稿用紙に換算して2000枚の大部であり、私がこの論文を完成した当時は出版助成を得られる機会が非常に少なかったため、未刊行の状態になっています。

この研究は、1980年代半ばから1989年にかけてペルーとスペインで行なったフィールドワークの成果を踏まえ、また1980年代後半における民族精神医学への関心を背景にして、チリ南部の先住民であるマプーチェの人々のもとで行なった調査に基づくものです。私はこの調査でフィールドワークの過程でさらに深い次元での枠組みの変容を強いられ、この博士論文はその経験を正面から受け止めたうえで書かれたものです。この研究の中で論じた様々なことは、私自身にとってその後に行なってきたことの全てと太い線で繋がっています。

目次


1.序論~歴史民族誌的背景 (1)

1.1. 序論:生成と反復 (2)

1.2. マプーチェの歴史民族誌的背景(27)

1.3. カラフケン湖西北部地域の歴史民族誌的背景 (45)

注(1章) (62)

2.天上的秩序の模倣:想起の原理 (71)

2.1. 口承的心性 (73)

2.2. コヌンパンの原理(83)

2.3. 天上界と地上界 (101)

2.4. 神・霊・人間 (114)

注(2章) (135)

3.祈りと生け贄:想起から力へ (145)

3.1. 想起と儀礼 (146)

3.2. カマリクンの両義性 (171)

3.3. 想起から力へ (194)

3.4. 力の原理 (209)

注(3章) (232)

4.人間関係の諸相:想起・力・水平性 (239)

4.1. 親族の世界 (241)

4.2. 婚姻と外部世界 (261)

4.3. 権力とその源泉 (283)

4.4. 水平性の原理 (300)

注(4章) (315)

5.反復と生成:理論的考察 (323)

5.1. 同一性から反復へ (324)

5.2. 反復と存在 (337)

5.3. 反復と社会 (354)

5.4. 反復と近代(373)

注(5章) (395)

6.今日の居留地:多時間性と反復 (401)

6.1. 居留地の政治経済 (402)

6.2. マプーチェとウインカ (421)

6.3. 存在論的ドラマ (440)

6.4. アンブロシオの死 (459)

注(6章) (473)

7.未来への展望~結論 (481)

7.1. 都市へ (482)

7.2. 未来への展望 (504)

7.3. 結論:歴史的哲学としての民族誌 (539)

注(7章) (548)

地図 (18-26)

写真 (163-170)

付録 (553-600)

文献表・主要語彙集 (601-624)