『映像人類学/シネ・アンスロポロジー』(2014)
書誌情報
村尾静二・箭内匡・久保正敏編『映像人類学/シネ・アンスロポロジー——人類学の新たな実践へ』(せりか書房、2014年5月23日刊行)
A5・310ページ 本体2,800円+税 ISBN 9784796703338
表紙写真:村尾静二
内容について
この本は、国立民族学博物館における共同研究「映像の共有人類学-映像をわかちあうための方法と理論-」(研究代表者 村尾静二)に基づくもので、ジャン・ルーシュから直接、民族誌映画制作の手ほどきを受けた大森康宏氏、大森氏の指導のもとで民族誌映画の制作を行ってきた村尾静二氏、南出和余氏をはじめとする研究メンバー、また各々の仕方で映像についてアプローチしてきた飯田卓、久保正敏、大村敬一氏との共著(村尾氏、久保氏との共編著)です。
映像人類学は、デジタルメディアの普及を背景に特に2000年代に入って広く関心を呼んできましたが、フィルム時代から連綿と続いてきた映像人類学・民族誌映画の貴重な遺産が顧みられることは多くありません。また、ロバート・フラハティやジャン・ルーシュの作品は映画の世界における金字塔ですが、彼らの仕事の「映画人類学」的な意義を、人類学者一般がきちんと理解してきたとは言えません。本書では、そうした映像人類学についての全体的理解を教育的視点から提示するとともに(巻末の詳細な「映像視聴ガイド」もその一端です)、その延長線上で出てくる別様の人類学のあり方についてのヴィジョンを提示することを目的としたものです。
ジャン・ルーシュの仕事を正面から捉え、その思想と実践を核とした本書は、世界的に見ても類書のない内容であると言えます。
出版社提供情報: http://www.serica.co.jp/333.htm
東京大学UTokyo BiblioPlazaにおける情報: https://www.u-tokyo.ac.jp/biblioplaza/ja/B_00149.html
目次
序章 人類学から映像−人類学(シネ・アンスロポロジー)へ 箭内匡 [断章]
第Ⅰ部 原点
映画を撮ること、観ること、共有すること―ロバート・フラハティの「人類学的」映像制作 村尾静二
紀行文と旅映画―渋沢フィルム《飛島》を事例として 木村裕樹
文化を写しとることは可能か―ベイトソンとミードの映像人類学から 宮坂敬造
第Ⅱ部 シネ・アンスロポロジーの創造
共有する映像制作―ジャン・ルーシュから学んだこと 大森康宏
ジャン・ルーシュの思想―「他者になる」ことの映画−人類学 箭内匡 [断章]
映画作家ルーシュ――ヌーヴェルヴァーグ映画を鏡として考える 小河原あや・箭内匡 [断章]
第Ⅲ部 映像の共有人類学
「子ども」と映像―カメラへの関心と変化の共有 南出和余
技術映像の可能性―モノづくりの映像がかたるもの 中村真里絵
映画をめぐる生の交差―時間と空間の共有がもたらすもの 清水郁郎
第Ⅳ部 民族誌映像の発信・保存・再利用
共有のためのメディア―戦後マスメディア史からみた映像人類学の可能性 飯田卓
映像アーカイブズから映像の共有を考える―国立民族学博物館での経験から 久保正敏
共有から引用へ―生成と創造のマトリクスの構築に向けて 大村敬一
第Ⅴ部 作品解説
1 民族誌映像の創出 リュミエール兄弟から一九六〇年代まで
2 新しい民族誌映像のために 一九七〇年代〜現在
3 本書関連民族誌映画DVD収録作品 解説
終章 新たな課題――方法論から認識論へ 村尾静二
映像視聴ガイド
付録民族誌映画DVD: