長谷川聖修さん(うつくしま体操教室 筑波大学体育系教授)インタビュー
1.支援活動の経緯について
大学自体も3.11で大きな被害を受け、体育館も壊れました。もともと大学で高齢者向けの転倒予防教室はずっとやって参りました。その活動をやっていく中で、一番最初は筑波学院大で行われた被災者の体験談を聞くという企画で(双葉町からつくば市に避難している)中村さんたちと知り合い、福島の皆さんがつくばにたくさん避難されてきていることを知りました。その縁で体操教室がありますがいかがですか、とお声を掛けました。そこから2012年の2月頃から、かれこれ3年一緒に体操をしています。
もともとは個人的な関係で始まったのですが、大学としては重点公開講座がありまして、そこに今の教室の名前、“つくしま”というつくばと福島の2つの住民を併せ持つような意味合いの体操教室を立ち上げました。そして、つくば市民の皆さんと福島の方々の公開講座を行いました。翌年からは大学の社会貢献プロジェクトに申請を出して、実際には学生たちがサポートしています。こうしたサポートをしてきて今日に至っています。
2.支援活動について
私もこの震災以降、被災地にも入って現地の仮設の人たちとも関わりを持っています。ですが結局私たちが行った時には何かできますが、戻ってきてしまうとそこで終わってしまいます。避難されてきている福島の方たちはここに日常がありますので、その日常に寄り添って活動ができればというのが、この教室の最も大事なところです。
週に一回、月曜日午前中はこの教室に集って行うということです。内容は体操教室なので、もちろん健康づくりということで全身を健康に保ってもらうという狙いはベースにありますが、最もこの教室の大事なのは交流型のところです。ですからラジオ体操と言っても「仲良しラジオ体操」と言って、お互い支えたり支えられたり。少し不安定な動作をお互いに支えたり支え合ったり。いろんな関わり合いを重視することによって、意図で言うとつくば市民のみなさんと、新しくつくばにいらした方たちの心の垣根を取り払うための工夫が一番のポイントです。
3.支援活動での工夫
私は体操の専門家なので、色々なことを私から提案して活動するのももちろん大切ですが、もう一つ大切なことは、そもそも双葉町で持っていた自分たちの文化のようなものを教室に持ち込むということです。今日の指導で言うと、双葉音頭のようなことをつくば市民と一緒に行う。あるいは体操の発表会が毎年2月にあるのですが、そういう場で相馬流山踊りを披露していただく。単にこちらから一方的に支援するというよりは、カラーがある本当にすばらしい文化性を尊重し、お互いに仲間同士の支え合いもありますが、つくば市民も支えるだけじゃなく、双葉町のことを学んだり刺激を受けたりすることが大切です。双葉町の連絡所で行われる夏祭りには、体操関係者も参加して一緒に盆踊りをします。そうした意味で、工夫というのは相互性です。
また、とてもお年を召した方や、割とお元気な方もいるなど、教室に参加される方の個人差が大きいので、そういう方たちの個人差をどう埋めるか、特に安全上の問題があって、ここは学生たちがサポートに入って目配りしながら配慮しています。学生にとってはそうした問題点が、自分たちが指導したりサポートしたりする力になっているので、逆に学びの場でもあるのです。
4.支援活動での課題
これから先どうするかという、実はビジョンは特にありません。ただ、今こうして関わって一緒に活動している人たちとどこまで寄り添って、参加していただいてとても喜んでいらっしゃるので、こういう日常をどこまで続けられるか、というのが私の中では一番大事です。ただ、参加されている方たちもライフスタイルが変わってきているので、それに合わせて私たちもどんな寄り添い方がいいのか模索しながら、被災してしまったという起きてしまったことを振り返って後ろ向きに考えるよりは、こうして出会えたことを福島の皆さんから学び、福島の皆さんもつくばに来て良かったなと思えるように、これからも日常として続けられたらと思っています。