kenpou ans 1-13

⑬現行の法整備だけで済むというのに、わざわざ憲法を改正する理由は何でしょうか。

憲法が非常事態(国家緊急権)を規定しない理由について、1946年に金森国務大臣は四つの理由を挙げていました。

第一は、民主政治を徹底させて国民の権利を十分擁護するためには、政府の一存で行う措置は極力これを防止しなければならない。

第二は、「非常」を口実にして政府の自由な判断を大幅に残しておくと、どんな精緻な憲法でも破壊されてしまう可能性がある。

第三は、特別の必要が起これば、臨時国会を召集し、衆議院が解散中であれば参議院の緊急集会を召集して対応できる。

第四に、特殊な事態には、平素から法令等の制定によって濫用されない形で完備ができる。

このような憲法の考え方を受けて、災害対策基本法などの法律が整備されてきました。にもかかわらず、東日本大震災からの復旧・復興がはかどってこなかったのは、政府が、被災地住民のことを真剣に考えて、復旧・復興を一番大切な任務としてこなかったからです。法の適正な運用も十分でなく、法律のもとでの対策も後手・後手に回りました。

国家緊急権は「人権を守るための制度」ではなく、「国家を守るために」人権を制限し、人権を犠牲にする制度です。非常事態条項(国家緊急権)から改憲に取り組もうというのは、9条改正を最初に提起すれば国民の反発を呼ぶことは必至であるために、賛成を得られそうなものから改憲に着手するという戦略によるものです。執行権の独裁を狙う「震災便乗型」の改憲論は要注意です。

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