野球の投球時における視覚の役割についての実験です.バスケットシュートの場合と同様に(バスケットとは別のO君ですが),O君は適当な時間目を閉じたあとに投球する実験をしました.友人に向かって投球し正面からのずれを0.3mを最小単位として,目視で評価しました.目をつぶる時間はm0,5,10,30秒で,目を閉じてからボールを離すまでの時間としています.この時間にも,またずれ量の評価にも,そ当然誤差が含まれていますが,実験結果から考えるとこの実験にとっては大きく影響するものではなさそうです.O君はもうひとつ別の条件を行いました.それは目をつぶって一歩分右に移動してから投球するというものです.特別な時間の制御はしていませんが,2秒程度だったのではないかと推測します.
実験は,(大学のだったと思います)グランドで夕方5時,視界良好とのことでした.実験は1名(多分O君自身)の投球で,それぞれの条件で3回の投球をしましたが,図にはその平均が示してあります.縦軸はずれの逆数を投球の精度として示します.実験結果は,0から10秒程度までは急激にな精度の低下見られ,その後30秒まで緩やかに精度の低下があります.この傾向は,バスケットのシュートの実験とよく似ています.ただし,この精度の値が線形であるとはいえないので.実際に変化の大小は投球の正確さの変化の大小と対応するとはいえません.
図中1歩というのが,目をつぶって1歩移動した後の投球の結果です.目を閉じている時間は長くないですが,精度は30秒のものと同程度まで低下していることがわかります.O君は.目をつぶることによる精度の低下は,目を閉じている間の視覚情報の変化であるといっていますが,30秒の間に残っている視覚情報は,通常の視覚情報から1歩あるくことによって失われる視覚情報を差し引いたものと同程度ということかと思います.また,足を高く上げると投球のずれが大きくなることがわかり,その場合も記憶した投球方向についての視覚情報がずれるからではないかと考察しています.