2025年04月18日 作成
2025年05月28日 更新
これまで ARM版Windows 10や11 が Raspberry Pi 4BやRaspberry Pi 5 で動作することは分かっています。
以前に「WoR(Windows on Raspberry Pi)」や「WoR-flasher」を使ってWindows 11をRaspberry Pi 5やRaspberry Pi 4にインストールして遊んでいましたが、2025年3月に新たな方法でRaspberry Pi 5およびRaspberry Pi 4にWindows 11をインストールして動作させることができるという情報を得ました。
今までの「WoR」や「WoR flasher」と異なる方法で、Raspberry PiのLinux上にWindows 11の仮想マシンを作成して、RDP(Remote Desktop Protocol)クライアント(例えばRemmina)を使って仮想マシンのWindows 11を利用するというものです。「Botspot Virtual Mashine」と呼ばれています。詳しくは以下のURLで確認してください。
GitHub - Botspot/bvm: User friendly, high performance Windows 11 Virtual Machine on ARM Linux
ただし、以下の注意点があります。
Microsoft 社や Raspberry Pi 財団による正式なサポートはありません。個人の責任で作業してください。
Ethernet、WiFiはLinuxのものを利用するので、動作します。
サウンド関係もLinuxのものを利用するので、動作します。
Bluetoothは動作しません。
仮想マシン用のグラフィックドライバがなく描画が遅いので、ゲームでの利用は無理だと思います。
動作時は比較的CPU温度が高くなるので、CPU冷却用のファンは必須です。
Btspot Virchual Machie(以後は「BVM」と略します)の動作については2種類の方法があります。
一つは仮想マシンをそのままグラフィック・ドライバを使って起動する方法です。ただし、この方法ではドライバはVGA(640x480ドット)サイズまでであり、以下の左側の画面のように表示されます。
もう一つの方法は、Windows 11仮想マシンをディスプレイ表示なしで起動しておき、そこに別端末からRDPクライアントを接続してWindows 11の画面を表示するものです。以下の右画面のようにある程度のサイズのWindows 11の画面を表示することができます。また、指定によっては全画面での表示も可能です。
1)仮想マシンから表示
2)RDPクライアントを使って表示
Raspberry Pi 5 で「Windows 11 on ARM(ARm版Windows 11)」を快適に動作させるためには SSD が必須と考え、以下の製品を使用しています。BVMを利用する場合には、メモリ容量16GByteのものを使いたいのですが、8GByteのものしか持っていないので、8GByteで動作確認をしてみます。8GByteでも意外と軽快に動作します。また、繰り返しになりますが、CPU冷却ファンは必須です。
本体:Raspberry Pi 5 本体(メモリ 8GB)
Raspberry Pi ケース: CPU冷却用ファン付きのケース
SSD:NVMe SSD(240GB)、Raspberry Pi OSをインストールし、仮想環境のホストとして使用
Hat:NVMe SSDを接続するために必要(GEEKWORM X1002を使用)
LAN:Raspberry Pi 5で利用しているもの(有線LAN、無線LAN)をWindows 11でも利用可能
Sound:Raspberry Pi 5で利用しているもの(3.5mmジャック、HDMIサウンド)をWindows 11でも利用可能
Raspberry Pi 5 (メモリ 8GByte)とケース
Raspberry Pi 5の裏面、NVMe SSDにRaspberry Pi OSをインストール
プログラムBVMはLinux上で動作するシェルスクリプトですので、あらかじめ「Raspberry Pi OS」を用意してください。インターネットを利用できる環境も必要です(Windowsインストール用イメージは 4GByte ほどあるので、SSD上の Raspberry Pi OS で作業するのが無難だと思います)。
今回は、前述のように裏面のNVMe SSDにRaspberry Pi OSをインストールして動作確認をします。
Botspot Virtual Mashine(BVM)というプログラムは、次の github にあります。
詳細については上記のWebで説明されています。同じような説明になりますが、ご容赦ください。
Botspot Virtual Mashineプログラムはシェル・スクリプトで構成されており、大きく分けて 1)BVMの実行環境を整備する、2)Windows 11をインストールする、3)インストールしたWindows 11を実行する、の三段階になります。
GUI(Graphical User Interface)で作業する方法とCLI(Command Line Interface)で操作する方法がありますが、ここではCLIで操作する方法について説明します。
最初にBVMプログラムを取得します。
$ git clone https://github.com/Botspot/bvm
このコマンドにより現在のフォルダにbvmというフォルダが作成され、各種のコマンドが格納されます。
Windows 11のインストールは以下のコマンドを順に実行するだけです。
1)BVM実行環境の整備
$ bvm/bvm help
仮想マシンの作成・実行に必要なqemu関係のプログラムがインストールされます。
2)仮想マシンの作成
$ bvm/bvm new-vm ~/win11
仮想マシンはホームディレクトリ直下の「win11」というフォルダに作成されます。
この作業後にBVMのconfig(~/win11/bvm-config)ファイルを確認して、以下のように修正します。Windows 11を日本語で利用するために「download_language="Japanese"」に、仮想マシンのディスク容量を「disksize=100」で100GByteに、仮想マシン実行時のメモリサイズを「vm_mem=4」で4GByteに設定しています。
vm_username="Win11ARM"
vm_password="win11arm"
download_language="Japanese"
disksize=80
vm_mem=4
3)Windows 11インストールイメージの取得
$ bvm/bvm download ~/win11
インターネット上から取得しますが、こののコマンドだけで取得できます。
1)Windows 11インストール前の準備
$ bvm/bvm prepare ~/win11
Windows 11のインストールイメージにRaspberry Pi 5用のドライバなどを組み込みます。
2)Windows 11の初期設定
$ bvm/bvm firstboot ~/win11
このコマンドでWindows 11における最初のインストールが開始されます。「download_language="Japanese"」で指定した場合、使用する言語やキーボードを指定するメッセージが表示されます。Windows 11のインスト-ルと初期設定なので、1時間半ほどの時間がかかります。
Windows 11仮想マシンの実行とRDPクライアントを利用して画面を表示する方法について説明します。
最初にLinuxの端末を起動します。そして次のコマンドを実行します。
$ bvm/bvm boot-nodisplay ~/win11
次に、仮想マシン上のWindows 11が起動するまでの時間を待って(30秒くらい)、もう一つのLinux端末を起動して、次のコマンドを実行します。
$ bvm/bvm connect ~/win11
RDPクライアントとしてのremminaプログラムが実行され、Windows 11仮想マシンと接続した後、Windowsの画面が表示されます。適当に画面サイズを変更して使用します。最初から全画面で表示するには、bvm-configファイルの以下の行の注釈をはずします。
fullscreen=true
Windows 11を実行してRDPクライアント「Remmina」で表示
bvm-config内の「fullscreen=true」を指定、RDPクライアント「Remmina」のメニューを表示
これまでBVMをRaspberry Pi OS(Wayland)で利用してきましたが、Windows 11の動きがそれほど軽快ではありません。試しにUbuntu 24.04にMATE-Desktop(X-Window)をインストールしたUbuntu MATE 24.04上で利用してみました。結果としては、Ubuntu MATEの方が非常に軽快でした。感覚的ですが、WoR-flasherを使って直にARM版Windows 11をインストールした時と同じくらい軽快であり快適に利用できます。
しばらくはUbuntu MATE上でBVMを使うことになるかと思います。
Ubuntu MATE上でBVMを実行
簡単にRaspberry Pi 5でWindows 11を実行する環境を構築できます。さらに、Windows 11の初期設定や快適に利用するための設定なども自動で設定してくれます。そして、ホストとゲストが同じアーキテクチャであることから仮想化プログラムqemuでは命令を変換するエミュレーションも必要なく高速に動作します。
Raspberry Pi で簡単にARM版Windowsの環境をテストすることができ、ARM版Windowsを搭載しているMicrosoftやLenovoなどが販売しているノートパソコンを購入するときの参考にできます。
開発者のBotspotと言う人は、WoR-flasherの開発者でもあったんですね。Raspberry PiでWindowsを動作させて遊んでいる者にとっては非常に感謝です。
以 上