2021年05月16日 作成
2024年11月29日 修正
Raspberry PiでARM版Windowsが利用できるようになり、その環境で文書作成などを行う時にはMicrosoft Officeを利用することになります。もちろんライセンスを所有しているならば、ARM版Windowsではエミュレーション機能によってx86版(32ビット版)を利用することができます。また、ARM版Wnodws11ではx64版(64ビット版)も利用できます。
しかし、Raspberry PiではLinuxも利用することがあり、文書作成環境については同じにしておきたいと思っており、WindowsでもLinuxのどちらでも利用可能なオフィススイートであるLibreOfficeを利用しています。ここではARM版WindowsでLibreOffice(x86、32ビット版)を利用できるように、その設定を記述しておきます。
また、2024年8月にはLibreOfficeにARM版Windows専用のLibreOfficeが提供されました。インストール方法、実行環境の整備については LibreOffice(ARM版) で説明しています。
オフィススイートとしてはMicrosoft Officeが有名ですが、有料で利用環境はWindowsやMacに限られます。Linuxでは利用できません。反面、LibreOfficeは無料でありWindowsやMacそしてLinuxでも利用できるという特徴があります。
LibreOfficeにはMicrosoft Officeと同じように次の機能のプログラムがあります。
LibreOffice Writer:日本語ワープロ
LibreOffice Calc:表計算ソフト
LibreOffice Impress:プレゼンテーションソフト
LibreOfficeの詳細については次のURLを参照してください。
ARM版WindowsでLibreOfficeを利用するには、プログラムやフォントなどの環境をLinuxと同じように整えることが大事になります。必要な環境は次の通りです。
• LibreOfficeのプログラム
• 日本語フォント
• かな漢字変換ソフト
Windowsで利用可能なLibreOfficeのプログラムは、次のURLからダウンロードすることができます。ARM版Windows用のLibreOfficeはありませんので、x86版(Windows (32-bit))をダウンロードして利用することになります。
ページには、最新版と安定版のプログラムが表示されています。仕事で利用する場合には安定版を、そうでなければ最新版を利用すると良いと思います。ARM版WindowsではWindows(32-bit)版をダウンロードしてください。ダウンロードしたファイルは次の名前になります(2021年5月現在、安定版のLibreOffice 7.0.5の場合)。
LibreOffice_7.0.5_Win_x86.msi
インストールするには、このファイルをダブルクリックします。インストール処理が開始されますので、以後は表示されるメッセージに従って、操作をして下さい。
インストールが終了するとスタートメニューに登録されますので、メニューをクリックして起動します。
文書は内容はもちろんですが、印字される文字の美しさも読む人に好印象を与えます。内容については書く人の技量に委ねられますが、文字の美しさは利用するフォントによります。ここではLibreOfficeで使用する際の日本語フォントについて説明します。
WindowsではMS明朝/ゴシックがよく使われるフォントとして有名です。最近では綺麗と評判になっている遊明朝/ゴシックも利用可能になっています。特に遊明朝/ゴシックはデザイン性の高い文書で使われ、MS明朝/ゴシックはビジネス文書で使われている印象があります。
Linuxで最近よく使われれるフォントとしてGoogleやAdobeから無償提供されているNoto Serif/Sansおよび源ノ明朝/ゴシックというフォントがあります。字形が美しいと言われています。これらのフォントはLinuxだけではなくWindowsでも利用できますので、両方の環境にインストールすることにより、文書の互換性が良くなります。
LibreOfficeでは標準フォントとしてNoto Serif/Sansが設定されています。特にLibreOffice日本語版では次のフォントの利用が想定されています。
NotoSansCJKjp-{Black, Bold, DemiLight, Light, Medium, Regular, Thin}.otf
NotoSerifCJKjp-{Black, Bold, ExtraLight, Light,Medium, Regular, SemiBold}.otf
NotoSansMonoCJKjp-{Bold, Regular}.otf
これらのフォントは無償で利用できますが、各自で取得してインストールする必要があります。取得するためのURLは次の通りです。Googleフォントとして検索するといくつかの情報が得られますが、最新のNotoフォントはgithubのものになります。
NotoSansCJKjp:https://github.com/googlefonts/noto-cjk/tree/main/Sans/OTF/Japanese
NotoSerifCJKjp:https://github.com/googlefonts/noto-cjk/tree/main/Serif/OTF/Japanese
NotoSansMonoCJKjp:https://github.com/googlefonts/noto-cjk/tree/main/Sans/Mono
ダウンロードしたファイルは次の名前になります。
Noto Sans CJKjp
NotoSansCJKjp-Black.otf
NotoSansCJKjp-Bold.otf
NotoSansCJKjp-DemiLight.otf
NotoSansCJKjp-Light.otf
NotoSansCJKjp-Medium.otf
NotoSansCJKjp-Regular.otf
NotoSansCJKjp-Thin.otf
Noto Serif CJKjp
NotoSerifCJKjp-Black.otf
NotoSerifCJKjp-Bold.otf
NotoSerifCJKjp-ExtraLight.otf
NotoSerifCJKjp-Light.otf
NotoSerifCJKjp-Medium.otf
NotoSerifCJKjp-Regular.otf
NotoSerifCJKjp-SemiBold.otf
Noto Sans Mono CJKjp
NotoSansMonoCJKjp-Bold.otf
NotoSansMonoCJKjp-Regular.otf
取得したフォントをインストールするには、エクスプローラを起動して前述のファイルをマウスの右クリックで選択すると「すべてのユーザーに対してインストール」メニューが表示されます。そのメニューをクリックします。
インストールが終わるとLibreOfficeのフォントリストに表示されるようになります。
日本語ワープロとして使う場合には、かな漢字変換ソフトは必須のものとなります。Windowsの場合にはMS-IMEやATOKなどの優秀なかな漢字変換ソフトがありますので問題とはなりません。Raspberry Piで動作するARM版WindowsではMS-IMEが利用できます。またATOKについては、x86版が動作しますが、x86アプリケーション上のみです。ARM64アプリケーション上では利用できません。注意が必要です。
個人的にはMS-IMEのキー設定をATOK準拠にして利用しています。
LibreOfficeを快適に利用する環境について述べてきましたが、LinuxとWindowsの環境を同じにしても、MS Officeとの互換性については完全な互換性は期待できませんので、注意してください。
LibreOfficeを各種OS上で使用していると少しフォント処理の違いが気になりましたので、報告します。
以下にそれぞれのOS上での画像を示しますが、LibreOfficeのバージョンも、オプションでの表示設定も同じにしてあります。
個人的には、明朝体を11pt、表示倍率を110%、行間を1.15行の状態で使用するようにしていますので、Windows 10上でのフォント処理が気に入っています。また、長時間使用していても疲れない感じです。
Windows 10で使用しているとき、きれいな表示です
ARM版Windows 10で使用しているとき、きれいな表示です
ARM版Windows 11 Insider Preview版で使用しているとき、少しスムージングが悪いですね
(2021年10月、Windows11のリリース版で確認したらきれいなフォントになっていました)
Ubuntuで使用しているとき、Windowsに比べるとフォントが少し細く見えます
Raspberry Pi上のARM版Windowsでは x86アプリケーションが実行可能ですが、LibreOffice 7.1.6(x86版)については、インストールはできますが、正常に起動できないようです。起動途中でメッセージも表示せずに終了してしまいます(イベントログにはエラーが記録されていますが、詳細な原因調査はしていません)。
したがって、ARM版Windowsで使用するLibreOfficeについては、Version 7.1.5や7.2.1などを使うのがよいかと思います。
以 上