HP 200LX
~ 小さなコンピューターでMS-DOS ~
2025年04月20日 作成
2025年04月21日 更新
2025年04月20日 作成
2025年04月21日 更新
HEWLETT PACKARD 200LX(以後はHP200LX)とは、米国ヒューレット・パッカード社製の小さな(約16×8.5×3cm)コンピューターで、1994年11月から1999年11月まで販売されていたものです。このコンピューターは、640×200ドットのモノクロ液晶を持ち、ROM上に英語版MS-DOS、そしてシステムマネージャと呼ばれるメニューや電子メール、スケジュール管理、表計算ソフトLotus 1-2-3などのプログラムが組み込まれていました。また、単三乾電池2本で動作することから、非常に使い勝手が良いことで評判だったようです。
HP 200LX
HP 200LX(ヴィネガー・シンドローム発症前)
元々は英語版MS-DOSですが、有志の方々が日本語でも利用できるように各種プログラムを作成してくれました。当初は、日本語入力プログラムやテキストエディタなどの有料プログラムとともにJKITという名前で販売されていましたが、後にフリーのプログラムだけを集めたJKIT-Freeと呼ばれるものを提供してくれました(日本語入力プログラム、テキストエディタは含まれておらず各自で用意しなければなりません)。
私は、20年ほど前にHP200LXを入手していましたので、その当時にJKIT-Freeを取得して、日本語入力プログラムはDOS/V版ATOK8、テキストエディタはDOS/V版VZを入手して遊んでいました。
久しぶりにHP200LXを出してみたら、ヴィネガー・シンドロームという症状で、液晶画面が下の左側の写真のように中央が黒ずんでいました。今から30年くらい前に販売されていたものですので、修理は難しいかなと思いました。しかし、調べると個人で修理している情報が数多く見つかり、必要な部品や道具を調達して修理をしてみました。その結果、下の右側の写真のように正常に使用できるようになりました。先人たちの挑戦力に感謝です。
ヴィネガー・シンドローム発症の画面
修理後の画面
修理に最も重要な部品で苦労したのは偏光板です。近くで売っているのを見たことがありません。ネット上では「東急ハンズで購入」という書き込みがありました。渋谷まで行く余裕がなく型番(ミッドタウン BSP250)で検索したら「ハンズAmazon店」で販売されているのを見つけ、購入しました。以下の画面は、修理中に偏光板の角度の確認をしている様子です。
修理が終わったので、以前に使っていたPCカードアダプタにSD(Secure Digital)カードまたはCF(Compact Flash)カードを用意して電源を入れてみました。システムマネージャが起動して液晶の表示はできましたが、日本語環境にはなりません。
以前はJKIT-Freeを導入して日本語が表示できていましたので、電源が消失したことにより設定が消えてしまったようです。しかし、SD(またはCF)カード内にはJKIT-FreeやDOS/V版ATOK8などの各種プログラムが残っていますので、なんとか復元してみます。
HP200LXのドライブ構成と起動順序について説明します。ドライブ構成は次の通りです。
Aドライブ(外部記憶装置(PCカード内のメモリ、CFカード、SDカード))
Cドライブ(内蔵RAMドライブ)
Dドライブ(内蔵ROMドライブ、英語版MS-DOS)
起動順序は、外部記憶装置(Aドライブ)がある場合には、AドライブからCONFIG.SYS、AUTOEXEC.BATを読み込んで起動します。外部記憶装置がない場合には、内蔵ROMドライブ(Dドライブ)のCONFIG.SYS、AUTOEXEC.BATを読み込んで英語版MS-DOSの状態で起動します。
HP200LXには外部記憶用としてPCカード(PCMCIA 2.0)スロットがありますので、アダプタを介してSDカードおよびCFカードが読み書きできるように、次のアダプタを使っています。
PCカード ⇨ CFカード ⇨ SDカード
PCカード ⇨ CFカードアダプタ(Panasonic BN-CFADPP3)
CFカード ⇨ SDカードアダプタ(Panasonic BN-CSDABP3)
SDカード(4GByte)
以前にJKIT-FreeをSDカードにインストールしたものがありましたので、これを使って復旧します。
SDカードをセットして再起動します。しかし、いくつかのエラーが出て、正常に日本語化ができていません。けれどもDOS環境はできていますので、「&...」キー、そして「MENU」キー、「A」キー、「T」キーを順に押下して、確認画面で「OK」を選択して「ENTER」キーを入力し、DOS環境にします。エラーの原因は、EMS領域がないこと、フォントデータがないことですので、その設定を行います。
最初にEMS領域を確保するために、次のコマンドを入力します。パラメータの「40」は確保するEMSのページ数です。
A:\JKIT\EMSINST.EXE 40
これで、Cドライブ(内蔵RAMドライブ)にEMS領域(40ページ、640KByte)が確保されます。
次に、日本語のフォントデータをCドライブに用意するために、以下のコマンドを入力します。
MKDIR C:\FONT
COPY A:\FONT C:\FONT
これでフォントデータも用意できましたので、再起動(CTRL+ALT+DELキーの入力)を行います。
ちなみに日本語入力モードにするには、ALT+SPACEキーになります。
以下の画面のように、日本語の表示も入力もできるようになりました。スクリーン画像は「CAPLX」というソフトウェアを使っています。
HP200LX上で利用しているSDカードのバックアップを取ろうとしましたが、Windows上でフォーマットしたものでは認識をしませんでした。フォーマットの方法はいくつかありますが、一番確実な方法は、HP200LX上でフォーマットすることのようです。以下の手順で行います。
「CTRL」+「ALT」+「DEL」キーを同時に押下してリブート
すぐに「ALT」キーを押下して、ブートメニューを表示
メニューの「6」を選ぶ、日付、時刻に対して「ENTER」キー
D:\BIN\FDISK100
D:\DOS\FORMAT A:
注)2GByteまでのメディアであれば利用可能です。ただし、アダプタによってはFORMATコマンドでエラーになる場合があります。
この文章を書くきっかけは、MS-DOS版のテキスト・エディタ Vz が自由に使えるようにと作者(c.mos)さんが公開してくれたことによります。以前にHP200LX上で利用していましたので、懐かしいHP200LXについても記憶をもとに書いておこうと思いました。
テキスト・エディタVzの公開GitHubアドレスは次のとおりです。
GitHub - vcraftjp/VZEditor: MS-DOS Text Editor
また、2025年に新しくHP200LXを購入して環境を構築する人も少ないと思うことと、日本語入力ソフトDOS/V版ATOK8やWX2などはすでに販売されておらず入手が難しいため、設定に関する情報は記載していません。JKIT-Freeの取得とかHP200LXの設定については、以下のURLを参照してください。
hp200LX :日本語ソフトを新規に導入する。 | lx-rest (hp200LX)に関する修理改造情報(保存サイト)
以 上