2024年10月28日 作成
2024年12月28日 更新
Raspberry PiではいくつかのLinuxやWindowsなどの各種OSがUSB接続のSSDから起動することができます。
今までは主に「Ubuntu MATE」を利用していましたが、Raspberry Pi 5用の「Ubuntu MATE」 が2024年10月下旬になっても提供されていません。そこで、Raspberry Pi 5で「Ubuntu 24.04 LTS」をインストールし、その後にデスクトップ環境を「MATEデスクトップ」に変更してみました。意外と動作も軽く、安定もしていますので、その手順について記述します。
目指す環境は、日本語環境の整備(日本語の入力、文書作成ソフト、表計算ソフト、プレゼンテーションソフトの利用、プリンターへの印刷)、GIMPのような画像処理プログラムが利用できる、Webブラウザで日本語の各種情報が閲覧できる、conkyでシステム情報が表示できること、などです。
Raspberry Pi 5でUbuntu MATE 24.04を利用しているところ
以下の環境で利用します。
本体:Raspberry Pi 5 本体(8GByte)、CPU冷却ファン付きケース
SSD:SSD(240GB)とHDDケースでUSB 3.0接続
LAN:有線LANまたは無線LAN
Raspberry Pi 5 とケース
HDDケース(Salcar製)
SSD(KIOXIA製)
Raspberry Pi で動作するLinuxには各種ありますが、Ubuntu MATEは動作が軽快でメモリの使用量が少ないことが特徴で、以前からよく使っています。しかし、2024年10月現在、Raspberry Pi用のUbuntu MATE 24.04 バージョンは出ていません。
Ubuntu MATEに関する情報は次のURLから取得可能です。
そこで、Raspberry Pi 5でUbuntu 24.04バージョンをインストールして、その後にデスクトップ環境をMATEデスクトップに変更してみルことにしました。
最初に、通常通りにRaspberry Pi 5でUbuntu24.04 バージョンをインストールします(実際には24.04.1)。インストールするメディアは、SSDを使用しています。実際のインストール方法はこのサイトの「Ubuntu on RPi」を参考にしてください。
インストールが終わり、Ubuntuを起動したら最新の状態にするために端末画面上で次のコマンドを入力します。
$ sudo apt update
$ sudo apt upgrade
UbuntuデスクトップからMATEデスクトップに変更するために、端末画面上で次のコマンドを入力してubuntu-mate-desktopをインストールします。
$ sudo apt install ubuntu-mate-desktop
インストール途中でディスプレイマネージャの選択画面が表示されます。
前画面で「Enter」キーを入力すると、次の画面のように「gdm3」、「lightdm」の選択肢が表示されます。Ubuntu MATEの場合、通常は「lightdm」を使用するところですが、今回は「gdm3」を使用します。次の画面で「Tab」キーを入力してカーソルを「了解」に移動させた後、「Enter」キーを入力します。
引き続き各種プログラムのインストールが続きます。すべてのプログラムのインストールが終了したら、再起動します。デスクトップをMATEにするかUbuntuにするかは、後述のようにログイン時に指定します。
デスクトップを変更するには、ログイン時、ユーザー名を入力した後、パスワードの入力画面で右下の「歯車」マークをクリックします。
ログイン画面(パスワード入力)
デスクトップとして「MATE」、「Ubuntu」、「Ubuntu on Xorg」が選べるので「MATE」を選択します。その後パスワードを入力してログインします。変更したデスクトップの指定は保存されますので、以後は指定する必要はありません。
ちなみに、「MATE」と「Ubuntu on Xorg」はX-Windowで動作し、「Ubuntu」はWaylandで動作するデスクトップです。
デスクトップの指定(MATE)
MATEデスクトップ環境でのログイン後の画面は次のとおりです。
ログイン後の画面
壁紙を変更してみました
Ubuntuデスクトップで起動してみました
この状態でコマンドneofetchを実行すると、OS名は「Ubuntu MATE 24.04.1 LTS」と表示されます。
マウスカーソルの点滅がおかしいので、メニューを起動し、「各種設定」の中の「MATE Tweak」を起動し、「ウィンドウ」タブの「ウィンドウマネージャ」の項目を「Marco(コンポジット無効)」に変更します。
以後はマウスカーソルの点滅が正常になります。
ただし、この方法は偶然に見つけたものなので正しい対応策かどうかは分かりません。
ついでに、画面描画高速化のために「アニメーションを有効にする」欄のチェックを外します。
2024年11月1日においてはchromium-browserを実行するとシステム全体がフリーズする状態でした。しかし、11月10日にソフトウェアをUpdate、Upgradeしたら問題なく利用できるようです。
使い勝手が良くなるので、記述しておきます。
普段は日本語入力としてfcitx5-mozcに変更して使用していますが、今回はibus-mozcのままで使用しています。ただし、日本語入力におけるIM(Input Method)として「日本語-日本語」と「日本語-Mozc」が設定されているため、漢字などを入力するときにIMを切り替えるキー(<Super>+Space)入力が必要になり煩雑です。簡単にするため、メニューの「各種設定」をクリックして表示される「IBusの設定」において「入力メソッド」の項目を「日本語-Mozc」のみに設定しています。これで、「半角/全角」キーのみで漢字入力、英数字入力の切り替えができるようになります。
Raspberry Pi 5ではNVMe SSDを利用してブートできるようになっています。Ubuntu MATE 24.04をNVMe SSDから起動することもありますので、必要な設定を記述しておきます。
/boot/firmware/config.txtに次の行を追加します。
[pi5]
# for NVMe Hat
dtparam=pciex1
dtparam=pciex1_gen=3
またCPUのオーバークロックの設定についても記述しておきます。CPUを2.8GHz、GPUを920MHz、CPUの最小クロックを600MHzに設定するパラメータです。
# for CPU Over Clock
arm_freq=2800
arm_freq_min=600
gpu_freq=920
Ubuntu MATEで、プリンターを利用する方法です。
私のプリンターは、「Canon XK120」という最近買い換えたプリンターを無線LAN(WiFi)に接続してWindowsで利用しています。もちろんWindowsパソコンやRaspberry Pi 5と同じネットワーク(セグメント)上に設置しています。
Ubuntu MATEではネットワーク上やUSB接続のプリンターを自動的に認識するようで、設定も自動的に行われるようです。従って、Windowsと同じように利用することができます。
所持しているプリンターがUbuntu MATEで認識されているかを確認するには、プリンターの電源をONにして、Ubuntu MATEのメニュー上の「システム管理」→「プリンター」を順にクリックします。認識されている場合には、下図の右のように表示されます。
1)「メニュー」→「システム管理」→「プリンター」
2)認識された状態
文書作成ソフト「LibreOffice」などのメニューから「印刷」をクリックすることで利用できます。
家庭内LANに設置してあるハードディスクNAS(Network Attached Storage)をUbuntu MATEで利用する方法です。NASを使用することでLinuxでもWindowsでも共通にファイルにアクセスすることが可能になり、便利になります。
Windowsで使用するNASにはいくつかのプロトコルのバージョンがありますが、使用しているNASは古いものでSMBv1でした(Windows10では共有でき、Windows11では追加の設定をしないと共有できないことからわかりました)。
Ubuntu MATEでは、以下の設定をすることでNASの利用が可能となります。
/etc/samba/smb.confの[global]セクションに次の行を設定します。その後、再起動します。
[global]
workgroup = WORKGROUP
client min protocol = NT1
再起動後にネットワーク上のハードディスクを利用するためにファイルマネージャ「caja」を起動します。表示されているメメニューの「移動」をクリックし、表示されたメニューの「場所」をクリックします。次に「移動」欄にNASのアドレスを以下のようにコンピュータ名またはIPアドレス(SMB://192.168.100.xxx/)で指定します。
SMB://RECBOX-201712/
1)cajaの起動
2)メニューの「場所」をクリック
3)アドレスを入力
4)NASの内容が表示される
表示されたフォルダ「disk1」を更にクリックすると、以下の左図の画面が表示され、認証が求められます。私の場合は家の中での利用なので、誰もが利用できるようにしています。「接続方法」を「匿名(A)」のまま「接続をする」をクリックします。以下の右図のようにNASのハードディスクが利用できるようになります。
5)匿名で接続
6)NAS内の「disk1」の内容が表示され、利用可能になる
2024年11月になり、x86版、x64版のUbuntu MATE 24.10がリリースされたようなので、Raspberry Pi 5でも導入が可能か確認してみました。Raspberry Pi用のUbuntu MATE 24.10は提供されていませんので、24.04と同じようにしてMATEデスクトップ環境を構築してみました。
今回、Raspberry Pi 5でUbuntu MATE 24.04を利用したくて、Ubuntu 24.04にMATEデスクトップを追加インストールしました。今までのUbuntu MATEと同じに使え、動作も安定しています。UbuntuとMATEの各モジュールがインストールされることによるディスク容量の増加はありますが、それ以上にUbuntuとMATEを簡単に切り替えて利用できるようになり、時々それぞれを検証することがあるため、非常に便利です。
以 上