2022年07月13日 作成
2023年02月10日 更新
Raspberry Pi 4B ではいくつかのLinuxやWindowsなどの各種OSがUSB接続のSSDから起動することができます。今回はよく利用しているUbuntu MATEの最新版をSSDから利用してみようと思います。
目指すところは、日本語環境の整備(日本語の入力、文書作成ソフト、表計算ソフト、プレゼンテーションソフトの利用、プリンターへの印刷)、GIMPのような画像処理プログラムが利用できる、Webブラウザーで日本語の各種情報が閲覧できる、conkyでシステム情報が表示できること、などとします。
Ubuntu MATE は バージョン 20.10からUSB接続の外部記憶装置(SSDやHDD)からのブートができるようになっています。今回は2022年7月にRaspberry Pi用の新しいUbuntu MATE 22.04 LTSが発表されていますので、これを使用します。
Raspberry Pi 4BでUbuntu MATE 22.04を利用しているところ
以下の環境で利用します。
本体:Raspberry Pi 4B 本体(4GByte、USBブート可能に設定)、CPU冷却ファン付きケース
SSD:HDDケースとSSD(240GB)でUSB 3.0接続
LAN:有線LANまたは無線LAN
Raspberry Pi 4 とケース
HDDケース(Salcar製)
SSD(KIOXIA製)
Raspberry Pi で動作するLinuxには各種ありますが、Ubuntu MATEは動作が軽快でメモリの使用量が少ないことが特徴で、以前からよく使っています。2022年7月現在では、Raspberry Pi用のUbuntu MATE 22.04 LTSバージョンが出ています。LTSバージョンは、長期サポートバージョンであり、最長5年間のサポートが保証されています。
Ubuntu MATEの取得は次のURLから可能です。
https://ubuntu-mate.org/download/arm64/
なお、Ubuntu MATEは数ヶ月ごとに更新されます。表示されたバージョン(22.04.x)を確認して最新のものを利用するようにします。
1)「22.04.1 LTS」を選択
2)「Direct Download」を選択
ダウンロードが終了すると次のファイル名になります。
ubuntu-mate-22.04-desktop-arm64+raspi.img.xz
ファイルは圧縮されていますが、次のステップ(SSDへの書き込み)での使用には問題ありませんので、解凍せずにそのままにしておきます。
先ほどダウンロードした「ubuntu-mate-22.04-desktop-arm64+raspi.img.xz」ファイルをSSDに書き込むには、Raspberry Piのサイトで用意されています「Raspberry Pi Imager」というプログラムを使用します。取得のためのURLは次の通りです。
Windowsで作成処理をしますので、「Download for Windows」をクリックしてダウンロードします。ファイル名は「imager_1.7.2.exe」になります。「Raspberry Pi Imager」をインストールするために、「imager_1.7.2.exe」をダブルクリックして実行します。インストール処理が行われ、終了後にWindowsのメニューに「Raspberry Pi Imager」という名前で登録されます。
パソコンのUSBポートにHDDケースに入れたSSDを接続して、Windowsのスタートメニューから「Raspberry Pi Imager」をクリックして実行します。
「OSを選ぶ」をクリックします。Ubuntu MATEはOSとして選択できませんので、先ほど取得したOSイメージを使用するために、「カスタムイメージを使う」を選びます。ファイル選択のウインドウが表示されますので、「ubuntu-mate-22.04-desktop-arm64+raspi.img.xz」を選択します。次に「ストレージを選ぶ」をクリックしてSSDが接続されているデバイスを選択します。その後、「書き込む」をクリックしてSSDに書き込みを行います。
1)Imager起動画面
2)「OSを選ぶ」をクリックしたところ
3)「カスタムイメージを使う」を選択
4)先ほどダウンロードしたファイルを選択
5)「ストレージを選ぶ」を選択
6)SSDを選択
7)「書き込む」をクリック
8)「はい」を選択すると書き込みが開始されます
9)書き込み終了
書き込みが終了したら取り外し処理を行ってSSDを取り外します。
作成したUSB SSDをRaspberry PiのUSB 3.0ポートに接続して電源をONにして起動します。環境としては、有線LANに接続した状態で起動しています。
最初の起動時には、Ubuntu MATEの初期設定を行う必要があります。メッセージに従って以下の操作をしてください。
(1)表示言語の設定(「日本語」を選択)
(2)キーボードレイアウトの設定(「Japanese」、「Japanese」を選択)
(3)住んでいる場所の設定(「Tokyo」を選択)
(4)ユーザー情報の入力(名前、コンピュータ名、ユーザー名、パスワード)
初期設定が終わるとログイン画面が表示されますので、パスワードを入力してログインします。
起動中の画面
起動中の画面
1)表示言語の設定
2)「日本語」を選択
3)キーボードの選択
4)「Japanese」、「Japanese」を選択
5)住んでいる地域を選択、「Tokyo」を選択
6)ユーザー情報の入力
7)情報を入力(名前、ユーザー名、パスワード)
8)インストール中(Ubuntuへようこそ)
9)インストール中(情報)
10)インストール中(追加ソフトを見つけましょう)
11)インストール中(Personal Computing)
12)インストール中(Applying Changes)
インストールが終了すると次のようにユーザー名が表示されて、ログインができるようになります。
ユーザー名が正しければパスワードを入力して、「Enter」キーを入力します。
ログイン後の画面は次のようになります。
Ubuntu MATEの紹介画面
「紹介画面」を消去すると次の画面になります。
Ubuntu MATEを終了するには、次の画面のように画面右上の電源マークをクリックします。その後表示されるウインドウで「シャットダウン」をクリックしてください。
最初にログインしたらUbuntu MATEの状態を最新の状態にする必要があります。端末を起動して、次のコマンドを実行します。
$ sudo apt update
$ sudo apt upgrade
Ubuntu MATEの場合、初期設定である程度は日本語に関する環境が整備されますが、一部に設定やインストールが不十分な部分があります。
かな漢字変換システム(IME)や日本語フォントなどを整備するために、以下の手順で設定します。
「メニュー」→「設定」→「言語サポート」をクリックします。
しばらくすると以下のウインドウが表示されますので、「インストール」をクリックします。日本語かな漢字変換システム(IBus)や日本語フォント(Notoフォント)が追加されます。
インストールが終わると次の画面になります。「日本語」が一番上にになっていること、「キーボード入力で使うIMシステム」が「IBus」になっていることを確認してください。もし、IMシステムが「IBus」になっていない場合には、ログインし直すか、リブートをしてくささい。変更後の設定が反映されます。
日本語かな漢字変換システムはIBusとMozcの組み合わせですが、文書作成などで使うLibreOfficeとの相性が悪いようで、文書作成中に画面の一部(メニュー)がちらつきます。IBusからFcitx5に変更すればちらつき現象は出なくなるので、Fcitx5に変更してみます。
次のコマンドでFcitx5とFcitx5-Mozcをインストールします。
$ sudo apt install fcitx5 fcitx5-mozc
インストール後はメニュー上の「言語サポート」メニューで、以下ように「キーボード入力で使うIMシステム」で「Fcitx5」を指定してください。
初期設定で日本語に設定した関係で、ホームディレクトリの名前も日本語になってしまっています。このままでは操作しづらいので英語に変換します。MATE端末を起動して、次のコマンドを入力してください。
$ LANG=C xdg-user-dirs-gtk-update
次の画面が表示されますので、「Don't ask me this again」にチェックを入れて、「Update Names」クリックして変更します。
Ubuntu MATEを便利に使うために、いくつかのプログラムをインストールします。前述の説明と重複するものも記述しています。
Ubuntu MATEを最新の状態にする
$ sudo apt update
$ sudo apt upgrade
テキストエディタvim
$ sudo apt install vim
Webブラウザchromium
$ sudo apt install chromium-browser
システムモニター conky
$ sudo apt install conky
パッケージマネージャ synaptic
$ sudo apt install synaptic
RDPクライアント remmina
$ sudo apt install remmina
画像処理ソフト GIMP
$ sudo apt install gimp
エミュレータ qemu
$ sudo apt install qemu
Ubuntu MATEで端末を起動すると以下の画面(左側)のように表示がおかしい(行間が間延びする)。この症状は、ipaフォントとtakaoフォントをインストールすることによって画面右側のように直ります。
以下のコマンドで「fonts-takao」をインストールします。
$ sudo apt install fonts-ipafont fonts-takao
その後端末を再起動すると以下の右側のような画面になります。
1)Ubuntu MATE 22.04インストール直後
2)ipaフォント、takaoフォントのインストール後
Ubuntu MATEの音声出力を液晶ディスプレイのスピーカーに設定する場合の方法です(HDMI出力)。
次のコマンドでraspi-configを実行する。
$ sudo raspi-config
以下の画面が表示されますので、カーソル移動キー、TABキー、Enterキーで操作して設定します。
1)「System Options」を選択し、「TAB」キーで<Select>へ異動して「Enter」キーを押す
3)「1 MAI PCM i2s-hifi-0」を選択し、「TAB」キーを押し「<了解>」へ異動して「Enter」キーを押す
2)「S2 Audio」を選択し、「TAB」キーで<Select>へ異動して「Enter」キーを押す
Ubuntu MATEで、プリンターを利用する方法です。
私のプリンター環境は、「Canon MG7130」という少し古いプリンターを無線LANに接続してWindowsで利用しています。もちろんWindowsパソコンやRaspberry Pi 4Bと同じネットワーク(セグメント)上に設置しています。
Ubuntu MATEではネットワーク上やUSB接続のプリンターを自動的に認識するようで、設定も自動的にが行われるようです。従って、Windowsと同じように利用することができます。
所持しているプリンターがUbuntu MATEで認識されていることを確認するには、プリンターの電源をONにして、Ubuntu MATEのメニュー上の「システム管理」→「プリンター」を順にクリックします。認識されている場合には、下図の右のように表示されます。
1)「メニュー」→「システム管理」→「プリンター」
2)認識された状態
認識されている場合には、文書作成ソフト「LibreOffice」などでメニューから「印刷」をクリックすることで利用できます。
LibreOfficeで印刷を実行しているところ
家庭内LANに設置してあるハードディスクNAS(Network Attached Storage)をUbuntu MATEで利用する方法です。NASを使用することでLinuxでもWindowsでも共通にファイルにアクセスすることが可能になり、便利になります。
Windowsで使用するNASにはいくつかのプロトコルのバージョンがありますが、使用しているNASは古いものでSMBv1でした(Windows10では共有でき、Windows11では追加の設定をしないと共有できないことからわかりました)。
以下の設定をすることでNASの利用が可能となります。
/etc/samba/smb.confの[global]セクションに次の行を設定します。その後、再起動します。
[global]
workgroup = WORKGROUP
client min protocol = NT1
再起動後にネットワーク上のハードディスクを探すためにファイルマネージャ「caja」を起動します。表示された「場所」欄の「ネットワークを...」をクリックして検索します。
ネットワーク上のハードディスクが以下のように表示されます。更に、ここでは「RECBOX-201712」をクリックすると以下の右図のように「disk1」が表示されます。
表示されたディスク「disk1」を更にクリックすると、以下の左図の画面が表示され、認証が求められます。私の場合は家の中での利用なので、誰もが利用できるようにしています。「接続方法」を「匿名(A)」のまま「接続をする」をクリックします。以下の右図のようにNASのハードディスクが利用できるようになります。
いくつかのアプリケーションをインストールしたところ、以下のメッセージが表示されるようになりました。システム起動時またはログイン時にシステムでエラーが発生しているようです。ここで、「キャンセル」をクリックして利用を開始しても、動作におかしなところはないようですので、エラーを無視することにします。
その後、ソフトウェアのアップデートをしたところ以下のメッセージは表示されなくなりました。
原因については詳細に調べてはいません。毎回ログインするたびに表示されて煩わしいので対策を調べてみました。根本的な解決方法にはなりませんが、以下のコマンドでメッセージは表示されなくなるようです。
$ sudo rm /var/crash/*
$ sudo sed -i 's/enable=1/enable=0/g' /etc/default/apport
以 上