2024年09月04日 作成
2025年04月19日 更新
Raspberry PiでARM版Windowsが利用できるようになり、その環境で文書作成などを行う場合には「Microsoft Office」を利用することになります。もちろんライセンスを所有しているならば、x86版(32ビット版)やx64版(64ビット版)もエミュレーション機能によって利用することができます。また、最近ではARM版Windows用のMicrosoft Office(ARM版)を利用することもできます。
しかし、Raspberry PiではLinuxも利用することがあり、文書作成環境については同じ環境にしておきたいと思っており、WindowsでもLinuxのどちらでも利用可能なオフィススイートである「LibreOffice」を利用しています。
2024年8月、ようやくARM版Windows専用のLibreOfficeが提供され、利用できるようになりました。この結果、エミュレーション機能の負荷がなくなり、より快適な動作が期待できます。
ここではARM版WindowsでLibreOffice(ARM版)を利用できるように、その設定方法を記述しておきます。
オフィススイートとしてはMicrosoft Officeが有名ですが、有料で利用環境はWindowsやMacに限られます。Linuxでは利用できません。反面、LibreOfficeは無料でありWindowsやMacそしてLinuxでも利用できるという特徴があります。
LibreOfficeにはMicrosoft Officeと同じように次の機能のプログラムがあります。
LibreOffice Writer:日本語ワープロ
LibreOffice Calc:表計算ソフト
LibreOffice Impress:プレゼンテーションソフト
LibreOfficeの詳細については次のURLを参照してください。
ARM版WindowsでLibreOfficeを利用するには、プログラムやフォントなどの環境をLinuxと同じように整えることが大事になります。必要な環境は次の通りです。
• LibreOfficeのプログラム
• 日本語フォント
• かな漢字変換ソフト
また、ARM版LibreOfficeを利用するには、以下に説明するランタイムライブラリが必要になります。
ARM版Windowsで利用可能なLibreOfficeは、LibreOfficeのページからダウンロードできます。また、プログラムを実行するには Microsoft C および C++ (MSVC) ランタイム ライブラリが必要になります。
ここでは LibreOffice(ARM版)をインストールして、実行するための環境設定について説明します。
ARM版WindowsでLibreOffice(ARM版)を実行するには、Microsoft C および C++ (MSVC) ランタイム ライブラリが必要になります。 このランタイム ライブラリは、次のURLからダウンロードできます。
https://learn.microsoft.com/ja-jp/cpp/windows/latest-supported-vc-redist?view=msvc-170
「ARM64」で示されるランタイム ライブラリを選択してください。
ARM64で示されるリンクをクリックすると、ダウンロードが行われます。MSCランタイムライブラリをインストールするには、ダウンロードした以下のプログラムを実行します。
VC_redist.arm64.exe
ARM版Windowsで実行可能なLibreOffice(ARM版)は、次のURLからダウンロードできます。
https://ja.libreoffice.org/download/download/
表示されるページには、最新版と安定版のプログラムがあります。仕事で利用する場合には安定版を、そうでなければ最新版を利用すると良いと思います。ARM版Windowsではオペレーティングシステムとして「Windows(Aarch64)」を選択してダウンロードします。
ここでは安定性の面からLibreOffce24.2.6を選択します。ダウンロードしたファイルは以下のファイル名になります。(2024年10月現在、最新版のLibreOffice 24.2.6の場合)。
LibreOffice_24.2.6_Win_aarch64.msi
インストールするには、このファイルをダブルクリックします。インストール処理が開始されますので、以後は表示されるメッセージに従って、操作をして下さい。
インストールが終了するとスタートメニューに登録されますので、メニューをクリックして起動します。
2025年4月、Windows 11 Ver.24H2のアップデートによってNoto Serif/Sans JPフォントがインストールされるようになりました。詳細は、後述の「2025年4月におけるフォント」を参照してください。
文書は内容はもちろんですが、印字される文字の美しさも読む人に好印象を与えます。内容については書く人の技量に委ねられますが、文字の美しさは利用するフォントによります。ここではLibreOfficeで使用する際の日本語フォントについて説明します。
WindowsではMS明朝/ゴシックがよく使われるフォントとして有名です。最近では綺麗と評判になっている遊明朝/ゴシックも利用可能になっています。特に遊明朝/ゴシックはデザイン性の高い文書で使われ、MS明朝/ゴシックはビジネス文書で使われている印象があります。
Linuxで最近よく使われれるフォントとしてGoogleやAdobeから無償提供されているNoto Serif/Sansおよび源ノ明朝/ゴシックというフォントがあります。字形が美しいと言われています。これらのフォントはLinuxだけではなくWindowsでも利用できますので、両方の環境にインストールすることにより、文書の互換性が良くなります。
LibreOfficeでは標準フォントとしてNoto Serif/Sansが設定されています。特にLibreOffice日本語版では次のフォントの利用が想定されています。
NotoSansCJKjp-{Black, Bold, DemiLight, Light, Medium, Regular, Thin}.otf
NotoSerifCJKjp-{Black, Bold, ExtraLight, Light,Medium, Regular, SemiBold}.otf
NotoSansMonoCJKjp-{Bold, Regular}.otf
これらのフォントは無償で利用できますが、各自で取得してインストールする必要があります。取得するためのURLは次のとおりです。Googleフォントとして検索するといくつかの情報が得られますが、最新のNotoフォントはgithubのものになります。
NotoSansCJKjp:https://github.com/googlefonts/noto-cjk/tree/main/Sans/OTF/Japanese
NotoSerifCJKjp:https://github.com/googlefonts/noto-cjk/tree/main/Serif/OTF/Japanese
NotoSansMonoCJKjp:https://github.com/googlefonts/noto-cjk/tree/main/Sans/Mono
ダウンロードしたファイルは次の名前になります。
Noto Sans CJKjp
NotoSansCJKjp-Black.otf
NotoSansCJKjp-Bold.otf
NotoSansCJKjp-DemiLight.otf
NotoSansCJKjp-Light.otf
NotoSansCJKjp-Medium.otf
NotoSansCJKjp-Regular.otf
NotoSansCJKjp-Thin.otf
Noto Serif CJKjp
NotoSerifCJKjp-Black.otf
NotoSerifCJKjp-Bold.otf
NotoSerifCJKjp-ExtraLight.otf
NotoSerifCJKjp-Light.otf
NotoSerifCJKjp-Medium.otf
NotoSerifCJKjp-Regular.otf
NotoSerifCJKjp-SemiBold.otf
Noto Sans Mono CJKjp
NotoSansMonoCJKjp-Bold.otf
NotoSansMonoCJKjp-Regular.otf
取得したフォントをインストールするには、エクスプローラを起動して前述のファイルをマウスの右クリックで選択すると「インストール」メニューが表示されます。そのメニューをクリックします。すべてのフォントに対してこの操作を行います。
インストールが終わるとLibreOfficeのフォントリストに表示されるようになります。
日本語ワープロとして使う場合には、かな漢字変換ソフトは必須のものとなります。Windowsの場合にはMS-IMEやATOKなどの優秀なかな漢字変換ソフトがありますので問題とはなりません。Raspberry Piで動作するARM版WindowsではMS-IMEが利用できます。またATOKについては、x86版が動作しますが、x86アプリケーション上のみです。ARM64アプリケーション上では利用できません。注意が必要です。
個人的にはMS-IMEのキー設定をATOK準拠にして利用しています。以下にATOKのキー操作について説明します。
かな漢字変換の開始/終了 「半角/全角」キー
入力した文字を漢字に変換 「スペース」キー
変換対象の文節の伸縮 「→」キー、「←」キー
連文節変換時に次の文節へ 「↓」キー
変換結果の確定 「Enter」キー
入力を「ひらがな」に変換 「F6」キー
入力を「カタカナ」に変換 「F7」キー
入力を「半角」に変換 「F8」キー
入力を「全角」に変換 「F9」キー
変換操作を中止 「BS」キー
LibreOfficeを快適に利用する環境について述べてきましたが、LinuxとWindowsの環境を同じにしても、MS Officeとの互換性については完全な互換性は期待できませんので、注意してください。
ARM版Windows11でARM版LibreOfficeが動作している画面が次の画像になります。
LibreOffice(ARM版)の実行注の画面
ARM版Windows 11のVersion情報(23H2,22631.4037)
2024年9月初旬におけるVers. 24.8.0、Ver. 24.2.5の動作には多少の不具合がありましたが、2024年10月に提供されたVer. 24.8.2、Ver. 24.2.6では問題なく動作しています。
もし、利用に不安があるようであれば x64版やx86版を利用したほうがいいかもしれません。
2025年4月にWindows 11 Ver. 24H2のアップデートによって新たな次のフォントがインストールされ使用できるようになりました。
Noto Sans JP Noto Serif JP
Noto Sans JP Black Noto Serif JP Black
Noto Sans JP DemiLight Noto Serif JP ExtraLight
Noto Sans JP Light Noto Serif JP Light
Noto Sans JP Medium Noto Serif JP Medium
Noto Sans JP Thin Noto Serif JP SemiBold
したがって、Noto Sans/Serif CJK xxx などのフォントをインストールしなくてもNotoフォントが利用できるようになっています。しかし、LibreOfficeでは「Noto Sans/Serif CJK xxx」が最初に使用されるフォントとなっているようです。
以 上