2021年06月30日 作成
2023年02月11日 更新
これまで ARM版Windows 10 が Raspberry Pi 4B で動作することは分かっています。
2022年10月になり、Microsoft から新しい Windows 11, Version 22H2 についての発表があり、利用できるようになりました。ここでは、ARM版Windows 10 と同じように、Windows 11, Version 22H2 を USB 接続の SSD (Solid State Disk)から起動し、動作を確認してみます。
ただし、Microsoft や Raspberry Pi 財団などによる正式なサポートがあるわけではありません。あくまでも個人の責任で作業してください。
2021年3月までは Raspberry Pi 4B で ARM 版 Windows を USB ブートで起動させることは非常に難しいことでした。しかし、2021年4月以降はドライバーやブートに関する UEFI ファームウェアがアップデートされたことにより正常に起動できるようになっています。
2022年10月、UUP Dump のサイトや WoR のヴァージョンが変更になっていましたので、実情に合うように書き換えました。
2022年12月、最新のARM版Windows 11のISOファイルを作成するには、Windows 11, Version 22H2以降のパソコンで作業する必要があります。
Raspberry Pi 4BでWindows 11 を動作させているところ
Raspberry Pi 4B で動作する Windows 11は通常のパソコン(x64、x86)で使用しているものとは異なり、「Windows 11 on ARM」と呼ばれる ARM 社製 CPU(ARM64)を対象とした Windows 11 です。しかし、この「Windows 11 on ARM」は単独では市販されていません。Raspberry Pi 4B に Windows 11 をインストールするには「Windows 11 on ARM」の ISO イメージが必要となります。有志の方々がマイクロソフトが提供している公開情報から ISO イメージを作成するコマンドを提供してくれていますので、それを使って各自で作成します。従ってマイクロソフトからの正式なサポートはなく正常に動作するかどうかもわからないものです。
Raspberry Pi で「Windows 11 on ARM(ARm版Windows 11)」をある程度快適に動作させるためには Raspberry Pi 4B と SSD およびオーバークロックが必須と考え、以下の製品を使用しています。
本体:Raspberry Pi 4B 本体( 4GB、USB ブート可能に設定)、CPU 冷却用ファン付きのケース
SSD:HDDケースとSSD(240GB)で USB 3.0 接続
LAN:有線LAN
その他に Windows 11またはWindows 10 のライセンス、Microsoft アカウントが必要になります(通常的に利用する場合)。
Raspberry Pi 4 とケース
HDDケース(Salcar製)
SSD(KIOXIA製)
Windows の ISOイメージを作成する情報を公開しているサイトとして次の「UUP Dump website」があります。
ISO イメージから Raspberry Pi 4B で実行できるように SSD を作成するプログラムとして、次のサイトから「WoR(Windows on Raspberry)」プログラムをダウンロードします。
更に「Boot partition mount utility」もダウンロードしておきます。
1)メニューの「Downloads」をクリック
2)「Windows on Raspberry imager」、「Boot partition mount utility」と「PiMon」をダウンロード
ダウンロードした「Windows on Raspberry imager」、「Boot partition mount utility」と「PiMon」プログラムはzip形式で圧縮されていますので、解凍しておきます。
ARM版Windows 11のISOファイルを作成するには、通常(x86、x64)のWindowsパソコンで以下の作業を行います。
なお、最新のARM版Windows 11のISOファイルを作成するには、Windows 11, Version 22H2以降のパソコンで作業する必要があります。
「UUP dump」サイトで、「Latest Public Release build」の「Windows 11」をクリックします。次に「22H2」をクリックします。
次に「Architecture」が「arm64」の中で最新の「Windows 11, Version 22H2 (22621.nnnn) arm64」を選択します(必ず「Windows 11 ...」で始まるものを選んでください)。
その後に表示される画面に従って、Language として「Japanese」を指定して、「Next」をクリックします。
その後に表示される画面に従って、Edition として「Home とPro」を指定して、「Next」をクリックします。
最後に次の画面で「Create download package」をクリックしてコマンドパッケージをダウンロードします。
取得したコマンドパッケージ 「22621.nnnn_arm64_ja-jp_multi_xxxxxxxx_convert.zip 」を解凍します(ヴァージョンを示すnnnnとxxxxxxxxについては、ダウンロードしたファイルの名前に読み替えてください)。
次に、コマンドファイル uup_download_windows.cmd を管理者モードで実行します。以下のような名前で ISO イメージが作成されます。この ISO イメージを WoR で使用します。
22621.nnnn.yymmdd-hhhh.NI_RELEASE_SVC_PROD1_CLIENTMULTI_A64FRE_JA-JP.ISO
コマンド実行後は以下の画面が表示されます。終了まで40分ほどかかります(私の環境で)。
1)コマンド開始
2)コマンド終了は ”0” を入力
WoR サイトから取得したファイルを解凍した後、 WoR.exe を管理者モードで実行して、Raspberry Pi で起動できる SSD を作成します。Raspberry Pi で利用する SSD をパソコンに接続しておいてください。
WoR.exe を管理モードで実行すると次の画面が表示されます。
WoR.exeがバージョンアップして「2.3.0」になって画面が少し変更になり、最初の画面で「Wizard mode」が設定できるようになりました。
「Wizard mode」において設定を「Show only required options」のままにしておくと、以後で表示される「ドライバーを選択してください」、「Select UEFI ファームウェア」画面は表示されなくなり、自動的に最新のドライバーとUEFIファームウェアを利用するようになります。
上記の画面で「次へ」をクリックすると以下の「デバイス選択」画面が表示されます。ストレージドライブにSSDを、デバイスの種類を「Raspberry Pi 4/400(ARM64) 」を選択します。
以下の警告画面が表示されますが、「OK」をクリックして次に進みます。
次の画面で、「イメージファイル」にはUUP から取得したコマンドで作成した ISOイメージ を指定します。同時に 「Windowsのエディション」には持っているライセンスに従って「Windows 11 Home」または「Windows 11 Pro」を指定します。
ISOイメージファイルを選択しているところ
WoR起動時の画面で「Wizard mode」の設定を「Show only required options」にすると、「ドライバーを選択してください」、「Select UEFI ファームウェア」の設定画面は表示されません。
設定の確認画面が表示されます。
最後にインストールの概要が表示されます。「インストール」をクリックして SSD へのインストールを開始します。
SSD へのインストールが完了すると次の画面になります。
WoR が終了した時点で今後の作業に必要となる Raspberry Pi への設定を起動用の SSD に済ませておきます。
Raspberry Pi をオーバークロックするためには SSD内に作成されているBOOT パーティションにある「 config.txt 」を編集する必要があります、しかし、インストールが完了した時点では BOOT パーティションは不可視領域となっており、使用できなくなっています。
BOOT パーティションを使用できるようにするには WoR と同時にダウンロードした「Boot partition mount utility」を使用します。
「Boot partition mount utility」のプログラム である WoR-Boot-Mounter.exe を起動します。
次に先ほどインストールした SSD を指定します。
次に「View contents」をクリックして、BOOT パーティションをマウントしてファイル一覧を表示します。
以下のようにエクスプローラの画面が表示されますので、config.txt を編集します。
config.txt に次の2行を追加します。通常は 1.5GHzですが、 2.0GHz または 1.8GHz で動作するように設定します。
over_voltage=6
arm_freq=2000
または
over_voltage=4
arm_freq=1800
この後、「Boot partition mount utility」の画面で「unmount」をクリックしてマウントを解除します。
この段階で作成した SSD を取り外すことになりますが、「デバイスが使用中・・・」のメッセージが表示されて取り外しができない場合があります。無理に取り外さずにパソコンをシャットダウンしてから取り外してください。
さらに、 Raspberry Pi を最初に起動する際に必要となる操作がありますので、事前に説明します。
WoR でインストールされる Windows には、利用できるメモリは 3GByte までという制限が設定されています。この制限を解除するには、 Raspberry Pi を起動するときに Esc キー押して UEFI の setup モードにし、次の操作を行って解除をする必要があります。
「Esc」キー →「Device Manager」→「Raspberry Pi Configuration」→
「Advanced Configuration」→「Limit RAM to 3 GB」の項目を「Disable」に変更 →
「F10」キーを押して変更結果を保存 → 「Esc」キーを何度か入力して最初のメニュー → 「Reset」選択
WoR で作成した SSD を接続して Raspberry Pi の電源を ON にして、Windows 11 ARMを起動します。
電源をONにしてすぐに次のような画面が表示されますのでメモリの制限を解除する設定を行います。数分で Windows 11 ARMが起動し、Windows 11 の初期設定が始まります。なお、この設定は初回のみ設定すれば以後は大丈夫です。
1)Raspberry Pi 起動中に Esc キーを入力
2)UEFI メニューで Device Manager を選択
3)Raspberry Pi Configuration を選択
4)Advanced Configuration を選択
5)Limit RAM to 3 GB を選択
6)Disable に変更
7)Escキーを何度か入力すると保存のメッセージが表示されるので「Y」を入力
8)更にEscキーを入力して、最初のメニューに戻り、Resetを選択してリブート
通常のパソコン(x64)と同じように、表示される画面のメッセージに従って設定してください。
この段階ではキーボードが英語キーボード(101/102キー)になっています。設定中に「@」を入力する必要がある場合には、「Shift」+「2」キーで入力できます。起動後に日本語キーボード(106/109キー)に変更してください。
Windows 11を起動したら、スタートメニューの「設定」→「時刻と言語」→「地域と言語」→「日本語」欄にある「...(オプション)」をクリックして、「キーボード」欄の「レイアウトを変更する」→「日本語キーボード(106/109キー)」を選択
1)「設定」→「時刻と言語」→「言語と地域」、「日本語」欄の「...(オプション)」をクリック
2)「オプション」内のキーボード欄の「レイアウトを変更する」をクリック
3)「接続済みのキーボードレイアウトの変更」をクリック
4)「日本語キーボード(106/109キー)」を選択
5)変更後はメッセージに従って「今すぐ再起動する」をクリック
家庭内LANに設置してあるハードディスクであるNAS(Network Attached Storage)をWindows 11から利用する方法です。
NASを利用するとWindowsやLinuxの両方からファイルの共有ができ、非常に便利になります。しかし、古いNASであり、そのままでは利用できなかったので、その手順を記述します。
Windowsで使用するNASにはいくつかのプロトコルのバージョンがありますが、使用しているNASは古いものでSMBv1でした(Windows10では共有でき、Windows11では以下の設定をしないと共有できないことからわかりました)。
Windows 11から利用するには以下の手順で設定してください。
最初に「スタート」メニュー内の「設定」をクリックして、次に「アプリ」をクリックします。更にメニュー内の「オプション機能」をクリックして、表示されるメニューの一番下にある「Windowsのその他の機能」をクリックします。
「Windowsの機能の有効化または無効化」のウインドウが表示されますので、その中の「SMB 1.0/CIFS ファイル共有のサポート」にチェックを付けた後「OK」をクリックします。その後Windowsを再起動してください。
Windowsの再起動後にファイルエクスプローラを起動して、「ネットワーク」をクリックするとネットワーク上のハードディスクであるNAS(以下の例ではRECBOX-201712)が表示されます。なお、NAS上のハードディスクにはアクセス制限をかけてなく、グループとしても「WORKGROUP」で設定しています。
注意:USB メモリは使用できますが、取り外しを行うとエラーになり、ブルースクリーンになります。
次期Windowsということで、動作環境に各種の制約が発表れておりRaspberry Piでは動作しないかと思っていましたが、UUPやWoRによるインストールで動作することが分かり、今後もいろいろなテストができるようなので楽しみになりました。少し触っただけですが、新しいデスクトップ画面やウイジェットが用意されているようですが、基本的なところは現在のWindowsと同じように感じています。また、周辺機器のドライバーについても新しいものが出ているわけではないので、「Raspberry PiでARM版Windows 10」と同じ制限がありますので、ご注意ください。今後Updateで進化していくと思いますので、楽しみです。
以 上