2021年03月31日 作成
2022年12月25日 修正
これまで Raspberry Pi でいろいろな Linux をインストールして遊んでいましたが、Windows 10 が動作するという情報を得ましたので確認してみました。その結果、簡単なインストール手順で Windows on ARM( ARM版Windows 10 とも呼びます) が USB 接続の SSD(Solid State Disk) から起動し、動作することが確認できました。
ただし、Microsoft や Raspberry Pi 財団などの正式なサポートがあるわけではないので、あくまでも個人の責任で作業してください。
なお、2021年3月までは Raspberry Pi 4B で ARM 版 Windows を USB ブートで起動させることは非常に難しいことでした。しかし、2021年4月以降はドライバーやブートに関する UEFI ファームウェアがアップデートされたことにより正常に起動できるようになっています。
2022年9月、UUP DumpのサイトやWoRのヴァージョンが変更になっていたので、実情に合うように書き換えました。
2022年12月、最新のARM版Windows 10のISOファイルを作成するには、Windows 11, Version 22H2以降のパソコンで作業する必要があります。
Raspberry Pi 4B で Windows 10, Version22H2 を動作させているところ
Raspberry Pi 4B で動作する Windows 10 は通常のパソコン(x64、x86)で使用しているものとは異なり、「Windows 10 on ARM」と呼ばれる ARM 社製 CPU(ARM64)を対象とした Windows 10 です。しかし、この「Windows 10 on ARM」は単独では市販されていません。Raspberry Pi 4B に Windows 10 をインストールするには「Windows 10 on ARM」の ISO イメージが必要となります。有志の方々がマイクロソフトが提供している公開情報から ISO イメージを作成するコマンドを提供してくれていますので、それを使って各自で作成します。従ってマイクロソフトからの正式なサポートはなく正常に動作するかどうかもわからないものです。
Raspberry Pi で「Windows 10 on ARM」をある程度快適に動作させるためには Raspberry Pi 4B と SSD およびオーバークロックが必須と考え、以下の製品を使用しています。
本体:Raspberry Pi 4B 本体( 4GB、USB ブート可能に設定)、CPU 冷却用ファン付きのケース
SSD:HDDケースとSSD(240GB)を USB 3.0で 接続
LAN:有線LAN
その他に Windows 10 のライセンス、Microsoft アカウントが必要になります(通常的に利用する場合)。
Raspberry Pi 4 とケース
HDDケース(Salcar製)
SSD(KIOXIA製)
Windows の ISOイメージを作成する情報を公開しているサイトとして次の「UUP Dump website」があります。
以下の説明では「UUP dump website」の情報をもとに説明していきます。
ISO イメージから Raspberry Pi 4B で実行できるように SSD を作成するプログラムとして、次のサイトから「WoR(Windows on Raspberry)」プログラムをダウンロードします。
更に「Boot partition mount utility」もダウンロードしておきます。
1)メニューの「Downloads」をクリック
2)「Windows on Raspberry imager」、「Boot partition mount utility」と「PiMon」をダウンロード
ダウンロードした「Windows on Raspberry imager」、「Boot partition mount utility」と「PiMon」プログラムはzip形式で圧縮されていますので、解凍しておきます。
Raspberry Pi 4B に Windows 10 をインストールする詳細な方法についてはいくつかのサイトで説明されていますので、ここでは簡単に説明します。
なお、最新のARM版Windows 10のISOファイルを作成するには、Windows 11, Version 22H2以降のパソコンで作業する必要があります。
「UUP dump」サイトで、「Latest Public Release build」の「Windows 10」をクリックします。次に「22H2」をクリックします。
次に「Architecture」が「arm64」の中で最新の「Feature update to Windows 10, version 22H2 (19045.nnnn)」を選択します(必ず「Feature update ...」で始まるものを選んでください)。
その後に表示される画面に従って、Language として「Japanese」を指定して、「Next」をクリックします。
その後に表示される画面に従って、Edition として「Home とPro」を指定して、「Next」をクリックします。
最後に次の画面で「Create download package」をクリックしてコマンドパッケージをダウンロードします。
取得したコマンドパッケージ 「19045.nnnn_arm64_ja-jp_multi_xxxxxxxx_convert.zip 」を解凍します(ヴァージョンを示すnnnnとxxxxxxxxについては、ダウンロードしたファイルの名前に読み替えてください)。
次に、コマンドファイル uup_download_windows.cmd を管理者モードで実行します。以下のような名前で ISO イメージが作成されます。この ISO イメージを WoR で使用します。
19045.nnnn.yymmdd-hhhh.22H2_RELEASE_SVC_PROD1_CLIENTMULTI_A64FRE_JA-JP.ISO
uup_download_windows.cmd を管理者モードで実行
コマンド開始
コマンド終了は ”0” を入力
WoR サイトから取得したファイルを解凍した後、 WoR.exe を管理者モードで実行して、Raspberry Pi で起動できる SSD を作成します。Raspberry Pi で利用する SSD をパソコンに接続しておいてください。
WoR.exe を管理モードで実行すると次の画面が表示されます。
WoR.exeがバージョンアップして「2.3.0」になって画面が少し変更になり、最初の画面で「Wizard mode」が設定できるようになりました。
「Wizard mode」において設定を「Show only required options」のままにしておくと、以後で表示される「ドライバーを選択してください」、「Select UEFI ファームウェア」画面は表示されなくなり、自動的に最新のドライバーとUEFIファームウェアを利用するようになります。
次の画面では、Windows 10 をインストールする SSD を指定します。同時に Windows 10 を実行する Raspberry Pi の種類も指定します。
次の画面で、UUP から取得したコマンドで作成した ISOイメージ を指定します。同時に Edition(Home, Pro)を指定します。
WoR起動時の画面で「Wizard mode」の設定を「Show only required options」にすると、以下の「ドライバーを選択してください」、「Select UEFI ファームウェア」の設定画面は表示されません。
次の画面では、ドライバーを選択します。「最新のパッケージを...」を選択します。
使用される USB ドライバについてのライセンス確認画面が表示されます。「同意する」をクリックします。
次の画面で、ブートに必要な UEFI ファームウェアを指定します。「最新のファームウェアを...」をクリックします。
次に設定の確認画面が表示されます。
最後にインストールの概要が表示されます。「インストール」をクリックして SSD へのインストールを開始します。
SSD へのインストールが完了すると次の画面になります。
WoR が終了した時点で今後の作業に必要となる Raspberry Pi への設定を起動用の SSD に済ませておきます。
Raspberry Pi をオーバークロックするためには SSD内に作成されているBOOT パーティションにある「 config.txt 」を編集する必要があります、しかし、インストールが完了した時点では BOOT パーティションは不可視領域となっており、使用できなくなっています。
BOOT パーティションを使用できるようにするには WoR と同時にダウンロードした「Boot partition mount utility」を使用します。
「Boot partition mount utility」のプログラム である WoR-Boot-Mounter.exe を起動します。
次に先ほどインストールした SSD を指定します。
次に「View contents」をクリックして、BOOT パーティションをマウントしてファイル一覧を表示します。
以下のようにエクスプローラの画面が表示されますので、config.txt を編集します。
config.txt に次の2行を追加します。通常は 1.5GHzですが、 2.0GHz または 1.8GHz で動作するように設定します。
over_voltage=6
arm_freq=2000
または
over_voltage=4
arm_freq=1800
この後、「Boot partition mount utility」の画面で「unmount」をクリックしてマウントを解除します。
この段階で作成した SSD を取り外すことになりますが、「デバイスが使用中・・・」のメッセージが表示されて取り外しができない場合があります。無理に取り外さずにパソコンをシャットダウンしてから取り外してください。
さらに、 Raspberry Pi を最初に起動する際に必要となる操作がありますので、事前に説明します。
WoR でインストールされる Windows には、利用できるメモリは 3GByte までという制限が設定されています。この制限を解除するには、 Raspberry Pi を起動するときに Esc キー押して UEFI の setup モードにし、次の操作を行って解除をする必要があります。
「Esc」キー →「Device Manager」→「Raspberry Pi Configuration」→
「Advanced Configuration」→「Limit RAM to 3 GB」の項目を「Disable」に変更 →
「F10」キーを押して変更結果を保存 → 「Esc」キーを何度か入力して最初のメニュー → 「Reset」選択
WoR で作成した SSD を接続して Raspberry Pi の電源を ON にして、Windows 10 ARM を起動します。
電源をONにしてすぐに次のような画面が表示されますのでメモリの制限を解除する設定を行います。数分で Windows 10 ARM が起動し、Windows 10 の初期設定が始まります。なお、この設定は初回のみ設定すれば以後は大丈夫です。
1)Raspberry Pi 起動中に Esc キーを入力
2)UEFI メニューで Device Manager を選択
3)Raspberry Pi Configuration を選択
4)Advanced Configuration を選択
5)Limit RAM to 3 GB を選択
6)Disable に変更
7)Escキーを何度か入力すると保存のメッセージが表示されるので「Y」を入力
8)更にEscキーを入力して、最初のメニューに戻り、Resetを選択してリブート
通常のパソコン(x64、x86)と同じように、表示される画面のメッセージに従って設定してください。
この段階ではキーボードが英語キーボード(101/102キー)になっています。設定中に「@」を入力する必要がある場合には、「Shift」+「2」キーで入力できます。起動後に日本語キーボード(106/109キー)に変更してください。
Windows 10 を起動したら、スタートメニューの「設定」→「時刻と言語」→「言語」→「優先する言語」欄にある「A字 日本語」をクリックして表示される「オプション」をクリックする。その後表示される「言語のオプション:日本語」画面内の「ハードウェアキーボード」欄の「レイアウトを変更する」をクリックして「日本語キーボード(106/109キー)」を選択する。
1)設定 → 時刻と言語 → 言語 → A字 日本語
2)オプションをクリック
3)レイアウトを変更する
4)日本語キーボード(106/109キー)を選択
注意:USB メモリは使用できますが、Windows起動中に取り外しを行うとエラーになり、ブルースクリーンになります。
無線LANは利用できません。有線LANを利用してください。
ディスプレイの最大解像度は 1920x1080 のようです。
HDMI Audio(液晶ディスプレイのスピーカー)はHDMI0(電源ポートの隣のHDMIポート)のみサポート対象で、使用できます。
Raspberry Piの能力が高くないので、性能に影響する余計な設定を解除します(私個人の設定)。
CPUをオーバークロックで動作させる(個人的には1.8GHzに設定)。
アニメーション表示(設定→簡単操作→Windowsにアニメーション表示にする→OFF)
自動起動するアプリを減らす(メール、OneDrive、Cortana他)(一部のアプリの場合、タスクマネージャ→スタートアップ→アプリを無効、メールおよびOneDriveはアプリの中で設定)
タスクバーにある「検索」を設定(タスクバー上でマウスの右クリック→検索→検索アイコンを表示)
タスクバーにある「ニュースと関心事項」を設定(タスクバー上でマウスの右クリック→ニュースと関心事項→無効)
初期の Raspberry Pi から遊ばせてもらってきた小さなコンピューターですが、ついに Windows 10 が動作するようになって大変うれしく感じています。Raspberry Pi での ARM版Windows ということで、周辺機器やグラフィック関係のドライバなどがまだまだ開発段階のようですが、この情報をもとにたくさんの利用者が現れ、開発が一段と進むことを期待しています。
UUP 関係、WoR 関係の開発者にはこのような楽しい経験をさせていただいて感謝しています。同時に Raspberry Pi 4B で USB ブートを可能にしていただいた開発者にも感謝いたします。
最後に、この導入方法は Microsoft や Raspberry 財団などからの正式なサポートがあるわけではありません。利用については十分にご注意ください。
Raspberry Pi で Windows 10 を通常的に使用する場合には、ライセンスが必要になります。古い Windows 7 や 8 のライセンスでも認証されるようです。持っていない場合には購入する必要があります。
Home Edition:約17,600円
Pro Edition :約25,000円 (Amazonで確認)
上記のように高額なものになり、7,500円ほどの Raspberry Pi 4B で利用する価値があるのか疑問を感じます。Raspberry Pi を持っていて Windows に興味のある人が気軽に利用できるようになるためには、Microsoft に安価なライセンス体系での提供をお願いしたいものです。
なお、2021年3月時点の情報で作成し、公開したページは ここ に保存してあります。
以 上