2021年06月28日 作成
2022年05月04日 修正
2022年5月4日 追加
最新のUbuntu 22.04 LTSが2022年4月25日に発表されました。今までと同じインストール方法でRaspberry Pi 4Bで動作させることができることを確認しました。
Raspberry Pi 4(以後、「ラズパイ」と呼びます)で各種OSがUSB接続のSSDから起動することができるようになりましたので、最新のUbuntuを利用してみようと思います。
Raspberry Pi用のUbuntuは、Ubuntu 20.10から正式にRaspberry Piに正式に対応しており、またUSB接続の外部記憶装置からのブートもできるようになっていますので、最新のUbuntu 21.04でも利用してみます。
Raspberry PiでUbuntu 21.04を起動しているところ
以下の環境で利用します。
本体:Raspberry Pi 4B 本体(4GByte、USBブート可能に設定)、CPU冷却ファン付きケース
SSD:HDDケースとSSD(240GB)でUSB 3.0接続
LAN:有線LANまたは無線LAN
Raspberry Pi 4 とケース
HDDケース(Salcar製)
SSD(KIOXIA製)
Raspberry Pi で動作するLinuxには各種ありますが、Ubuntuは英国のCanonicalという会社が開発しているシステムで、通常のx64、x86などのパソコンでは広く利用されているLinuxです。これをRaspberry PiでSSDから起動してみます。
Ubuntu 21.04では、グラフィックスシステムがX WindowからWaylandに変更になっています。WaylandはX Windowよりも高速に動作するということで採用されています。しかし、いくつかのプログラムでは表示がおかしくなるので、巻末の「付録1」で対応方法を示します。
Raspberry Pi用のUbuntu 21.04の取得は次のURLから可能です。
表示された画面をスクロールすると次の画面が表示されますので、「Download 64-bit」をクリックしてダウンロードします。
Download 64 bitを選択
ダウンロードが終了すると次のファイル名になります。
ubuntu-21.04-preinstalled-desktop-arm64+raspi.img.xz
ファイルは圧縮されていますので、7-zipなどで解凍します。解凍後のファイル名は次のようになります。
ubuntu-21.04-preinstalled-desktop-arm64+raspi.img
先ほどダウンロードした「ubuntu-mate-20.10-desktop-arm64+raspi.img」ファイルをSSDに書き込むためには、Raspberry Piのサイトで用意されています「Raspberry Pi Imager」というプログラムを使用します。取得のためのURLは次の通りです。
「Download for Windows」をクリックしてダウンロードします。ファイル名は「imager_1.6.1.exe」になります。
パソコンのUSBポートにHDDケースに入れたSSDを接続して、「imager_1.6.1.exe」をダブルクリックして実行します。
「CHOSE OS」をクリックします。UbuntuはOSとして選択はできますが、先ほど取得したOSイメージを使用するために、「User custom」を選びます。ファイル選択のウインドウが表示されますので、ファイルとして「ubuntu-21.04-preinstalled-desktop-arm64+raspi.img」を選択します。次に「CHOSE STORAGE」をクリックしてSSDが接続されているデバイスを選択します。その後、「WRITE」をクリックしてOSイメージをSSDに書き込みを行います。
1)Imager起動画面
2)CHOOSE OSをクリックしたところ
3)Use customを選択
4)先ほどダウンロードしたimgファイルを選択
5)CHOOSE STORAGEを選択
6)SSDの選択
7)WRITEをクリック
8)正常終了
書き込みが終了したら取り外し処理を行ってSSDを取り外します。
作成したUSB SSDをRaspberry PiのUSB 3.0ポートに接続して起動してみましたが、起動しませんでした。調べた結果、使用しているHDDケース(Salcar製)に備わっているUASP(USB Attached SCSI Protocol)機能とLinuxカーネルとの相性が悪いことが分かりました。従って、最初はUSB SSDをUSB 2.0ポートに接続して起動します。(注:Ubuntu 22.04ではUSB 3.0のポートでも正常に起動します。)
最初の起動時には、Ubuntuの初期設定を行う必要があります。メッセージに従って以下の操作をしてください。
(1)表示言語の設定(「日本語」を選択)
(2)キーボードレイアウトの設定(「Japanese」、「Japanese」を選択)
(3)住んでいる場所の設定(「Tokyo」を選択)
(4)ユーザー情報の入力(名前、コンピュータ名、ユーザー名、パスワード)
初期設定が終わるとログイン画面が表示されますので、表示されているユーザー名をクリックした後、パスワードを入力してログインします。
ユーザーの選択
パスワードの入力
ログイン後の画面は次のようになります。
注:Ubuntu 22.04では以下の作業は必要なくなりました。直接USB 3.0から起動することができます。(2022年5月4日 追加)
次にSSDがUSB 3.0ポートから起動できない問題を解消します。方法は以下のサイトを参考にさせていただきました。
https://signal-flag-z.blogspot.com/2020/03/raspberry-pi-4usb30ssd.html
端末を起動してlsusbコマンドを実行してUSB SSDのVIDとPIDを確認します。
この情報をもとに、/boot/firmware/cmdline.txtの最初に次のパラメータを追加します。
usb-storage.quirks=152d:0578:u
パラメータ「usb-storage.quirks=152d:0578:u」と次のパラメータ「dwc_otg.lpm_enable=0」との間に空白1個を挿入してください。
パラメータの追加が終わったらシャットダウンして電源をOFFにしてからUSB SSDをUSB 3.0ポートに接続し直して再度起動してください。正常に起動できると思います。
なお、SSDではなくHDDの場合には、この設定は必要ないようです。
Ubuntuの場合、初期設定である程度は日本語に関する環境が整備されますが、一部に設定やインストールが不十分な部分があります。
かな漢字変換システム(IME)や日本語フォントなどを整備するために、以下の手順で設定します。
「アプリケーションを表示する」→「言語サポート」をクリックします。
しばらくすると以下のウインドウが表示されますので、「インストール」をクリックします。日本語かな漢字変換システム(fcitx)や日本語フォント(Notoフォント)が追加されます。
インストールが終わると次の画面になります。「日本語」が一番上にになっていること、「キーボードで使うIMシステム」が「IBus」になっていることを確認してください。もし、IMシステムが「IBus」になっていない場合には、「IBus」に設定した後、ログインし直すか、リブートをしてください。設定が反映されます。
インストール時のキーボード設定では「半角/全角」キーによるかな漢字変換はできない状態です。できるように次の設定をします。画面左下の「アプリケーションを表示する」ボタンをクリックし、次に「設定」をクリックします。
左側のメニューの中から「地域と言語」をクリックします。表示された画面で、「日本語(Mozc)」が一番上になるようにマウスで移動します。その後、ログアウトかリブートしてください。
「半角/全角」キーによるかな漢字変換ができるようになります。
初期設定で日本語に設定した関係で、ホームディレクトリの名前も日本語になってしまっています。このままでは操作しづらいので英語に変換します。端末を起動して、次のコマンドを入力してください。
$ LANG=C xdg-user-dirs-gtk-update
次の画面が表示されますので、「Don't ask me this again」にチェックを入れて、「Update Names」クリックして変更します。
Ubuntuを便利に使うために、いくつかのプログラムをインストールします。
Ubuntu MATEを最新の状態にする
$ sudo apt update
$ sudo apt upgrade
テキストエディタvim
$ sudo apt install vim
Webブラウザchromium
$ sudo apt install chromium-browser
システムモニター conky
$ sudo apt install conky
$ sudo apt install fonts-ipafont
パッケージマネージャ synaptic
$ sudo apt install synaptic
エミュレータ qemu
$ sudo apt install qemu
gnomeユーティリティ gnome-tweaks
$ sudo apt install gnome-tweaks
Ubuntuを終了するには、次の画面のように画面右上の電源マークをクリックします。
その後「電源オフ/ログアウト」をクリックして、最後に「電源オフ」をクリックします。画面表示が消えて少ししてからRaspberry Piの電源をオフにします。
Raspberry Pi用のUbuntu 21.04ではグラフィックシステムとして、今までのX Windowsシステム(X11)ではなくWaylandという新しいシステムが標準で使用されています。もちろんWaylandはX11との互換性はあるのですが、一部のアプリケーション(RemminaやFirefoxなど)では表示がおかしくなることがあります。
WaylandからX11に変更する方法があります。ログイン時のパスワードを入力する画面で、画面右下のボタンをクリックして「Ubuntu on Xorg」を選択することによってX11で起動するようになります。
Ubuntuには使い勝手を左右するデスクトップ環境がいくつか存在し、かつ簡単に導入して切り替えることができるようになっています。
2021年6月現在、Raspberry Pi用の新しいUbuntu MATE 21.04のインストールイメージが公開されていないので、さしあたってデスクトップ環境をUbuntuからUbuntu MATEに変更してみます。
UbuntuにUbuntu MATEデスクトップ環境をインストールするには次のコマンドを入力します。
$ sudo apt install ubuntu-mate-desktop
コマンド入力後しばらくすると次のようなディスプレイマネージャの選択画面が表示されます。「lightdm」を選択してください。選択はカーソルキーを使い、最後にTabキーで<了解>にカーソルを移動して、Enterキーを入力します。
インストール完了後、リブートすればlightdmのログイン画面が表示され、ログインするとUbuntu MATEデスクトップ環境になります。
lightdmのログイン画面
Ubuntu MATEデスクトップ環境
Ubuntuデスクトップ環境にUbuntu MATEデスクトップ環境をインストールしましたが、デスクトップ環境は自由に変更することができます。
たとえば、ディスプレイマネージャとして「lightdm」を利用している場合には、ログイン時に次の画面が表示されます。
パスワード入力画面で、ユーザー名の横のMATEマークをクリックすることによって、次の画面のように(見にくいですが)「MATE」、「Ubuntu(デフォルト)」、「Ubuntu on Xorg」のメニューが表示されますので、変更するデスクトップをクリックしてからログインします。
また、ディスプレイマネージャを「gdm3」にしていた場合には、次の画面のように、パスワード入力画面で右下のマークをクリックすることによって、利用するデスクトップ環境を選択することができます。画面では「MATE」、「Ubuntu」、「Ubuntu on Xorg」が選択できるようになっています。
なお、ディスプレイマネージャの変更は、端末を起動して次のコマンドで行うことができます。
$ sudo dpkg-reconfigure gdm3
または
$ sudo dpkg-reconfigure lightdm
コマンド実行後にリブートをしてださい。新しいディスプレイマネージャが表示されます。
以 上