【乳幼児期における親との食器共有について見解】
一般社団法人日本口腔衛生学会は令和5年8月31日、乳幼児期における親との食器共有について情報発信を行いました。以前から親から子どもへのう蝕病原性菌の感染を予防するために親とスプーンやコップなどの食器の共有を避けるようにとの情報が広がっていますが、口腔内細菌の垂直伝播を予防しようとすることが子どものう蝕レベルに影響を及ぼすということの科学的根拠は必ずしも強いものではないことがわかっています。昨今親の唾液からう蝕病原性菌が子どもに感染するリスクを高めるということが報道で触れられていることから、日本口腔衛生学会が見解を示した形となりました。当会においてはこのことについて平成25年に若栗真太郎先生(滋賀県南部健康福祉事務所(草津保健所)当時)をお招きし会員研修会が開催され、「正しく理解して、伝えたい!ミュータンス菌の垂直感染 〜食器の共用、口移しを防ぐことでう蝕は予防できるのか〜」と題し御講演いただいておりました。
(講演要旨)
講演では垂直感染予防に関する誤解を紐解くにあたり、19世紀に遡り1960年代Keysの研究から新生児の無菌的口腔にS.mutans「いつ」・「どこから」感染するかの研究が始まったことを示し、年代毎にう蝕が感染症であること、生活習慣病と捉えられるようになったきっかけの研究の一部を抜粋され、母子垂直感染研究を裏付ける研究を紹介された。それらの研究から「食器の共有とう蝕との関連なし」「食器の共有と口腔内のS.mutans量との関連なし」「食器の共有とS.mutans定着との関連あり」「食器の共有による齲蝕発生への影響あり」「キスの習慣とS.mutans定着との関連あり」と示唆された。そして「垂直感染予防行動とう蝕発生」の関係が明らかになっていない状況から『保護者の垂直感染予防行動と3歳児のう蝕との関連』が報告され「垂直感染予防行動とう蝕発生とは関連ない」と結論づけた。
確かにう蝕は母子間での垂直感染が原因の1つと考えるが、う蝕を防ぐにはS.mutans等のう蝕病原性菌量のコントロールと同様に、食生活等の生活習慣のコントロールが大切である。つまり、う蝕病原性菌や歯周病原性菌等による生物学的な要因だけではなく、食生活や口腔衛生習慣等の生活習慣や行動による要因を同時に考え、母親に生活の中で知恵を絞り、工夫してもらうことがより賢明であろう。
(報告:広報部 善徳)