パノラマ撮影とパノラマ合成

パノラマ雲台の設計製作、パノラマ撮影、パノラマ合成で、これまで積み重ねてきた知識やノウハウを公開します。

パノラマ画素数と撮影枚数

  • 視力とパノラマ画素数

  • パノラマ画素数の簡易計算

  • パノラマ撮影枚数の簡易計算

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パノラマ撮影の予備知識

  • ダイナミックレンジの圧縮(HDR)

  • レンズの歪曲

  • 逆光

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パノラマ撮影

  • カメラ設定

    • フォーカス位置を固定

フォーカス位置を変更すると、画角やNPPが変化し、パノラマ合成での合わせ精度が劣化する場合があります。

パンフォーカスを目指してフォーカス位置を設定するか、高解像度で見せたい被写体にフォーカスを固定します。

個人的には、高解像度パノラマで、遠景を見せたい場合、無限遠にピントを合わせています。景色の良い遠景は、画面上で拡大して見る場合が多いためです。

    • 露出を固定

2枚の画像がオーバーラップする領域で、2枚の画像の明るさが同じであれば、パノラマ合成でのコントロールポイント抽出が容易になります。パノラマ画像の不自然な露出変化も防止できます。

明暗差が大きい場合、明るい部分に合わせるか、見せたい被写体に合わせます。

  • レンズの歪曲補正をOFF

レンズの歪曲は、パノラマ合成ソフトで補正するため、カメラでの歪曲補正はOFFします。

周辺減光は、補正したほうがダイナミックレンジの点で有利です。(Jpeg画像からの周辺減光補正は、ダイナミックレンジの点で不利なので、Jpeg作成時に補正しておいて、パノラマ合成では微調整程度の最適化を行います)

    • 明暗差への対応

      • 露出ブラケット撮影(3枚~5枚)してHRD合成

古典的なパノラマ撮影手法です。

広いダイナミックレンジが得られ、明暗差の大きな室内での撮影に向いています。

風に揺れる草木、寄せる波、移動する人や車などがあると、合成ブレになり、屋外では不便です。

      • RAWで撮影して、RAW現像で疑似HDR処理

露出ブラケット撮影よりも、短時間に簡単に撮影でき、撮影ミスも少なくなります。

屋外での高解像度パノラマに向いています。

室内では、窓の外が非常に明るい場合など、対応が困難なシーンもあります。あきらめるか、露出を変更して追加で撮影することになります。

  • 撮影順

撮影順は、慣例的に、

  • 1段撮影(魚眼レンズ)

右回りで1周→真上→真下→三脚下

  • 多段撮影(広角レンズ等)

真上→上の段から順番に、右回りで1周→真下→三脚下

右回りで撮影するのは、三脚への雲台取付が緩んでいても、撮影で回したときにネジを締める方向になり、落下等のトラブルを防止できるため、と思われます。上から先なのは、パノラマ雲台の上下回転が、上から下に回すほうが安定しているため、と推測します。

ただし、砂の上や雪の上など、自分の足跡が気になる場合、最初に三脚下で、下から順番に撮影することもあります。

(補足)

西ノ沢工房の雲台は、上下の回転もクリックストップ仕様なので、上下に動かしながら、1周で撮影することも容易です。

動かす回数を、1周11枚*3段で比較すると、

  • 1段ごとに、3周で撮影:左右11回*3=33回、上下4回で、33+4=37回

  • 上下に動かしながら、1周で撮影:上下2回*11+2=24回、左右11回で、24+11=35回

1周7枚*2段で比較すると、

  • 1段ごとに、2周で撮影:左右7回*2=14回、上下3回で、14+3=17回

  • 上下に動かしながら、1周で撮影:上下1回*7+2=9回、左右7回で、9+7=16回

上下に動かしながら、1周で撮影するほうが動かす回数を少なくでき、1周で撮影できれば、足跡も少なく魅力的です。何度も、この撮影方法にトライしていますが、

  • 水平に動かすほうが簡単(上下に動かすと、重力の影響があり、気をつかう)なので、上下の動きが少ないほうが楽に感じる

  • 慣例に合わせておけば、パノラマ合成ソフトでの扱いが便利

  • 1周7枚*2段では、2周で撮影すれば、1周目と2周目で時間差があり、その間に移動した人や車をマスクで消去できる

なので、慣例に合わせた撮影順に戻っています。

  • シャッター

屋内や夜景では、シャッター速度が遅くなり、ブレが発生しやすいため、リモコンや2秒タイマーを使用します。

明るい屋外であれば、シャッター速度が速いため、カメラのシャッターを手で押して撮影できます。

高精度のパノラマ雲台なら、シャッターを手で押して撮影しても、パノラマ合成には、あまり影響しないようです。

(補足)

西ノ沢工房の雲台+細い三脚で、シャッターを手で押して撮影すると、シャッター速度が遅くなると、撮影画像にブレが発生します。このため、三脚や雲台の変形は確実に発生し、視点ズレになりますが、この程度のズレは、パノラマ合成では問題なさそうです。ストリートビューの最大画素数で、3000枚以上のパノラマを投稿し、ほとんどが、シャッターを手で押して撮影していますが、撮影ミスが無ければ、移動していない被写体は、1ピクセル以内の誤差で合っています。

  • 撮影動画(YouTube)

    • 0軸雲台(一脚撮影)

      • 1段撮影


    • 1軸雲台(ヨー軸)

      • 1段撮影


    • 2軸雲台(ヨー軸+ピッチ軸)

      • 1段撮影+三脚消し撮影(手持ち、三脚影消し兼用)

α5100+7.5mmF3.5:1周4枚*1段+三脚消し=5枚撮影 → https://youtu.be/0NmR2K-lZTs

      • 2段撮影+三脚消し撮影(手持ち)+三脚影消し撮影(手持ち)


      • 3段撮影+三脚消し撮影(手持ち)+三脚影消し撮影(手持ち)


    • 3軸雲台(ヨー軸+ピッチ軸+底面アーム回転軸)

      • 1段撮影+三脚消し撮影(底面アーム)、曇りで、三脚の影なし

α5100+7.5mmF3.5:1周4枚*1段+真上+真下+三脚消し=7枚撮影 → https://youtu.be/o-G5orXwyk0

      • 2段撮影+三脚消し撮影(底面アーム)+三脚影消し撮影(底面アーム)


      • 3段撮影+三脚消し撮影(底面アーム)、曇りで、三脚の影なし


パノラマ合成

  • Huginパノラマ合成動画(YouTube)

    • 底面アダプターなし(or未使用)

      • 1段

NEX-5R+MADOKA+0軸パノラマ雲台 (1周4枚=4枚撮影) → https://youtu.be/9PTLyIedHqs

α6000+7.5mmF3.5+1軸パノラマ雲台 (1周4枚=4枚撮影) → https://youtu.be/abYrVsVk2yM

      • 1段+上下+三脚消し

α7+11mmF2.8+3軸パノラマ雲台 (1周5枚+上下+三脚消し=8枚撮影) → https://youtu.be/tZFO-cd8ijw

      • 1段+上下+三脚消し(三脚影消し兼用)

NEX-5R+7.5mmF3.5+2軸パノラマ雲台 (1周4枚+上下+三脚消し=7枚撮影) → https://youtu.be/M8hpSMmuw1k

 NEX-5R+8mmF2.8+2軸パノラマ雲台 (1周5枚+上下+三脚消し=8枚撮影) → https://youtu.be/IDUafPqkTmg

      • 2段+上下+三脚消し

α7R+21mmF3.5+2軸パノラマ雲台 (1周8枚*2段+上下+三脚消し=19枚撮影) → https://youtu.be/NicCJa0jeHc

    • 2段+上下+三脚消し+三脚影消し

α7+18mmF2.8+2軸パノラマ雲台 (1周7枚*2段+上下+三脚消し+三脚影消し=18枚撮影) → https://youtu.be/7kfO7XFOS3Y

α7+20mmF2.8+2軸パノラマ雲台 (1周7枚*2段+上下+三脚消し+三脚影消し=18枚撮影) → 準備中

    • 3段+上下+三脚消し+三脚影消し

NEX-5R+16mmF2.8+2軸パノラマ雲台 (1周10枚*3段+上下+三脚消し+三脚影消し=34枚撮影) → https://youtu.be/F20ikan4FTI

α7+28mmF2+2軸パノラマ雲台 (1周11枚*3段+上下+三脚消し+三脚影消し=37枚撮影) → 準備中


    • 底面アダプター使用

      • 1段+上下+三脚消し

α5100+7.5mmF3.5+3軸パノラマ雲台 (1周4枚+上下+三脚消し=7枚撮影) → 準備中

      • 2段+上下+三脚消し+三脚影消し

      • 3段+上下+三脚消し+三脚影消し

底面の撮影と合成

  • 自分の影の消去

  • 三脚の消去

  • 三脚の影の消去

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2009年から、フライトシミュレータ用のフォトシナリ作成のために、一眼レフカメラとズームレンズに合わせた専用パノラマ雲台を製作し、旅行先などでパノラマ撮影を行っていました。ミラーレスカメラと小型レンズが発売されて、専用パノラマ雲台を小型軽量化でき、小型の三脚に変更して、運搬も含めて、パノラマ撮影が楽になりました。

2013年にCNCフライス盤を導入し、パノラマ雲台の構造や材質も見直して、雲台の操作性、耐久性、精度が向上しました。撮影の精度や再現性が向上したことで、パノラマ合成も容易になりました。

風に揺れる草木や電線、寄せる波、動く人や車など、屋外でのパノラマ撮影には、ブラケット撮影に向かない被写体が多くあります。カメラのダイナミックレンジの向上や、RAW現像ソフトの進歩により、RAW画像1枚からの疑似HDR処理で、実用的な諧調とダイナミックレンジのパノラマ画像を作成できるようになりました。ブラケットなしでの撮影により、パノラマ撮影可能なシーンや気象条件が広がり、撮影時間も短縮できます。RAW現像時に、レンズの倍率色収差も、きれいに補正できますが、パノラマ用のRAW現像パラメータ調整は、今も悩む所です。

パノラマ合成には、当初からフリーソフトのHuginを使用しています。機能が大幅に強化され、手間はかかるものの、有料ソフトと同等のパノラマ画像を作成できるようになりました。高精度のパノラマ雲台、高速になったパソコン、自作の前処理スクリプトで、Huginでの作業時間は以前より短くなっていますが、特に高画素数のパノラマでは、パノラマ合成は撮影以上に手間と時間がかかる作業です。

2017年にフルサイズのミラーレスカメラを導入し、2018年からストリートビューに最大画素数で投稿しています。ストリートビューへの投稿歴は短いのですが、パノラマ雲台の設計製作、パノラマ撮影、Huginでのパノラマ合成には、多くのノウハウの積み重ねがあります。