「近代建築への注目が高まる中で、ユネスコは産業遺産や20世紀の建物を評価する枠組みを設けました。近代建築の価値が新たに見出されていくことは人類が新たな宝を得たとも言える喜ばしいことだと思います。しかしながら、その宝は概して大きく、博物館の小さな収蔵庫で保管できる文化財とは異なります。しかもそれは誰かの手で利用され続け、維持・管理され、時に修復されなければすぐに形を失ってしまいます。明治建築界の首領たる辰野金吾とその弟子・長野宇平治が設計した旧日本銀行京都支店の建造物である京都文化博物館別館も例外ではなく、まさに近代建築の宝であると考えています。この宝の保存と活用をいかにすればよいか、という問いに対し、当館では多くの方々の協力を得て、いくつもの新しい取り組みを始めています。今回の総合展示では、重要文化財でありながら博物館の別館として現在も活用されている旧日本銀行京都支店(1906年竣工)の建物を3Dデータとして残すだけでなく、工夫を凝らして作られた屋根裏の構造や現在では珍しいスレート屋根の様子などを、来場者がVRで体験できるようにしたことで、深く印象に残る展示になったと思います」(村野氏)