連続ツイート『社会科学のアイデア<1>政治学編 SNS選挙』を転載します。

2021.07.02

以下は昨日の弘学研 @gugakuken (Twitterアカウント)からの連続ツイートの転載です(202171日)。


今日は今から社会科学のアイデアの第1弾 政治学編、『SNS選挙 DXで実現する任意民主制と個人分権』の連続ツイートを始めます。現代の情報通信技術で民意を最大限に反映する政治を実現しようという提案です。クラスター社会を前提とした新しい民主主義の在り方を展望します。では始めます。

最初に問題提起です。日本の政治は、民主主義国家を名乗るも、民意が反映されていないと感じます。選挙では組織票が多数を占め、一部の人間が政治を決める、投票しても政治は変わらないとの諦めから投票率が低迷しています。民意が政治に反映されない選挙制度に多くの人々が空しさを感じています。

日本の政治制度は政党制を採用していますが、歴史的に政権交代はほぼ起こらず、政党は機能を失っています。一方で、憲法では国会を国権の最高機関と定めるも、行政府の機能の増大と共に、民意を得ていない官僚が政治を支配しています。かと言って、独裁的なリーダーは政治を私物化するばかりです。

現代の社会は職業の分業化や関心の多様化が進み、クラスターに分断されています。職能団体は時に自己の利益のために政治に影響を及ぼす圧力団体となり、広く人々の意思を政治に反映するのを妨げます。一方で、諸分野の専門家の意見を素人と同列に扱って集団の意思決定を行うと衆愚政治に陥ります。

かつて民主主義は多数の弱者が少数の強者から権利を勝ち取った栄光の歴史でした。しかし、現代の民主主義の課題は少数の弱者が多数の強者から権利を勝ち取れるかに移ります。例えば障害者は少数派で、MeToo運動は広がりません。少数の弱者が権利を勝ち取るには多数決の原理の超克が必要です。

一億人を超える日本の社会で千人にも届かぬ国会議員が立法府の能力を果たせるでしょうか。選挙で民意が政治に反映されない問題も、政党が機能を失い、官僚や独裁者が政治を支配する問題も、多様な民意に対する国会議員の圧倒的な不足が原因です。代表者を選んで政治を任せる間接民主制の限界です。

クラスター化する現代社会の政治問題は多様化・複雑化していて、その全てを個々人が把握することはできません。数百人の国会議員では専業であっても国政の万事に対応することは不可能です。数が限られた議員では専門分化ができず、民意で選ばれたわけでもない官僚が立法を担うことになったのです。

一部の人間だけでなく全ての有権者の意思が政治に反映される選挙制度が必要です。それは少数意見を尊重するため、専門家の知見を活かすためにも必要です。クラスター社会を前提とし、むしろ強みに変えて、国会の立法能力を飛躍的に高める必要があります。各個人の多様な関心や見識を活かすのです。

政治制度は古代には各自の意思を反映できる直接民主制も存在しましたが、人口の増大や国土の拡大で効率的な意思決定が求められ、代表者を選び政治を託す間接民主制が主流となった歴史があります。現代ではインターネットが普及し、情報流通の高速化・効率化で直接民主制の復活も可能となりました。

情報社会の現代においては空間的な制約はないですから、広大な国土においても全ての個人が政治に参加できます。新しいメディアや特にSNSのようなシステムを政治の運営に応用すれば、各個人がネットを介して合意形成を図りつつ、直接投票で集団の意思決定を行う、そんな世界を今や実現できます。

世界に目を向けると、独裁主義体制の中国が台頭し、民主主義陣営のアメリカと覇権を争っています。一方で両国の中でも深刻な問題を抱えています。自己を優先して他者を軽視する独善主義と集団を優先して個人を軽視する全体主義の間における葛藤は全ての国、全ての人が内に抱える本質的な問題です。

中国がデジタル技術やAIを政治・経済に導入し影響力を強める中、民主主義にも進化が必要です。情報通信技術の可能性は情報の活用だけに留まりません。DX(デジタル・トランスフォーメーション)の核心は人間の意思を反映し合意を形成することであるべきです。これが『SNS選挙』の提案です。

独善主義による分断でもなく、全体主義による統一でもなく、人間の意識の分化と統合を目指すことで個と和は両立します。新しい民主主義は各個人の多様性を尊重し活かしつつ、互いの善き関係性の構築を実現するでしょう。民主主義のアップグレードの核心となる『SNS選挙』のアイデアを論じます。



まず、『SNS政治』、すなわち政治用SNSを用いた民主政治のイメージを共有します。SNS政治の基本発想は『現代の情報通信技術で直接民主制を復活して個人分権を実現する』というものです。政治用SNSはTwitterやFacebookのようなプラットフォームが基本イメージとなります。

政治用SNSは政府が運営・管理し、有権者がユーザーとなります。政治に関する情報や意見がタイムラインを流れ、議論がトピックに表示されます。有権者は情報や意見、議論を参照し、各法案に投票します。政治用SNSではマスメディアだけでなく各個人も発信、議論を通して世論形成に寄与します。

SNS政治の仕組みとしてはクラスター社会を前提に各有権者に自身の関心に応じた重点投票を認めます。各有権者は各法案に直接投票しますが、関心がない、判断できない等の場合はその法案への投票を見送り、代わりに関心の強い法案に票を上乗せして投票できます。『クラスター制民主主義』です。

SNS政治では有権者は原則、法案に直接投票するので、従来の選挙制度のように政治家や政党を選ぶ必要はありません。一方で、有権者が自身で投票先や賛否を判断できない場合は他者に投票権を委託する間接投票も選択できます。資質ある人間に政治を任せるという従来の間接民主制の良さも残します。

直接民主制を原則とするSNS政治でも政治家や政党は重要な役割を担いますが、これらはあくまでも従であり、有権者こそが主です。各人の意思は自分で表現するしかないのです、たとえ他者に委任するという意思であってもです。権力分立を徹底していくと、最終的には『個人分権』へと行き着きます。



次に、『SNS選挙』、すなわち政治用SNS上で行う選挙の方法と制度の原案を紹介します。SNS選挙の基本案は、全有権者による各法案への直接投票を原則とし、法案毎に傾斜配分投票が可能で、白票を他者に委託する間接投票も選択できる、というものです。これが『直接・間接任意民主制』です。

SNS選挙では直接投票が原則です。各有権者は各法案に対して賛成・反対を選んで直接投票します。全投票数のうち賛成が過半数を占めればその法案は可決され、反対の方が多ければ否決されます。従来の選挙のように候補者を選ぶのではなく法案に賛否を投じるので、有権者の意思が直接反映されます。

SNS選挙では傾斜配分投票も可能です。新たな法案が発議されて議決の対象となる度に全有権者には法案への投票権が与えられますが、各有権者は自分の持ち票を法案毎に票数を増減させて投票することができます。全有権者は一人同数票を有し、各自の関心や重要度を基に重点的に投票できるわけです。

重点投票で各有権者が自分にとって重要だと思う法案に多くの票を投票できれば、少数意見も採用される機会が増えるでしょう。どんな人でも常に多数派というわけではなく、少数派の側面もあります。一人一票改め、一人同数票の原則は少数の弱者としての個々人の権利を救う、新しい多数決の原理です。

傾斜配分投票を利用すれば、専門家が自分の専門分野に関連する法案に対して重点的に投票することで専門家としての役割と責任を果たすこともできます。傾斜配分投票は各々の分野や業界の専門家が見識を活かして正当に集団の意思決定に影響を与えることを可能とし、民主主義国家の判断力を高めます。

SNS選挙では間接投票も認められます。各有権者は政治に関心が薄い、自分では判断が難しい等の理由で法案の投票先や賛否を選べない場合は他者に自分の投票権を委託して間接的に投票することも選択できます。投票権を委任された人はその人自身の持ち票と委託された白票を合わせて法案に投じます。

間接投票は従来の間接民主制の利点を受け継ぐものです。クラスター化する社会では政治に時間や労力を割きたくない人もいるかもしれません。有能な他者に権力を託した方が賢明な政治を実現できて、信託した有権者にも集団にも有益となる可能性もあります。間接投票は有権者にその選択肢を残します。

間接投票の制度があれば、政治の専門家たる政治家も引き続き政治の場で活躍することができます。また、専門家や活動家も投票権を信託されれば政治に影響力を発揮できます。一方で、これらは白紙委任でなく白票委託であり、有権者の信頼を失えば投票権は即時解除され、責任ある政治が求められます。

SNS選挙は直接民主制と間接民主制を併存させる『直接・間接任意民主制』、略して『任意民主制』を採用します。任意民主制の下では有権者は法案へ直接投票でき、関心の薄い議題やよく分からない議題に関する法案には投票しないで代わりに他の法案に重点投票もできるので、死に票は全く出ません。

任意民主制の下では間接投票も認められ、有権者が自身で判断できない場合には他者に投票権を委託でき、投票権の委任を受けた者は政治への影響力を行使できます。直接民主制と間接民主制を統合した任意民主制では政治に主体的に参加したい人も政治は他人に任せたい人も意思が最大限に尊重されます。


SNS選挙の制度の具体案を紹介します。まず、SNS選挙では投票権は各有権者に対して法案1本につき3票が与えられます。これら3票をそれぞれ『権利票』、『自由票』、『選挙票』と呼びます。法案がn本なら、投票権は合計3n票です。各有権者はこの3n票を自由に傾斜配分して投票できます。

法案1本に投票権を1票だけとすると、有権者が傾斜配分投票をしようとした時に投票できない法案が出てきてしまいます。傾斜配分投票する場合にも全ての法案に意思表示ができる権利を確保するため、権利票と自由票があります。加えて他者に票を委任する選択肢として選挙票も認め、計3票とします。

SNS選挙における白票委託(間接投票)の種類を案出します。
①全票委託…自分の持ち票の全票を特定の相手に委託する。
②分票委託…自分の持ち票の一部を他者に委託する。
③部票委託…特定の部門に限り投票する権利として委託する。
④個票委託…特定の議案に対し投票する権利を委託する。

SNS選挙の原則を従来の選挙と比較します。「普通選挙」は全ての成年に選挙権を与える制度でしたが、SNS選挙では投票権の委託も認めて選挙権・被選挙権を再定義します。「平等選挙」は一人一票の原則を採りましたが、SNS選挙では傾斜配分投票も認めて一人同数票の原則を以て平等とします。

「直接選挙」は有権者が直接に公職者を選出する制度でしたが、SNS選挙では有権者は直接に議案に投票するか投票権を他者に委託します。「秘密選挙」は誰に投票したかを秘密にする制度でしたが、SNS選挙ではアカウントの公開・非公開や実名・匿名、投票内容の公開・非公開を選択可能とします。

SNS選挙の選挙制度を具体的に考えてみます。まず、SNS選挙では選挙権、すなわち議案への投票権は全ての有権者に同数票が与えられます。一方、被選挙権、つまり投票権を委託される権利は希望する全ての有権者に与えられます。被選挙権を希望する者は自身のアカウントで白票委託を募集します。

SNS選挙では選挙管理機関は政府であり、政治用SNSは国の官僚や自治体の職員すなわち公務員が中心となって運営・管理します。政治用SNSのシステムは管理者や設計者の政治的意図を含まぬようできる限り機械的に設計し公平を求めます。システムの仕様を公開し検証可能としても良いでしょう。

SNS選挙における選挙の手続きは、新規の法案が提出される度に各有権者の投票権が加算され、各有権者は各法案に設定されている決議の期日までに自らが有する投票権を上限として任意の票数を投票する、という形を想定しています。期日中であれば投票の取り消しや変更を認めても良いかと思います。

SNS選挙における選挙運動は、投票権の委託を希望する者が政治用SNS上で随時自らの政治的見解を発信し、他者との議論にも参加して支持を集めるように努める、という形で実施します。一般の有権者も政治用SNS上で自らの意見を述べたり、法案の発議や賛否を呼び掛けたりできることとします。

SNS選挙における投票の方法は、各有権者が各法案の決議の期日までに政治用SNS上で投票する、という形です。各有権者は自らの投票内容は公開も非公開も選択できます。アカウントも公開・非公開や実名・匿名を選択できます。ユーザーの非公開情報は管理者にも閲覧禁止とするべきだと考えます。

SNS選挙も「選挙公営」であり、具体的には政治用SNSの利用環境は全ての有権者に無償で提供されます。また、一定の白票委託数を超えた者は『議員』の認定を受けられ、認定を受けた者には政治活動の費用が公金から支給されます。同時に、議員には公開討論会等への参加の資格と義務も生じます。

政治用SNS上で行うSNS選挙の方法と制度の原案は以上です。今回論じる政治学のアイデアの中でも『SNS選挙』こそが中心概念です。選挙、選択、集団の意思決定の原理と方法論は政治の最重要テーマだと私は確信します。SNS選挙の構想を今後さらに具体化する議論でも覚えておいてください。



最後に、『SNS国会』、すなわちSNS選挙に基づく国会の構成と運営の具体案を示します。SNS国会は政治用SNSの場で国家の政治運営を行うものです。従来の国会の役割をSNS選挙によって実現するために、立法の過程や衆議院・参議院の構成、内閣や裁判所との関係を抜本から再構築します。

SNS国会の流れです。SNS国会では有権者が問題を提起し、議論を求める支持が集まると議題が「発議」され、法案の「審議」が始まります。法案の文言は官僚や議員が作成し、誰でも閲覧して意見を表明できます。期日が来たら有権者が投票して「決議」し、賛成多数なら法改正、「公布」されます。

SNS国会の構成を説明します。SNS国会は従来の国会と同様、国権の最高機関であり、国の唯一の立法機関に位置付けられます。SNS国会は全ての有権者と国会議員による直接・間接任意民主制に基づき議決を行います。SNS国会は『新しい衆議院』と『新しい参議院』の二院制を採用します。

直接・間接任意民主制の下では国会の構成や両議院の役割が大きく変わります。『新しい衆議院』は全ての有権者から構成され、直接投票(傾斜配分投票や白票委託も可)で議決を行います。『新しい参議院』は白票委任が一定数を超え認定を得た議員から構成され、議員1人1票の投票で議決を行います。

SNS国会の意思は原則として新しい衆議院と新しい参議院の両院一致の議決で決まります。一方、両院で議決が一致しない場合は有権者の意思を直接反映する新しい衆議院が優越します。新しい参議院も議員が政治議論を主導する役割を持ち、内閣総理大臣も議員の中から有権者が直接投票で選出します。

SNS国会における有権者と議員の権利をまとめます。不逮捕特権は、特に必要ないでしょう。免責特権は、議員を含む有権者は政治用SNS上で行った演説・討論・表決について民事・刑事の責任は問われません。ただし、フェイク(虚偽情報の発信)やヘイト(憎悪的、差別的な表現)は禁止されます。

歳費を受ける権利は、まず全ての有権者に政治用SNSの利用環境が無償で与えられます。また、全ての有権者に政治活動をする時間や費用を確保するための経済的保障がベーシックインカムとして給付されます。議員は政治活動を専業または兼業とできるように公から交付金を受け取ることができます。

発議権は、全ての有権者と議員は一定数の賛同者の下にSNS国会で議案を発議できます。質問権は、全有権者と議員は内閣に対して質問ができます。他に、議案について質疑を行う権利や討論・表決に参加する権利は全有権者が有します。討論は有権者が重要と認定した数に応じてピックアップされます。

SNS国会の仕事を見ていきます。第一に、憲法改正は、新しい衆議院の要請を基に新しい参議院が中心となって改憲草案を作成し、新しい参議院の3分の2以上の賛成で発議し、新しい衆議院の過半数の賛成で可決します。投票権は1人1票ですが、少数意見をできる限り無視しない最高法規を求めます。

第二に、法律の制定です。SNS国会では法律案の発議権は一定数の賛成を得た有権者、議員または内閣が有します。法律案の議決は全ての有権者から成る新しい衆議院と議員から成る新しい参議院の議決の一致を原則としますが、一致しない場合は民意を直接反映する新しい衆議院の議決が優越します。

第三に、予算の議決と決算の審査です。予算の作成と提出はSNS国会で選出された内閣総理大臣を中心とする内閣が行います。予算は新しい衆議院・参議院に提出され、審議を経て投票(1人1票)で議決されます。決算は会計検査院の報告と共に両議院に提出され、審査、承認されます。従来通りです。

第四に、内閣総理大臣の指名です。SNS国会で一定数以上の白票委任を受けて議員に認定された者の中から立候補者を募った上で、全ての有権者が改めて直接投票(1人1票)を行い、最も得票数の多かった者が内閣総理大臣に指名されます。有権者が首相を直接選挙する、「首相公選制」を採用します。

第五に、条約の承認は、条約を内閣が調印した後、SNS国会の承認を得て、内閣が批准し、公布されます。第六に、弾劾裁判所の設置は、新しい参議院の議員の中から選出された裁判員で構成される弾劾裁判所において、裁判官を罷免させるかどうかの決定を行います。これらも従来の国会と同様です。


SNS国会の運営を考えてみます。SNS国会が開かれる政治用SNSは官僚(公務員)が運営・管理を担います。有権者はSNS国会の参加者として政治用SNSを利用するユーザーとなります。有権者の中で白票委任を一定数以上獲得した者は議員になる資格を得ます(議員になる義務はありません)。

有権者は日常的に政治用SNSを利用してSNS国会に参加し、SNS選挙を通じて政治の意思決定を行います。SNS国会には会期はなく、一年中国会が開設されます。一方で、一般の有権者が政治の議論や意思決定に参加しやすいように、日時や時期に配慮してSNS国会を運営する必要もあります。

SNS国会でも政党という仕組みは残します。議員同士が共通の政策を立案するために政党の名義を用いて公に発信できるシステムを設計します。政党は内閣総理大臣の候補者を擁立し、政権獲得を目指すこともできます。ただし、政治活動費は議員に個人単位で支給されるので、政党交付金はありません。

SNS国会では国会は常時開設されているので、従来の国会のような常会(通常国会)と臨時会(臨時国会)の区別はありません。議員も得票数に応じて随時認定されますから、「選挙後に召集」という概念も無くなります。国会を召集するか否か、会期はいつまでか、延長するか等の駆け引きは無用です。

SNS国会でも次年度の予算の審議・議決や内閣総理大臣の指名の議決は特定の時期に決めて行います。また、緊急事態が生じた場合には全有権者に緊急集会への参加を求めるアラート通知が為される仕組みも必要です。新しい衆議院で早急に議決を実施できない場合は新しい参議院が一時的に議決します。

SNS国会では議案の発議は白票委任を受けている議員や内閣の他、一般の有権者にも認めます。有権者は政治用SNS上で問題を提起し、審議を求める意見を一定数以上集めれば、SNS国会で審議されるべき議案として発議できます。法案の具体的な文言は有権者の要望を基に官僚や議員が作成します。

SNS国会では議案は各委員会(トピック)に割り振られ、議員が中心となって審議すると共に、白票委任の多い専門家や利害関係者の意見も公聴します。一般の有権者も議論を閲覧し、コメントや質問ができます。委員会での議論が参照された上で、本会議で有権者と議員の投票で最終決定が行われます。

SNS国会では各法案に予め標準の審議期間を設定し、期限が来たら決議を行います。有権者から審議期間の延長を求める意見が多い場合は一定期間ずつ延長して継続審議します。一旦議決した議案は一定期間は再審議しません。発議に必要な賛同者数や決議に必要な投票者数(定足数)も規定を設けます。

新しい衆議院で可決された法案が新しい参議院で否決された場合は新しい衆議院で再議決を行う必要があると定めます。クラスター制民主主義は有権者に傾斜配分投票(重点投票)を認める代償としてクラスターが全体の意思決定を担う危うさもあり、政治に通じた議員が有権者に広く深い議論を促します。

SNS国会における立法(法律の制定)の過程をまとめます。
①発議:議員や内閣、有権者が法律を発案する。
②審議:法律案は委員会で議員や有識者・関係者が議論し、一般の有権者も閲覧や意見ができる。
③決議:新しい衆議院・参議院で有権者と議員が投票する。
④公布:法律が公布される。

SNS国会は、新しい衆議院における一人一人の有権者の自由と判断を尊重しつつ、新しい参議院における支持を受けた議員たちの見識と協議も参考にして、全体の合意形成と意思決定を目指します。新しい衆議院と新しい参議院の両院の役割分担によって、個人の自由と全体の調和を両立できるでしょう。


SNS国会では三権分立、すなわち国会(立法)、内閣(行政)、裁判所(司法)の関係も再定義します。まず、SNS国会は立法、法律の制定を担いますが、さらに内閣総理大臣と最高裁判所長官の指名も行います。SNS国会は全有権者の投票で、行政を担う内閣と司法を担う裁判所の長を選出します。

SNS国会では内閣総理大臣(首相)は新しい参議院の議員の中から全ての有権者の直接投票で選出します(首相公選制)。首相の任期は1年、最長で5期5年程度を想定します。任期の間は首相の地位にありますが、支持率は常にモニターされ、支持率が著しく下落した場合は任期途中でも解任されます。

SNS国会から内閣総理大臣に指名された議員は、国務大臣を新しい参議院の議員の中から任命し、内閣を組織して行政、法律に基づく政治を行います。内閣は全て文民で構成します。内閣はSNS国会の信任の上に成立します。議員の認定は有権者の投票によるので、首相は議会の解散権を有しません。

議員がSNS国会から内閣総理大臣に指名された際に内閣を組織できるように、議員が政党として集団的に政治活動をすることも認めます。議員たちは政党を組織し、公約を掲げて政権の座を目指すことができます。政党同士が競い合い、首相が別の政党の議員に代わると政権交代が起こる、という形です。

最高裁判所長官も資格を持つ者の中からSNS国会における有権者の直接投票で選出します。民意が選んだ最高裁判所長官が最高裁判所裁判官を任命し、最高裁判所が下級の裁判所裁判官を任命します。最高裁判所裁判官の国民審査も行います。これで裁判所は内閣から独立し、司法に民意を反映できます。

行政への要望や裁判所への訴えも政治用SNS上でオンラインで簡便・迅速にできるようにします。行政監察官や裁判員もオンライン会議で参加します。情報公開も政治用SNS上で行い、閲覧内容を引用できる機能も付け、政治議論を活発化します。SNS国会の場で国民が政治に参加する夢を叶えます。

地方自治もSNS国会と同様の仕組みを地域単位で導入する形で良いでしょう。SNS地方議会では条例の制定・改廃や予算の議決は住民による直接投票(傾斜配分投票も可能)を基本とし、間接投票(白票委託)も認めます。白票委託が一定数以上で地方議会議員に認定され、議会の議論を主導できます。

地方自治体の首長は地方議会議員の中から住民の直接投票で選出され、地方行政をまとめます。政治用SNS上で自治体の情報公開も行い、オンブズマンもオンライン会議でも参加できます。住民は政治用SNS上で賛同者を集めて条例案の発議や監査請求、解職請求も実施できます。住民投票も同様です。

住民は政治用SNS上で地方議会議員や行政機関、裁判所に要望や訴えをすることができます。住民同士が政治用SNS上で繋がって、政治について意見や情報を交換し、政党や団体として活動することもできます。住民がSNS地方議会を通して地方自治に参加することで政治は身近なものに変わります。

SNS国会のシステムを全世界に拡張すると世界政府も実現します。SNS世界政府でも各個人の直接投票をベースとし、間接投票で総会を導く議員を選出します。地球規模では一般の個人には扱い切れない議題も多く、重点投票や間接投票が多くなりそうですが、一人一人が選択権を持つことが必要です。

SNS世界政府を実現する前にSNS国会のシステムを国家間へ拡張する試みが必要です。隣接する国同士の地域統合や関係が深い国同士の国際統合を部分的、段階的に進めて、最終的に全人類を統合する世界政府を確立します。まずSNS国会を実現できた民主主義国家同士で政治統合を試みるべきです。

クラスター制民主主義と直接・間接任意民主制は個と和の両立を突き詰めた民主主義の普遍的制度です。大和の国、日本はSNS政治・SNS選挙・SNS国会のシステムの開発を主導し、他国とも協力して、この個人分権による人類統合という民主主義の普遍原理を全世界に広める役割を果たすべきです。



まとめに入ります。最初の問題提起では民意が反映されない政治、クラスター化する社会、国会の立法能力の不足、間接民主制の限界、情報通信技術の可能性、中国の台頭を論じました。これらの政治の問題に『SNS政治』、『SNS選挙』、『SNS国会』のアイデアで答えを出そうと私は提案します。

『SNS政治』は現代の情報通信技術で政治を人々の日常にするものです。有権者は政治用SNS上で政治に関する情報や意見を交換し、直接投票で政治の意思決定を行います。各有権者の一つ一つの投票が確実に政治に影響を与える徹底した『個人分権』で、民意を最大限に反映する政治を実現します。

『SNS選挙』は人々の政治意思の表現に多様な選択肢を認めるものです。『直接・間接任意民主制』に基づくSNS選挙で、有権者は直接投票も間接投票も選択でき、自分の関心や判断能力に応じて傾斜配分投票(重点投票)や白票委託ができます。クラスター社会を前提とする新しい民主主義の形です。

『クラスター制民主主義』の下で少数派や専門家も発言力を持ちます。各個人が議論を深め、得意分野に重点投票して苦手分野は他者に判断を委ねれば、民主主義は衆愚政治を避けて集合知を発揮します。一億を超える頭脳が結集すれば、国会の立法能力は大幅に向上し、一人の独裁者など軽く凌駕します。

『SNS国会』はDXで実現する21世紀の民主主義国家の政治運営システムです。日本全土の有権者が政治用SNSを使って国政に参加します。SNS国会は全有権者から成る『新しい衆議院』と議員から成る『新しい参議院』の二院制で国家の意思決定を行います。SNS地方議会も同様の仕組みです。

SNS国会のシステムを国家間に拡張し、全人類を統合するSNS世界政府を実現します。国境を越え各個人が地球的課題を議論し、解決に向けた施策に結び付けます。全ての人が自らと世界の行く末を案じ、政治に参加する自由と権利を持ちます。一人一人の選択が人類の未来を決める。普遍の原理です。

最後のまとめとして、私の思いを述懐します。世の中の人々の政治への不満や落胆の声を見るにつけ、ロクな政治が行われていないと私も感じていました。しかしながら問題は人間ではなくシステムにあるのではないかとも長い間考えていました。奇しくも今回のパンデミックでそれは確信に変わりました。

思いを表現すること、願いを聞き届けることは人間にしかできません。外国語を機械的に翻訳する技術があっても、意思を表現することはその人自身にしかできないことです。システムによって人間が意思を表現し合える場を創れたら良いなと、前々から抱いていた問題意識に先日ようやく答えが出ました。

―自由なのは議員を選挙する間だけ― 数百年前にルソーはそう看破して直接民主制を求めました。私たちはインターネットでその夢を実現できます。AIは情報の処理や表現はできても、意思は持ちません。人間こそが助け合い共に生きようとする意思を持てるのです。私たちの意思で政治をしましょう!

現在の情報社会では情報の共有や活用ばかりが追求されていますが、今後はDXによって人間の意識の表現や統合を目指す『意識社会』へと向かっていくべきです。『SNS選挙』も意識社会の実現に向けたアイデアです。これはまだ思い付いたばかりの叩き台で、具体化するにはさらなる議論が必要です。

『SNS選挙』の実現には憲法改正も必要で、開発も時間が掛かるでしょう。それでも、個人分権による人類統合を展望する新しい民主主義は世界の普遍原理となり、一人ひとりの幸福と世界平和を実現するでしょう。私たち若い世代がSNS選挙システムの開発を主導し、日本から世界に発信しましょう!

以上で、社会科学のアイデアの第1弾 政治学編、『SNS選挙 DXで実現する任意民主制と個人分権』の連続ツイートを終わります。SNS選挙の実現には政治運動も技術開発も必要となります。アイデアを形にするために皆様の力が必要です。これを読まれた貴方もぜひご参加ください! #弘学革命