連続ツイート『21世紀の科学革命のアイデア<4>地球科学編』を転載します。

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以下は今日の弘学研 @gugakuken (Twitterアカウント)からの連続ツイートです(2018年12月26日)。

(前回分は 2018.12.20 連続ツイート『21世紀の科学革命のアイデア<3>化学編』を転載します。 です。)


どうも。今日の『21世紀の科学革命のアイデア』の発信は地球科学と生物学の二本立てです。いずれの分野もまだ研究はあまり進展していないのですが、今回は基本となるアイデアを示したいと思います。どうぞお楽しみください。


今から『21世紀の科学革命のアイデア』第4弾 地球科学編の連続ツイートを始めます。地球科学の科学革命のテーマは『生命誕生と地球環境』、パラダイムシフトは『分析から統合へ』の転換です。今回の研究内容の発信も初めてとなります。では始めます。

地球科学が取り組むべき最大の未解決問題は『生命誕生』です。『生命誕生』とは、この地球上で(あるいは宇宙で?)最初の生命がどのようにして生まれたのか、という問題です。そこで、まずはなぜ『生命誕生』が地球科学が中心となって解決すべき問題であるかを説明しましょう。

第一に、『生命誕生』は生物学の問題ではありません。生物学は既に存在している生命を扱う学問だからです。あるいは生物学は生命という既に創発した物質系を扱う学問だからです。『生命誕生』は物質が生命という物質系を創発していく過程であり、この段階では生物学はまだ始まっていないのです。

第二に、『生命誕生』は化学の問題でもありません。『生命誕生』に関する仮説として「化学進化」というものがあります。「化学進化」とは「単純な化学物質から複雑な生命が生まれた」という仮説です。しかし、私はこの「化学進化」という仮説は誤りというか、不充分な仮説だと考えています。

「化学進化」は「単純なものから複雑なものが生まれる」という仮説ですが、これは考えにくいのです。複雑なもの、あるいは精緻なものを生み出す元になるものは、単純なものではあり得ないからです。複雑なもの、精緻なものを生み出すには、複雑というか、多様なものが必要だと考えるべきです。

そこで、私は『生命誕生』の問題に、「化学進化」改め、『地学進化 geoevolution』という仮説を提唱します。『地学進化』とは『多様な地球環境が精緻な生命を生み出した』とする仮説です。生命が誕生するには多様な地球環境が必要だったという、当然の話なのですが、基礎は重要です。

『地学進化』が示すのは、物質が単独で存在するのではなく、地球環境の中で存在していることが生命の誕生において決定的に重要だということです。このため、『生命誕生』の問題は化学の問題ではありません。『地学進化』の仮説を採用するならば、『生命誕生』は地球科学の問題となるのです。


さて、『地学進化』の仮説はおそらく『生命誕生』の問題に取り組む大半の研究者が仮定しているものでしょう。しかし、『生命誕生』の問題は長い間、未解決となっています。私はこのような長年の未解決問題がある場合、おそらくどこか基本的な所で思い違いがあると考えることにしています。

『生命誕生』の問題に関して、「最初の生命は地球上のどこで生まれたか?」という問いがあります。また、この問いに対する答えとして「最初の生命は深海の熱水噴出孔で生まれた」とする仮説が有力視されていたりします。しかし、私が思うに、おそらくこの問いの立て方および答え方は間違いです。

『地学進化』の仮説に基づけば、「生命はどこか特定の環境で生まれた」とは考えにくいのです。むしろ『生命は多様な地球環境の全てが合わさって生み出した』というのが『地学進化』の仮説から導かれる『生命誕生』の問題への基本的な解答となります。シンプルな発想ですが、やはり基本は重要です。

生命はどこか一部の特定の環境で生まれたのではなく、宇宙、太陽、惑星、小惑星、隕石、宇宙線、マントル、陸地、海洋、大気、地上、地下、浅海、深海、河川、氷河、氷山、火山、地熱、地殻変動、…、大域的・局所的な環境の全てが合わさって生命を生み出したと考える。これが『地学進化』です。

この『地学進化』は換言すれば、生命誕生に至る各過程・各段階が全て同じ場所で起こったとする必要はないということです。無機物から有機物が生まれた場所と時間、あるいは低分子化合物、高分子化合物、糖、核酸、たんぱく質、脂質、遺伝子、膜構造、…、が生まれた場所と時間は各々に違ってよい。

生命が誕生していった当時の多様な地球環境の中で、各々の物質や構造を生み出すのに適した環境、各々の反応や相互作用を起こすのに適した環境を考えつつ、これらを統合して生命を創発する道筋を考える。これが『生命誕生』の問題を『地学進化』という仮説で解決する上での基本的な流れとなります。

例によって『各々の学問分野の個性は何か?』と弘学者の私が問うと、その答えは他の自然科学の分野が『個別』の対象を扱う学問であるのに対して、地球科学は対象を『総合』的に扱う学問であるというものです。地球科学という学問の個性は『総合』、対概念は『個別』となります。

では、地球科学の個性である『総合』と、対概念の『個別』とを止揚するにはどうすべきか。それは『総合』のための「分析」から、『個別』の『統合』へと転換することです。この『分析から統合へ』の転換によって、地球科学は『生命誕生』という難問を『地学進化』という仮説で解決に導くでしょう。


さて、ここまでは『地学進化』という基本的な仮説の紹介でしたが、次は『生命誕生』の問題についての具体的な理論と検証の話をしましょう。まず、生命誕生は『創発』現象と言えるのは間違いないでしょう。したがって、生命誕生の問題を解決するにはこの『創発』を扱う理論と検証が必要となります。

まず、生命誕生の問題と関連して、「人工細胞」を合成するという実験的研究があります。「人工細胞」とは細胞のような挙動を示すものを成分や条件を整えて人工的に創り出すという試みです。この試み自体は生命誕生の過程を洞察していく上で有益だと思います。しかし、不充分な点もあります。

基本的な問題として、「人工細胞」は実験者、人間による「創造」であって『創発』ではないということに注意が必要です。人間(という既存の生命)を介さずに生命という物質系が創発し得るということを説明し、実証しなければ、生命誕生の問題は解けたとは言えないでしょう。なかなかの難事です。

言い換えるなら、生命誕生の問題を創発現象として扱うには、生命を観察対象ではなく主体的存在、実験者や創造主自身とするような説明が必要となります。この説明のための理論として、先日紹介した物質系の化学における『創発』の一般的表現法を導入できます。以下で少し紹介しましょう。

先日紹介した物質系の化学の表現法では、科学革命を具体例として、中心・周縁・外部の三者による系の創発を示しました。これを基にすると、物質=中心が、周縁で関係選択し、環境=外部と関係創発して、より大きな系を創成する過程が生命誕生の簡単なモデルとなります。本当に簡単な説明ですが。

ところで、この三者による系の創発のモデルを太陽系に適用すると面白いことが分かります。エネルギーを与える太陽が「外部」で、組織化が進んでいる地球が『中心』となるのです。太陽が『中心』なのではなく、地球が『中心』なのです。これは既存の常識とは違いますね。

また、地球という系の中で三者関係を適用すると、物質・エネルギーを供給する地球環境が「外部」で、関係創発が進んでいる生命が『中心』となります。生命の中には人間も含まれますから、地球を差し置いて、人間が『中心』となるわけです。これって面白くないですか?

『太陽よりも地球が中心、地球よりも人間が中心』とする洞察は、「地球ではなく太陽が中心、人間は宇宙の中心にあるわけではない」としたコペルニクス的転回とは真逆の発見です。これは『客観から主体へ』という21世紀の科学革命の、物理学理論『正負根子モデル』に続く第二段階と言えましょう。


さて、地球科学が解明すべき未解決問題は『生命誕生』ですが、これ自体は古くからある問題です。一方で、クーンの『科学革命の構造』を基にすれば、「変則事例」に当たる問題、21世紀の今日的、現代的なイシューがあるはずです。それは何か。言わずもがな、『地球環境』、いわゆる環境問題です。

『地球環境』の問題、すなわち環境問題は人類が共有する重要な課題です。地球温暖化、マイクロプラスチック、自然破壊など、問題が山積みです。そして、この環境問題の解決のために、21世紀の今日、いよいよ地球科学も応用化されようとしています。21世紀は地球科学の時代ともなるのでしょう。

例えば、「地球温暖化を防ぐために太陽光を地球外に反射する微粒子を大気中にばら撒いてはどうか」と真剣に検討されています。この是非については私もまだよく分かりません。しかし、それが地球環境全体にどのような影響をもたらすかを考えることが困難を伴う課題であることは想像できます。

確実に言えることは、環境問題を解決するには『地球環境』を『統合』して扱う方法論が必要だということです。そして、この『地球環境を統合する』という方法論が、『生命誕生』の問題に取り組むことによって得られる可能性があります。この点で『生命誕生』と『地球環境』は繋がるかもしれません。

環境問題を含むあらゆる問題の解決には、人間同士、人間と生物、人間と地球環境といった関係性が重要になります。これらを『統合』する方法も、地球科学による『生命誕生と地球環境』の探究を通して得られるかもしれません。もちろん、理論も、その適用も検証も、そして応用も、まだこれからです。

生命の起源を解明し、人類共通の課題、地球的問題を解決する糸口は地球科学が見出すはずです。地球科学の科学革命のテーマ『生命誕生と地球環境』、パラダイムシフト『分析から統合へ』をご理会頂けたでしょうか。『地学進化』は基本アイデア、探究はまだまだこれからです。共に追究しましょう。

以上で、『21世紀の科学革命のアイデア』第4弾 地球科学編の連続ツイートを終わります。科学における革命は学問の枠を越え、社会全体、人類全体に波及していくはずです。皆で共創を実現しましょう。それが #21世紀の科学革命 、 #弘学革命 です。貴方も奮ってご参加ください。


#21世紀の科学革命 のアイデアの発信、本日はこの後、生物学を予定しています。少し経ったら始めたいと思います。次回もまだアイデアというよりイメージの段階で、あまり進んでいません。とはいえ弘学は全ての学問を愛しています。 #弘学革命


(次回分は 2018.12.26.b 連続ツイート『21世紀の科学革命のアイデア<5>生物学編』を転載します。 です。)