公衆トイレのウォシュレット無用論

公衆トイレのウォシュレット無用論

最近,知り合いの若い女子達と話をしているうちに,トイレが話題になった.日本はトイレ天国という結論になりかけたところで,「公衆トイレのウオシュレットは無駄」という意外な発言が飛び出した.女子の皆が賛同したのには吃驚した.不衛生なため自宅以外では使用しないそうである.あちこちの公共施設で,設置にたずさわった関係者は喜んでもらえると思って計画したはずである.

たしかにウエブ上でも話題になっていて,衛生的ではないという意見が多いようだ.賛成論は当たり前なので,わざわざ書くこともないと理解すべきなのかもしれない.公衆トイレのウォシュレットが原因で病気になったという話はないと書いている人もいる.そのような調査研究があると聞いた記憶があるがはっきりしない.

2011年3月の内閣府の調べよると,温水洗浄便座の家庭での普及率は7割を超えている.

TOTOに勤めていた知人によると,当社だけでも出荷台数が3000万台を超えたとのことである.2012年7月23日には,(一般社団法人)日本機械学会による「機械遺産」に認定された.TOTOのウエブページによると,機械遺産(Mechanical Engineering Heritage)になったのは当社が1980年に製造・販売を始めた初代ウォシュレット「ウォシュレット G」であり,家庭で使用される機械が「機械遺産」に認定されるのは今回が初めてと書かれている.

販売開始から三十数年が経ち,インターネット上で,ウォシュレットの効用に疑問を投げかけている人たちの多くは水洗方式前のトイレを知っている人は少ないはずである.ウォシュレットが当たり前の時代,時代錯誤の新旧比較は無意味であり,いまや温水洗浄便座同志の性能向上合戦,無菌に近い清潔さを求める段階に入っているといっても過言ではない.

そのような風潮に対応するためか,除菌効果を高めた商品が開発されている.記載されている内容をそのまま紹介したい.

TOTOは、水を電気分解し除菌効果を高め た『きれい除菌水』(次亜塩素酸水)を使い、従来のノズル洗浄はもちろん、便器ボウル面にもミストをふきかける機能を搭載。これまでの洗浄では落としきれ なかった目に見えない菌などの残留汚れを毎回除去することで、いつでも清潔で快適なトイレ環境を実現します。

現行機種は完璧ではないことをメーカーが自ら認めているような文章である.

身の回りを清潔にしておくことは重要であるが,あまりにも度が過ぎた清潔志向は逆に免疫力を低下させてしまう原因にもなる.

先月20日の報道によると,鳥取大病院(鳥取県米子市)では,改修工事中の第二中央診療棟で,水道管の接続を誤り,トイレ水洗用の水を,飲料用水として流していた.昨年末から約80日間にわたって流していたが,健康被害の報告はないという.


省エネ(水使用量は従来の半分以下,暖房用電気代も大幅低減を実現)性能もひと頃に較べると格段に向上している.

我家も,水回りリフォームの際に,展示場に見学に行った.バックグラウンドミュージック付きのトイレが展示してあった.リモコン制御は当たり前,スマートフォンリモコン方式もあるとのことであった.スマホ依存症はついにトイレまで侵入したようである.トイレが隠れスマホの場になる日は近い.

このコラムを書きながら,明治時代の辻便所のことを思い出した.肥後の医学教育の浮沈と密接な関係がある.関連資料(辻便所と肥後の医育 概要)を見てほしい.


参考資料

「ウォシュレット」は温水洗浄便座の代名詞にもなっているが,その名称はTOTOの登録商標

TOTO

日本機械学会

機械遺産パンフレット

機械遺産(第55号ウォシュレット)

全国ウォシュレット・データベース - ウォシュレット設置箇所のデータベース


関連資料

辻便所と肥後の医育

(2014.4.8)