本の宅配買取

本の宅配買取

化学会社に勤務していた息子が海外勤務した際に,500冊を超える書籍を預かった.また何時か必要になることもあるかもしれないと思い保管していたが,その後,資格取得・転職がうまく行って,不要になったため処分しようということになった.家の近くにある本買取センターに頼めば,家に取りに来てくれるということまで調べてくれたので,本格的に「ISBN」や「書込み」の有無などを調べ分別・整理してみた.

ところで,最近,ウエブやメール等で,「貴方はただ詰めるだけ」,「自宅に居たまま宅配買取」等の広告を目にする.そこで,今回はあえて今流行の「宅配買取」なるものを利用してみた.

書籍には,ISBN番号やそのバーコードが付いている.それを入力すると査定価格が自動表示されるサイトがあるので,ランダムに価格を調べてみた.

ウエブ上で大々的なキャンペーンを展開している大手K社に,ネット査定が可能か問い合わせたら「当社はネット査定は実施していないが,査定には自信がある」ということだったので,ウエブ買取の申し込みをした.すぐに,ダンボール4個(1箱に約40冊)がクロネコヤマトで送られてきた.古い本とはいえ,それなりの査定額が期待できそうな160冊を詰め込んだら,次の日には佐川急便が受け取りに来た.伝票もすでに印刷されていてあっという間に運び去って行った.

5日後に査定完了のメールが来た.査定額をホームページで確認すると575円と書かれていた.他社(I社)のネット査定の「新ヨーロッパ大全」一冊分にも満たない金額である.あまりにも安価なので,問い合わせたら「当社の査定に,ご満足頂けないなら,当方の送料負担で返送します」ということで返送されてきた.

返送された本を,そのままネット査定を試みた買取センター(I社)に着払いで送ったら,17,500円で引き取るという返事が来た.

100円以上の値がついた本は23冊,20−100円が29冊,残りはほとんど10円,最低価格(5円)が数冊あった.ISBN(国際規約加盟,昭和56年,日本工業規格,昭和63年以前)の記載されていない古本,表紙カバーがないものは買取の対象にならなかった.

最高の値がついた本(シンガポール・マレーシアの華人社会と教育変容,1995年発行)は,東大教養学部の卒業研究の際に参考にした本とのことである.アマゾンで調べると,中古で3150円の価格が付いている.また,岩波現代選書(1987年)の「文化の解釈学(1,2)」は,アマゾンでは7000−10000円の価格で売られている(個人出店).これらは稀少価値があるようだ.専門書の価値が解る買取センターが見つかったので,紙くずにならずに済んだ.

宅配買取は,断捨離が目的で買い取り価格などどうでもよい,楽に処分したいという人をターゲットにしている面もあるようだ.リサイクル買取の法律が改正されて,買取時には免許証や健康保険証のコピーが必要である.そのため年齢が分かるので,高齢者は処分目的の人間と見なされるようだ.K社からは冊数や明細は提示されなかった.I社の場合は,事前査定時,実際の査定時にもエクセルファイルが送られてきた.

インターネット上で,専門書買取を標榜し,かつネット査定(瞬時査定,メール査定)を実施している複数の業者について査定額を調べてみたが,上記最高査定の本をゼロ円と査定するところもあった.まともな相場を知りたければ,アマゾンの中古品価格が参考になる.

今回の経験後,近くの中古本買取&販売センターに行ってみたが,数?円で買い取ったと思われる本を100円で売っていた.断捨離ブーム,高齢化社会を利用した新手のビジネスであることを実感した.


買取依頼した書籍の内容

東南アジア関連の本が多いのは,専攻が東南アジア地域研究のためである.天安門事件が勃発したため,中国研究重視路線から周辺諸国へ方向転換を迫られた様子が伺える.


追記 書込みのある本や少し汚れていても引き取ると宣伝しているリサイクル業者も「文学全集」や「世界の歴史」のようものは引きとってくれない.


参考資料

【古本買取】ネットで自動査定できるサイト そのほかにも存在する.


(2014.6.7)