プロヒーローかっちゃんとプロヒーロー(教師)出久くんのお話。
かっちゃんの写真集を二人で鑑賞します。ラブコメです。
「ただいま…」
「おけーり」
「あっ、かっちゃん起きてたんだおはよう」
「はよ…んだようるせえバタバタ走んなや」
「ああ、ごめんごめん」
「コーヒー飲むか」
「うん」
「ん」
「あっでも…うーん、うん、飲む」
「あ?」
「ううん、飲みます。ありがとう」
「ん」
「起きてると思わなかった、熟睡だったのに」
「おめえに起こされたんだわ」
「ご、ごめん…いつ帰ってきてた?」
「8時」
「いや全然寝てないじゃん、ごめんね起こして」
「ほんとだわ」
「目の隈すごいよ、昨日大変だったんだな」
「目がしぱしぱする」
「だめじゃん、僕コーヒーいいから寝なよ自分で淹れるし」
「言われんでもこの後寝るわ」
「うん、たくさん寝てね。夜勤お疲れさまでした」
「何か用事あったんか」
「え」
「外」
「外?あ、うんそう用事で」
「おめえ休みだろ、なんでこんな朝から外出てんだいつも昼まで寝てるくせに」
「いやそれはですね」
「んだよ」
「ふふ、見てこれ」
「…あ?」
「無事買えたんですよ」
「…」
「いや~開店時間狙って正解だったな」
「こんなもんのために行ったんか」
「そうだよ」
「馬鹿じゃねえの」
「馬鹿じゃないよ!人の好きなもの馬鹿って言うなよ」
「いや違えわ、予約もしてたじゃねえか何で書店行く必要あんだよ」
「だって予約した時には特典付くって情報なかったんだよ、ずるいよなあ早めに動いて損するなんて良くないよ」
「じゃあ特典だけで行ったんか」
「そうだよ、あとまあちょうど良いから観賞用と保存用にする」
「くだらねえ…」
「くだ、くだらなくないよ!人の好きなものくだらないって言うな!」
「そんなもん言われたらいくらでも持ってこれたのになんで金出すんだって話だよ」
「分かってないよ、君は全然分かってない」
「分かりたくもねえけど」
「こういうのは自分の金を積んでこそ価値のあるものなんだよ、二倍積めて良かったとも言える」
「キモ」
「いや聞いておいて何だよ」
「聞いてねえわ。つーかただの紙じゃねえか」
「紙じゃないよ!宝物なんです、かっちゃんには分からないでしょうけど」
「いや、それこそ分かんねえ」
「なにが」
「そんなん見ねえでも目の前にいんだろ」
「本当に分かってないな」
「いや、そ」
「かっちゃんの写真集だなんていくらでも見たいに決まってるだろ!!!!!!」
「食い気味に来んなや」
「なんで君こんな仕事受けたんだよ…仕事は選べよ、もう」
「…ギャラが良かったんだわ」
「君そんなんだったっけ?写真集なんて一番縁遠そうなのに」
「うるせえなぁ」
「ああ、かっちゃんは僕のなのに…全国のみなさんに知れ渡ってしまうなんて…まあ分かるけどさ」
「ただの写真だろ、おら」
「はあ…あ、ありがとう!いやでもちょっと今すぐ見たいんだけど」
「人に淹れさせてその態度か」
「ごめんて、うんでもそうだねこれは推しに淹れてもらったコーヒーですから大事に飲まないと」
「明けにそのノリきついわ」
「だから寝てても良いんだって、本当顔白いぞ」
「…うるせえな、馬ァ鹿」
「え、辛辣すぎない?つらい」
「…寝ねえでいたのにその言い草まじでねえわ死ねクソ」
「…あっ、ちょっと待ってそういうの」
「んだよ」
「しんどい…かっちゃんだいすき」
「来んな零れる」
「ほんとそういうのやめ、ないで、好きもう死ぬ」
「飲みにくいわ剥がれろ」
「ああ~」
「はよ飲んで一人でいくらでも楽しめや、俺はもう寝る」
「…寝ちゃうの?」
「寝ろって言ったり寝るなって言ったり何だよ」
「僕が帰るの待っててくれたのに?もうちょっとだけ付き合ってよ」
「ヤダ」
「ねえ、一緒に見ようよこれ」
「ぜってえヤダ」
「見ようよ~」
「離せや」
「うう…じゃあ、飲み終わるまでここにいて」
「…飲み終わるまでな」
「えへへ、うん。おいしい、ありがとう」
「ん」
「もう外だいぶあったかいよ」
「湿ってる、汗かいてんな」
「ふふ、そう、家の中のほうがちょっと寒かったんだ。外出て失敗したと思った」
「じゃあ洗濯物早く干さねえとな」
「えっ、回してくれてたの?僕がやるから良かったのに、ありがとうね」
「回すだけだからな」
「うん、あとは干しとくから」
「まあ今日一日晴れだからな」
「そうだね」
「…飲み終わったんか」
「うん、ごちそうさまでした」
「じゃあ寝るから洗濯物頼むわ」
「えー」
「…離せや、すげえがっちり掴んでんなおい離せ」
「一緒に、見ようよ」
「見ねえ」
「お願い」
「なにが嬉しくててめえの顔見なきゃなんねえんだよ」
「生産者の声を聞きながら見たい」
「野菜かよ」
「…あと好きだからもうちょっと一緒にいたい、です」
「…それやめろや」
「お願い」
「…」
「お願い」
「…1ページ1秒で見ろや」
「短!でもやった、はいじゃあマグカップ回収です、僕あとで洗うから」
「むしり取んな」
「早く見たいんだよ、ほらそっち行ってそっち」
「押すなコラ」
「よいしょ、はい!じゃあ開封します」
「さっさとしろ、おら」
「ああ、せか、急かさないでよ!シュリンクと一緒に破けたらどうするんだ」
「その割に雑にいくじゃねえか、あってめえゴミ箱に捨てろや」
「あとで捨てるから」
「…おら表紙でそんな時間かけてんじゃねえ早く捲れや」
「…いやだってほら加工すごいよ、ほら」
「触らすな、…こんなんされてんのか」
「ね、すごいね。かっちゃんのところだけツルツルしてる」
「撫でてねえで次行けや、そこは後で一人でやれ」
「はい……うわあ」
「…はよ行けや」
「…いや最高だな、製作者分かってる」
「なにが」
「バックショットから入るの良すぎるな」
「後ろ向いてるだけだろが」
「背中だけの写真集でも僕お金積める」
「きもちわりい」
「いや君の背中めちゃくちゃ格好良いからね?やばいなこれ、序盤から生きていける自信ない」
「じゃあ死ね」
「はあ、この広背筋とさ…」
「次」
「ああ!やめてよ!…っあ、これはやばいな」
「早く次いけ」
「顔が良い…」
「おい1秒」
「ちょっ…余韻浸らせてよ」
「後でやれや!どうでもいいだろこんなん」
「どうでも良くないだろ!!!!」
「うるっせえ!!」
「あ~破ける破ける待って待って待って!捲るから待って…!」
「ほら早く見て終われ」
「ちょっ待って1ページ抜かしてるから、雑にするな」
「ほんと早くしろよ」
「うわあ~ハイアングル強い…最高」
「なにがだよ」
「そうそう上目遣いが欲しいわけじゃないんだよな…そう、こう、ただ見上げられたい。こんなん見ることないもんな、ファンの需要分かってるな…でもこれほんと…駄目だと思う」
「お前が上乗ってるときこんなもんだろ」
「…」
「ってえな!」
「次行きましょう」
「おいお前が始めた物語だろ」
「そうそう、こういうので良いんだよ。君ほんとなんでこんな立ってるだけで格好良いんだ…」
「聞けや」
「あ、脚なが~~~~」
「普通だろ」
「いやもうどこまでも脚じゃん、全部脚」
「そこらへんの奴と大差ねえわ」
「君眼科って知ってる?」
「おい推しなんじゃねえのか」
「推しの乱視が心配なんだよ僕は、男子こんな脚生えてないし」
「韻を踏むな」
「アングルの神様だ…」
「お前のその意味わかんねえ語彙何なんだよ」
「衣装も良いな…これ、今アンバサダーやってるブランド?」
「あ?ん、たぶん」
「似合うなあ、何でも似合うけどさ」
「んだよ文句か」
「ううん、君の指はそのまんまでも綺麗だけど、こうゴリッゴリにリング嵌めてても良いなあって。格好良い」
「邪魔くせえからヤダ」
「皮のジャケットとネックレス似合うな~ジャケットも喜んでるよ絶対」
「もうここらへんはそんな変わらんだろ、サクサクいけや」
「あっちょっとちょっと待って目線がそれぞれ違うじゃん」
「後で見ろや!誤差だわ!」
「ああ~僕のなのに~」
「おら早く終わらせろもうおしまいだ」
「…なんでそんな急かすの…?…あのさ、かっちゃ」
「うるせえもう終われよもう閉じろ終わりだ」
「…」
「…んだよ」
「もしかして脱いでないよね?」
「…脱いでねえわ」
「…ほんと?」
「…まあ」
「…ふーーーん」
「…」
「…ねえ、なんかジャケット消えたけど?ねえ」
「…」
「ねえ」
「…そんな脱い」
「脱いでるじゃん!!!!!!!!ほら!!!!」
「脱いでねえわ」
「なんで目の前にあって認めないんだどこ見てんだよ」
「加工なん」
「僕の目を!!ごまかせると思うなよ!!!!傷も含めて君の肌は僕が誰よりも見てきたんだから!!!!」
「気持ち悪ぃな!!!!」
「は、肌が…かっちゃんの肌が全国民に…」
「んなもん誰も見ねえだ」
「見るんだよ!!!!見るの!!分かれよこのカット数!!」
「お前くらいだぞ…そんなん」
「僕だけがこんなだったらこの厚みじゃないんだよ…」
「でもお前俺が寝た後死ぬほど見るんだろ」
「…」
「見るだろ」
「みっ…見、るけど」
「ハッ、じゃあいいじゃねえかよ」
「良くないよ…なんで恋人の肌をどこぞのオタクと共有しなくちゃいけないんだよ…」
「上だけだからいいだろ」
「当たり前だろ下まで抜いでたらぶっ飛ばすからな」
「いや海でも行ったらこんなん普通だろうが大げさすぎんだわ」
「じゃあ僕がこうやって脱いでも君は同じこと言うのかよ」
「は?殺すに決まってんだろ」
「なんでそれを自分に適用しないんだよ意味わかんない」
「俺とは別だわ出久のは駄目に決まってんだろぶっ殺すぞ」
「僕だって今クレジット見て一人ずつ行こうと思ってるところだけど」
「お前は俺よりこええ自覚を持てよ」
「はあ…」
「おい洗濯機もう止まってんぞ、干しに行けよ」
「後で干すから!まだ後半が残ってる」
「もう寝かせろや…」
「いやもう実際起きてるだろ、二重がいつものに戻ってる」
「きめえ」
「脱いだ罪で最後まで付き合えよ」
「んだよ脱いだ罪って。でもたぶんもうその後はねえぞ」
「…ほんとだ。急に草原出てきた」
「もういいだろ」
「いやパターン変えてくるのはずるいな…悔しいけどこれは構成が素晴らしいです」
「もう一人で見とけよ」
「だめ」
「…」
「…黒も似合うけどこういう白い衣装も似合うねぇ、まあ元が良ければ何着ても良いもんなあ」
「…腕離せや」
「ねえこれどこで撮影したの?すっごい綺麗。日本?海外?」
「腕いてえんだわ」
「僕はそのまんまが好きだけどかっちゃんのこのアイメイク綺麗だなあ、良いなあ僕も本物見たかった」
「腕、いてえんだけど」
「…ランダムのステッカー、もう一個のほうが、良かった、な」
「出久」
「…」
「…」
「…ごめん」
「出久、悪かった」
「…いや僕が駄目な恋人なだけだ…かっちゃんごめん、仕事の文句言ってごめんね、大丈夫ただのやきもちだから」
「いやよく考えんでも俺も嫌だわ、すまんかった」
「大丈夫だよ~仕事仕事、でもちょっと待って想像以上に独占欲あったな僕…恥ずかしい」
「出久」
「…うん」
「ごめん」
「…ううん、良いんだ、写真なんか。この体に触れられるのは僕だけだ、このあったかいのを知ってるのは、僕だけだもん。大丈夫だよ」
「出久」
「うん?」
「洗濯物干したら、一緒に寝んぞ。俺も干す」
「ふふ、うん。かっちゃん、お日様のにおいする」
「嗅ぐな」
「…ねえ、かっちゃん」
「なに」
「僕のこと、すき?」
「だいすき」
「へへ、僕もかっちゃんのことだいすき」
「ん」
「よし、じゃあ鑑賞会はおしまいということで」
「あ、おいちょっと待て」
「なんだよ」
「シュリンク捨てろや」
私は会話劇で話の展開を進めることが多いです。癖なので長所にもなり短所にもなり…
それをうけて、始発列車シリーズが「会話劇一切なしで情景描写・感情描写ができるか?」のチャレンジだったのに対して、こちらは「会話劇だけで情景描写・感情描写ができるか?」とチャレンジした作品です。面白い文章を書きたくてこういうことをよくしているのですが、勉強になります。
アイドルを推すこともしていたので、家に写真集がたくさんあります。なので、実際に写真集をクローゼットから引っ張り出して眺めながら、こんなことを思うんじゃないかなと想像して書きました。これは書くのが楽しかったです。
2025-06-06