しつけとルールの守らせ方
~他者に思いやりをもち、約束やルールを守れる人になってほしいから~
~他者に思いやりをもち、約束やルールを守れる人になってほしいから~
「しつけ」や「ルール」と聞くと、「厳しくしつけなければならない」「甘やかしてはいけない」と考えたり、あるいは「自分で考えて行動できる人になるためには、本人に任せるべき」「自分で責任を取らせるためにも、放任する」など、いといろな方針の家庭があるかと思います。
日々の関わりの中で、「何度も同じことで叱っているのに・・・」「あんなに話して反省した様子だったのに・・・」など、何度本人と向き合っても同じことを繰り返されてどうしたらいいのか途方に暮れる、なんてこともあるかもしれませんね。
子どもにとってルールは、生きていくうえでの「安全」と「安心」を守るための道しるべであるべきです。しかし、あまりに厳しすぎても、逆にゆるすぎても、子どもは迷いや不安を抱えてしまいます。ここでは、ルールの基準や決め方、そして守らせ方について考えてみたいと思います。
「しつけ」は、子どもを大人に従わせることではなく、「社会で自立していけるように導くこと」です。社会で自立するためには、大人の顔色を見て判断するのではなく、『自分自身の内側にある物事の善悪を判断する軸』に照らし合わせて考え、自分で判断し、自分を律することができるようになる必要があります。この『自分自身の内側にある物事の善悪を判断する軸』を形作るのが、親からしつけられている価値基準であり、日々の関わりや親のふるまいです。
そこで、叱る時に気をつけたい基準について考えてみましょう。
<叱る時に意識したい基準>
・命や健康を害する危険がある
・人に迷惑をかける
・社会のルールを大きく外れる
この3つを目安にすると分かりやすくなります。そう考えると、叱らなくていいことで怒っている時が案外多いのではないでしょうか? 私もついつい、「先に準備しておきなさい!」「早く宿題しなさい!」「遊ぶ前にご飯食べ終わりなさい!」などなど、数えあげたらきりがないほどに口うるさく言ってしまっていることに反省する毎日です。
ただ、私が意識しているのは、3つの基準に照らし合わせて本気で叱る時は、声色を変えて短くやめるよう伝え、本人と1対1で話せる空間に移動させます。そこで、膝に乗せたり、抱っこしたり、横並びに座ったり、自分の怒りスイッチが入らないよう気をつけながら、冷静に本人の思いを聞きます。なぜそうしてしまったのか、どうしてほしかったのか。
子どもは、自分で悪いことをしたことぐらい分かっています。分かっていてもどうしようもできなかったという気持ちでいる子どもを責めても、「わかってくれない!」と反抗的な態度を引き出してしまったり、聞く耳を持たなくなってしまいます。
ですから、本人の思いをなるべく丁寧に聞きながら「こういうことがあって、こういう気持ちになっちゃったんだね。だからこうなったんだね。」と本人の思いに寄り添った上で、「その方法で、あなたの気持ちはうまく伝わったの?どうしたらよかったと思う?」と間違った表現や行動をしてしまったことを振り返らせます。そうすると、案外素直に子どもは「こうしたらよかったと思う。」と考えてくれます。そこで、「あなたなら、できるよ。」と親が子どもの成長を願っていることを含めて伝えながら、次に行動変容が起こせるよう「自分だけでできそう?声をかけた方がいい?」「こうなった時はストップをかけようか?」など、必要なサポートについても本人と確認できると次に活かせます。
もちろん、すぐ行動が変わるわけではありませんが、何度も「こうするんだったよね」と声をかけ、もしも行動変容が起こせた時には「自分で気づけたね」「うまく伝わってよかったね」と具体的によかったところを認めてあげると成功体験となり、本人も自信がつき、心がぐっと育ちます。
家庭で決めるルールや約束は、「子どもの心(脳)の発達を守るため」「体の健康を守るため」であって、「親にとって都合良く行動させるため」ではありません。親の機嫌や気分によって、「今日はいいよ」と変えてしまうと、子どもにとっては「今日もいいよね!」と変更しても良いものになってしまうため、気をつけていただきたいと思います。
決めた約束やルールを子どもに守らせようとした時に、「まだゲームしたい!あとちょっとだから!」「このおやつ、今食べたい!食べる!」「これ買って!」など、大騒ぎされると、根負けして子どもの言いなりになってしまっている、ということがあるかもしれません。このような時、子どもは親が断念するラインを本能的に知っています。ですから、親が応じるまで食い下がります。そして親が一度応じれば、また同じことを必ず繰り返すのです。
親は、子どもがどれほど騒ごうが暴れようが、譲らないライン(しつけやルールの枠組み)をしっかりと持つことが大切です。
「部屋をきれいにしなさい」よりも「使ったおもちゃを箱に戻そう」と具体的に。
「ゲームは絶対に1日30分」「ご飯の前におやつは食べない」「20時にはスマホを渡す」
年齢が上がるにつれて、子ども自身もルール作りに参加することで納得感が増します。
「約束は守る」「命を大切にする」など、親が子どもに伝えたい軸をぶれずに持つことが安心につながります。
「約束守れたね」「元に戻せたね」と具体的に認めると、子どもは「ルールを守るって気持ちいい」と実感します。
あるときは厳しく、あるときは放任…では子どもが混乱してしまいます。親自身が迷うときも、家族で話し合って共通のルールにしていきましょう。
ルールはあくまで成長のための道しるべ。「できない日」や「忘れる日」があっても大丈夫。繰り返し伝えることで少しずつ身についていきます。
しつけやルールは「縛るもの」ではなく「子どもの安心と安全を守るためのもの」。子どもにとってわかりやすく、親にとって続けやすい形で作っていくことが大切です。親の声かけひとつで、ルールは「叱られるもの」から「自分を守ってくれるもの」へと変わっていきます。