[新刊紹介] 2023年4月23日  

ジュディス・ハーマン『真実と修復——心に傷を負った人がもとめる正義から

Judith Lewis Herman, Truth and Repair: How Trauma Survivors Envision Justice, Basic Books (2023/3/14)


 トラウマ問題の“バイブル”と呼ばれる『心的外傷と回復』の著者ジュディス・ハーマンが、このほど「正義」をテーマにした新刊を上梓した。精神科医である著者は、加害者への応報といった伝統的な修復過程が必ずしもサバイバーのためにならないと論じ、当事者たちが求める「別のかたちの正義」を提示する。

 ハーマンの主張が説得的に思えるとしたら、本書で提示される「正義」が、豊富に引用される当事者たちの証言にもとづくからに違いない。すなわち、ハーマンがインタビューしたサバイバーたちは、彼らが夢見る正義 (dream of justice) について次の点で一致していた。

 それは、「真実を知ってほしい」ということだった。

 何年にもわたり家庭内で暴力を受けてきた女性は、次のように話している。「私はただ、彼が誰なのか、彼が私に何をしたのかを知ってもらいたいんです。これは、あの人が、他の人間に対して、したことなんだ!と」。

 サバイバーの正義の第一の教えとは何か。それは、間違ったことが行われたとコミュニティが認めることを、強く望むことである本書に登場するサバイバーたちは、表現は違えど、同じことを望み、繰り返し同じメッセージを発している。「『間違っていた』と認めてほしい」。明るみに出し、真実が知られること、それが正義に向けての第一歩だと、当事者たちの声を通じて著者は伝えている。

 以下は、本書第4章で紹介される、ハーバード大学でセクハラ被害に遭って退学した一人の女性の実話の一部抜粋である。