キャンパス・セクシャル・ハラスメント関連の事例・活動紹介
—日本—

日本におけるキャンパス・セクハラ関連の報道をまとめています。

※本頁は頻発しているセクハラに関する情報を収集し、根本の問題を解決するために作成しているものであり、個人を攻撃する意図はありません。

事例報道・問題提起

報道機関による大学におけるセクシャル・ハラスメントの報道を紹介しています。

理系研究者に女性が少ない理由(東京新聞)

理系と呼ばれる分野では女性が少ないとされており、その理由について最近取り上げることが増えてきました。

原因は1つではなくさまざまあり、根深い問題が存在します。またこれに対する改善策にも多くの賛否両論があり、現状の速度では、実際に研究における男女格差がなくなるのは、まだ時間がかかると思われます。

正義はハラスメントの温床(20220323 東京新聞 )

現状の組織体制ではセクハラが隠れて起きやすいことを取り上げ、その原因について説明しています。二次被害の発生や、法規制の強化の必要性も訴えられています。

早稲田大学の助成准教授が男子学生へアカハラ(弁護士ドットコムニュース20220325

女性が権力を持てばもちろんハラスメントを起こす可能性があります。

性別を問わず、ハラスメントに対して被害者を守る制度は必要です。

▶︎朝日新聞連載「リケジョ」がなくなる日(全5回)

大阪大学教授によるセクハラ(2016.07.15. 現代ビジネス編集部)

キャンパスセクハラは、女性だけの問題ではありません。

男女問わず苦しめられています。

「有能な教授の名誉を傷つけないために軽い処分にする」

そんな「教授会自治」、学生は要りません。

必要なのは、安全に、安心して勉学する環境です。

早大、セクハラの教授解任(2018.07.27. 産経新聞)

指導教授から愛人関係を迫られ、退学した院生がいました。

彼女は他の教員、ハラスメント防止室から二次加害も受けていました。

報道されているのは氷山の一角です。泣き寝入りしている女性は潜在的に多くいます。

早大、教員による口止めを認定(2018.08.30. 朝日新聞)

「被害を相談した女性らに対して男性教授は面倒なことに巻き込まれるのは嫌だなと発言」


セクハラをした教員の同僚教員たちが、改善に動くどころか、被害者女性に対し被害の「口止め」「問題の矮小化」をするのが日本の大学の現状です。



早大のセクハラ事例の調査報告書から問題を問う(2018.10.12. 東京新聞 朝刊)

上記の早大のセクハラ事例について、調査報告書をもとに問題点を洗い出しています。

セクハラ認定後でさえ、副総長みずから被害者氏名を透かした異常な報告書を作り、二次加害を加えています。「女性にとってはまさに二重三重の苦しみ。自分が間違ったことをしたかのように感じられ…読むのもつらくなる。萎縮効果を狙ったのではないか」と、申教授。それでも「職場と違い、大学の場合は何かしら対応すれば法的責任を問われにくい」とのことです。

早稲田大学セクハラ防止室の欠陥報道(2018.11.19. PRESIDENT Online)

日本の大学に、被害者保護の考えはありません。

早大ハラスメント防止室『防止室は大学のリスクマネジメントのためにある』と説明。

「あえて資格を持った人を入れないようにしている…曰く、資格を持っていると、被害者側に立ち過ぎてしまって運営がスムーズにいかなくなる」


各国で「いかに被害者に対し法的・心理的専門家へのアクセスを保障するか」という段階で立法がなされているのに対し、このような日本の現状は異常です。

法規制がない限り、こうして加害側の大学の都合が優先され、被害が握り潰される現状が続いてしまいます。

上智大学教授のセクハラ報道(2020.09.20. 日刊ゲンダイDIGITAL)

大学被用者が学内の地位を利用して学生に行ったセクハラに対し、大学は「本件については個人間のことと認識しております」と述べたとのこと。学内問題を矮小化する、印象操作に近い責任逃れで、ここまで学生のことを考えない大学ファーストが公言されたことも驚きです

大学院生は弁護士相談料を払う余裕なし(2020.10.10. Yahoo! ニュース)

院生はハラスメントを受けても弁護士相談料を払う余裕がありません。訴える先がない弱者が狙われています。


「敢えて所属機関の異なる研究者にハラスメントをする加害者が多数おり、被害者はどこにも訴えることができず泣き寝入りしている。それにより研究者への道を諦めた人たちを何人も知っている」 (Yahoo!ニュース(室橋裕貴)



なお法テラスでは経済的余裕のない人への分割返済制度を設けていますが、原則三年以内の支払いとなっているため、奨学金とアルバイトで学費や生活費を賄っている院生、初任給以下の学振で生活する院生は、ハラスメントを受けても、実質的に法的救済という選択肢がありません。

東大准教授、女性研究者へのマタハラ(2020.03.27. 朝日新聞)

東大でもハラスメント問題が報道されました。

「女性研究者が結婚や出産、子育てと研究活動を両立させるのは困難とする発言を繰り返し、2人の研究活動を侮辱するなどした」


「女性は研究できない」のではなく、環境が女性に研究をできなくさせているのです。

早大、複数学生へのハラスメント事案を5年間たらい回し(2019.07.10. 現代ビジネス編集部)

教授のアカハラにより博士課程4人が退学した事案では、5年も学内の機関をたらい回しにされ、結局「調査打ち切り」となっています。

学生側の負担は多大で、まさに労力に見合いません。

立場の非対称性を前提に、大学側が確信的に長引かせ、諦めさせるケースもあり得ます。

早大助教、わいせつ行為により逮捕(2021.07.21. Business Journal)

早大助教が「起業の相談を受ける」と学生を食事に誘い、わいせつ行為に及び、逮捕されました。これまで同じ大学で何度も事件が報道されています。教員によるセクハラ・犯罪に対し、大学が実効的措置をとることは期待できません。

一橋大学のハラスメント実態(2021.04.21. 東京新聞)

学生団体により学内の性被害やセクシュアルハラスメントに関するアンケートが実施され、その報告書がホームページに公表されました。


「進路相談の際に「女性は結婚できるから最悪、男性に養ってもらえばいい」と言われた」「直接的な性被害を訴える学生もいた」など、被害の声が可視化されています。


日本の大学に、被害者保護の考えはまだ浸透していません

大学は、学生から問題提起されるまで放置してきたことを反省し、「防止に取り組む」等紋切り型の応答で済ませず、実効的な措置を講じるべきです。

一橋大学、ハラスメント相談室が機能不全(2019.10.19. 現代ビジネス)

2019年の状況として、

「一橋大学の学内では現在、「大学にハラスメントの被害を相談しても、学生は守ってもらえない」という雰囲気がある」

被害者の味方をするどころか、むしろ積極的に名誉を貶めたり、対応を引き延ばして学生の苦痛を長引かせているのが、大学の現状です。

立教、ハラスメント対応責任により総長辞任(2020.05.15 毎日新聞)

今年に入ってからも、立教大学で副総長2人が同じ学部のセクハラ加害教員を「厳重注意」だけで済ませようとした事案がありました。後に総長も含めて引責辞任となっています

偉い教授であっても、セクハラに適切に対応するわけでありません。現在大学に、自浄作用が不足しているように思えます

大学のセクハラ、報告義務なく、実効的措置なし(2007.12.07. PRESIDENT Online)

「国立大学が法人化したこともあり、06年以降、懲戒処分数を文科省に報告する義務もなくなり…公立、私立大学は公表すらしていない」

「大学内でのセクハラは、実は氷山の一角」

「大学側のセクハラ対策・対応は不十分」

やや古い記事ですが、現状は変わっていません。

セクハラが学生に対して及ぼす長期的悪影響(2018.08.10. BuzzFeed News)

キャンパスセクハラは一過的問題ではなく、被害者の一生に影響します。

「大学‥でのハラスメントの最も大きな問題は、学生たちの学問への夢や学ぶ意欲を奪ってしまうことです。研究できなくなる‥‥という不安は、長期的にみた人生においても大きなマイナスとなりえます」

筑波大、わいせつ行為の教授を懲戒解(2022.02.09. 産経新聞)

自身の研究室で女子学生の胸を触るなど、複数回わいせつな行為をした」

研究室は密室であり、学生指導においては男性と若い女性学生が二人きりになるため、セクハラが生じやすい環境です。

大学側は「学生指導の際に扉を開ける」等の対策を徹底すべきです。


東大院、指導教員が2年以上のセクハラ(2020.02.06 東京大学サイトにて公表)

同じく東大院でセクハラが報道されました。報道例は氷山の一角ですから、実態をどうか想像してください。

「交際を拒まれるたびに、研究に関する予定を変更したり、不機嫌になったりするなど当該学生を翻弄し、結果的に研究が続けられなくなるほど精神的に追い詰めた」

懲戒処分の公表について | 東京大学 (u-tokyo.ac.jp)

SNS上で女性学者に対し中傷(2021.03.23. 毎日新聞)

女性研究者を差別する個人の意識だけではなく、大学・学会が、これまでも潜在していた女性へのハラスメントを能動的に規制してこなかったことも問題です。学術界の文化・構造を変える立法が喫緊課題です。

改善に向けた活動・情報発信

▶︎学会や研究会の取り組み

学術界の差別問題を見過ごさず、迅速な制度的対応をする研究会もあります。

他の学会・研究会も続いて、ハラスメント規程制定・相談窓口設置等の実効的対策を講じることを求めます。

社会政策学会、女性院生のハラスメント被害を定量的に可視化

社会政策学会による2020 年ハラスメント調査報告書では、

・理不尽な理由で教員から就職や学位取得、論文発表を妨げられる

・1対1の場で攻撃的態度をとられる

・指導をしてもらえない

などのハラスメントを受ける割合が、女性院生において有意に高いことが示されています

出典 「研究環境調査-2020年ハラスメント調査報告書」、117頁。https://jasps.org/archives/4458

日仏女性研究学会主催協力シンポジウム】フランスのフェミニズムを再考する―大革命期からパリテ法まで(2022年3月5日

本シンポジウムの趣旨は、日本のジェンダー問題を考えるにあたりフランスのフェミニズムの歴史を再考することです。」(サイトより引用)

共催:日仏会館・フランス国立日本研究所、ジェンダー法政策研究所

日本社会学会によるハラスメント処分を受けた会員に対する要請

学会は狭い世界のため、院生は上の立場の研究者からセクハラを受け、研究人生そのものを潰される可能性があります。

このため日本社会学会は、学会内での加害者の活動制限を要請しています。

他の学会も、被害者に配慮した対応をし、若手の研究環境を守って頂きたいです。

キャンパス・セクシュアル・ハラスメント・全国ネットワーク

「1997年に結成された,教育の場におけるセクシュアル・ハラスメント問題の解決に寄与するために,教育機関,学術諸団体,各種運動体,司法関係者,カウンセリング機関などとの連携を通じて,情報交換,意識啓発,問題解決のための諸活動,被害者の支援などを行うネットワーク」


ウェブサイトにキャンパスセクハラに関する様々な情報が載っています

大阪公立大学 女性学研究センター

大阪公立大学女性学研究センターは、性差別のない、だれもが対等に生きることのできる社会の実現をめざして活動しています。ジェンダー研究および大阪府男女共同参画推進条例にもとづいて男女共同参画に関する総合的な研究を行い、国内外の研究者とのネットワーク形成の場としての役割を担うとともに、大阪公立大学・大学院におけるジェンダー研究・ジェンダー教育を担当しています。」

(「大阪公立大学女性学研究センターについてより)

▶︎当事者・学生団体の取組み

当事者・団体による改善に向けた取り組みを紹介しています。

大学のハラスメントを看過しない会

広島市立大学による学生との意見交換会

大学当局による【キャンパスセクハラ対策の先駆的事例】です。

広島市立大学のハラスメント防止委員会が、学生からハラスメント対策に関して直接意見を聴いています。

学生自身の要望を聴くことで、特に被害の発生した大学における信頼回復、二次加害の防止に通じます。

GENCOURAGE、ポーラ協力講座「ジェンカレ」

任意団体 GENCOURAGE、ポーラ協力によるジェンダー関連講座「ジェンカレ」

ジェンダーに対する教育を企業が後押しする仕組みです。どの世代も時代と共に変わっていく価値観について、学習を進められることで、ハラスメントの発生を減らすことが可能です。

ヒューマンライツ・ナウ「日本の教育機関における男女平等の推進」

本報告書は、ヒューマンライツ・ナウおよびフォーダム大学ロースクール(ニューヨーク市)の Leitner Center for International Law and Justice (リートナー国際法・司法センター)内 Walter Leitner International Human Rights Clinic( ウ ォ ル タ ー・リートナー国際人権クリニック)が提出したもので、学校スポーツ競技、高等教育への入学試験、セクシュアル・ハラスメントおよび性暴力等の分野を含む、日本の教育制度における性差別に関する推奨事項を示したものです。かかる推奨事項は、タイトル・ナインの比較研究と分析に基づいています。」(報告ページより引用)

▶︎義務教育におけるハラスメント

全国学校ハラスメント被害者連絡会(スクールセクハラ)

義務教育における性暴力の問題

研究会では高等教育機関を扱っていますが、義務教育においても教員による性暴力(スクール・セクハラ)が問題になっています。

全国学校ハラスメント被害者連絡会は、被害者の当事者団体です。署名を行い、ロビーイングまでし、ようやくわいせつ教員対策法が2022年(令和4年)4月1日施行されました。


問題教員データ一元化プロジェクト

同団体は、問題教員がハラスメントを繰り返してしまうこと、これを取り締まることがまだ難しいことから、加害をする教員のデータを作成しはじめています。

説明にある通り、雇い主へ「第三者として通報」するため、「警察や司法の捜査協力」のため、「裁判所や各弁護士会からの開示請求に対応」するために情報を使用するとのことです。

大学における教員にも再発の問題があり、このようなシステムが構築されると良いかもしれません。

(参考)企業のハラスメント対策例

株式会社クオレ・シー・キューブ:社外ハラスメント対応サービス

ハラスメントに関する研修や、パワハラ行為者(加害者)行動変容プログラムなど、ハラスメントに関する対策・改善に有効なサービスを有料で提供しています。

ハラスメントは、企業が外部に委託してまでも対応を取るべき、重要な問題であることがわかります。大学でも同様のハラスメント対応が望まれます。

女性のエンパワーメント原則(UN WOMEN)、ジェンダーギャップ分析ツール

女性のエンパワーメント原則ジェンダーギャップ分析ツール

「女性のエンパーワメント原則ジェンダーギャップ分析ツール(WEPsツール)は、全世界の企業がその職場、市場および地域コミュニティにおけるジェンダー平等における実績を評価できるよう支援する、ビジネス向けのツールです。」(サイトより)


このような評価基準を大学にも適応することも可能なはずです。