コラム① 大学の研究者や専門職員、院生の方に伝えたいこと(2022年5月 文責:H)


 ボランティアには色々な種類があり、自分が好んでできることもあるかと思いますが、私たちにとって、大学セクハラの問題を訴える活動は、苦痛が多いものです。

 私自身は、当初より望まずにこの活動に取り組んできました。他の女性メンバーも、被害を身近で知ったために、否応なく活動しています。

 耳にすると数日間(場合によっては長期的に)憂鬱になるような男性教員の所業の後始末を、誰が率先して、しかも自身の余裕のない時期に無報酬でやるでしょうか。私たちは、自分が見たくない・聞きたくないと思う事柄に、本来研究を進め、博士論文を書くべき大事な期間、膨大な時間を費やしてきました。

 研究の基礎を築けるか、あるいは築けずにアカデミアを去るか、という状況にある私たちが、この何年か、とても苦しい二択を迫られています。「苦しんでいる被害学生を無視するか、大学から出た汚物の最終処理場になるか」という、二択です。

 なぜ大学の安定した職にある先生が、学ぼうとする女性を、学びと程遠い性的目的で利用し潰していくのか、私達は、被害を知る度に段々と大学人と大学に対して悲観的になっていき、時に苦しさで胸が圧し潰されながら、事案を収集し、まとめ、問題性を訴えています。

 私たちではなく、大学教員や担当機関の方々が中心になって、文科省と大学に訴え、この放置状態を変えてください。


 文科省に対し、罰則付ハラスメント禁止指針を策定するよう、第三者教職員に通報義務を課すよう、大学に事案報告義務と件数公開義務を課すよう、要望してください。

 大学に対し、「ハラスメント専門職員雇用が、絶対に、緊急に必要」だと訴えてください。

 同僚教員と話題に出して、文科省・大学・研究者の無関心を非難してください。

 他大の研究者と会ったとき、「学会でも早急にハラスメント指針を策定して運用すべき」と話してください。

 教室でも、研究室でも、会議でも、研究会でも、廊下でも、懇親会でも、どうか、「すぐに動くべき事態だ」と言ってください。

 「学生をハラスメントで退学させてはいけない」という当たり前ことを繰り返し口に出して、それを〈大学教員の常識へと、変えていってください。

 大学院生の方は、「自分にはまだ大きく変える権限がないが、文科省と大学の不作為は罪だ」と、院生同士で、ゼミで、学部生がいる場所で、話してください。

 それを直接、間接に聞いて、救われる女性がいます。


 生きている限り、研究を続けるはずだった女性が、博論を提出する前に、指導を口実にした男性教授から性的加害を受け、その後長く苦しみ、精神科に通い続け、生活苦に陥る姿を、そこで失われた、世に出されるはずだった論文の価値を、どうか10秒だけでも、想像してください。

 これは現実の話です。私たちは、誰がそれをし、どの大学のどの組織や関係者が、何もしなかったかを、よく知っています。それらは全部隠されたままです。


 そういうことが、何十件も、これまできっと、何百件も起きています。

 これまで先生方が、何もしなかったからです。耳にしても、口にせず、動かず、そのまま無視したからです。


 どうか、今のアカデミアを構成している方々は、「何もしない」をやめて、口に出し、動き始めてください。