中里社会保険労務士事務所
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自動車の危険から考える vol.2 平成28年 5 月20日(金)
vol.1からのつづき…先日、第二次世界大戦時のノルマンディー上陸作戦を舞台にした戦争映画を観ました。映画は、激しい銃撃戦から始まり、たくさんの若者たちが銃弾に倒れるシーンが続きます。「この人たちはこの瞬間のために生きてきたのか、そこに向かって生きてきたのか、彼らの親たちは、この瞬間のために我が子を手塩にかけて育ててきたのか」。しみじみ思い浸りました。死は、誰にでも訪れ、生死の境目は一瞬です。できるなら、「俺の人生、○○だったな。みんな、ありがとう」と言える最期でありたい。
話が大分それましたが、最近はそういった労災民事訴訟に備えた保険もあるようです。
それたついでに、休業手当の話を一つ。自賠責保険のところで補償は最低限、だけど確実にということを話しました。同じ構図が休業手当にもあります。労働基準法第26条「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」。一方、民法536条(債務者の危険負担等)には、このように規定されています。「②債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。(後段略)」。つまり、使用者(債権者)の責めに帰すべき事由で労務の提供(債務の履行)をすることができなくなったときは、労働者(債務者)は、賃金(反対給付)を受ける権利を失わないとしているのです。これだけ見ると民法の方が労働者に手厚いようにも見えますが、民法の定めでは、契約自由の原則ですので、互いの契約により払わないこともできますし、使用者に責めがなくてはならず、労働者側がそれを立証しなくてはなりません。これを特別法で強行的に修正したのが労基法第26条となります。互いにどんな契約を結んだにせよ、(労
働者の生活維持のため最低限必要な)6割以上の休業手当の支払いを使用者に強制し、使用者の責めも、不可抗力を除いて、使用者側に起因する経営、管理上の障害をも含む広い概念になっています(例えば、親工場の経営難により下請工場が資材の入手ができず休業した場合、下請工場は休業手当を支払わなければならない)。もちろん、その上で、残りの4割を民法に基づき請求することも可能です。
話を戻しまして、つまり、法律に基づき強制的に保険に加入させるにはそれなりの意味があるということです。自動車を運転したり、労働者を働かせたりして利益を得るのであれば、それは最低限の義務ということです。では、保険に入っているからといって、どんな危険な運転や異常な長時間労働も許されるのでしょうか。そんなことはありません。強制保険の目的は、被害者や労働者の保護・救済ですが、保険はそのための一手段に過ぎないのです。交通ルールを守って安全運転に心がける、働き方のルールを守って、安全衛生に心がける。特に、職場環境づくりを考える立場からすると、安全で衛生的な最高の職場を用意するから、その代わり最高のパフォーマンスを発揮してくれ、と労使がお互いに真摯に事業に取り組む会社であってほしいと願いますし、真の資本主義とはそういうものであってほしいと思うのです。そして、それは、きっと会社の発展に繋がるはずです。お互いルールを守って、気持ち良くやりましょう。
追伸 渋滞で停車中の車への追突だったため、相手方の保険で治療を受け、車も直しました。相手が無保険だったらと考えると…。