中里社会保険労務士事務所
電話:027-329-5451
営業時間:平日 9:00~17:00
自動車の危険から考える vol.1 平成28年 4 月20日(水)
こんなしがない「考える」でも待っていてくれる人がいると知り、半年ぶりに筆を執りました。
次の「考える」は自動車のことにしよう、自動車って便利だけど、良く考えると危ないですよね、という話を書こうとずっと考えていましたが、何と、先日、当の本人が自動車事故に遭ってしまいました。幸い大事はなかったのですが、楽しみにしていた大学時代の先輩と会う予定はキャンセルで、何とも憂鬱な気分になりました。
最近、よく思うのですが、自動車って便利で、今や、社会になくてはならないものですが、反面、危険なものですよね。故意であろうがなかろうが、過失がなかろうがなかろうが、使い方次第で簡単に他人を傷付けられてしまう。凶器になり得るものという認識がないだけに、よほど危険なように思います。だからこそ、強制保険(自賠責保険)まであるわけで、この保険がなかったら、お互いに危なくて仕方がありません。
ここで、「お互いに」と書きましたが、一般的に保険は加入者が将来のリスク(不確実性)に備えて加入するものです。自動車事故を起こし損害賠償するリスクに備えて保険に入るということになります。一方で、その保険に加入することを強制することには、どんな効果があるのでしょうか。そうです。最低限の損害賠償を確実にさせ、被害者を保護・救済するという目的があります。この場合、補償内容には上限がありますので、足らず前は損害賠償請求の対象となりますが、そのリスクに備えて任意保険に加入することになります。
この辺の話を労働の場に重ねてみると、一つには労災保険が思い浮かびます。労災保険も強制保険で、考え方は同じです。労働基準法によって、使用者には労働者への災害補償が義務付けられています。しかし、それだけでは、使用者の資力によって十分な補償がなされなかったり、スムースな補償がなされなかったりする恐れがあります。そこで、災害補償を確実にし、被災労働者を保護・救済しようというのが労災保険制度ということになります。よって、労災保険は、一見、労働者が被災するリスクに備えた保険なので、労働者が加入者のように思われますが、実際には、使用者が補償リスクに備え
て加入する保険ということになり、従って、保険料は全額使用者負担ということになります。自賠責保険と比べるとイメージしやすいかもしれません。こう考えると、「労災隠し」を貫けるのであれば別ですが、労災保険に加入していないということは、違法なことをしていると同時に、非常に大きなリスクを抱えているということに事業主は気づくことと思います。
さらに言えば、自動車に任意保険があるように、労災に関しても労災保険ではカバーし切れない時代になりつつあるようです。労働契約法に基づく「安全配慮義務違反」です。同法第5条「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」。例えば、長時間労働の果ての過労死や過労自殺…。最近、「またか」と感じることに、大型バスによる事故があります。確かに会社が存続するために安い仕事でも引き受け、安全対策を疎かにしてまでも社員を酷使しなければならないという、如何ともしがたい構造的問題もあるのでしょうが、会社として、或いは業界として、人の命を何と心得るのか。結果として、社員のみならず、大切なお客様の命も奪い、会社自身も消えていく。最終的に消えていく会社であれば、そこで犠牲になった命は何だったのか。…vo.2につづく