発生生物学研究の大学院生だったころ、「統計の基本はきちんと身につけておけ」といわれる一方で、「統計を駆使してやっとなにかいえるような結果は疑ってかかれ」というようなことも言われた記憶があります。後者は「統計を正しく学び正しく使え」という意味にも読み取れますが、「発生生物学に統計を持ち込むな」というニュアンスも感じられました。
当時の周りの人たちの感覚がどういうことだったのか、今では分かりません。確認する方法もありませんし。
でもたぶん私の感じていたことの幾分かは(こまったことに)本当だった気がするのです。身近にいた発生生物学を志す多くの方が統計から逃げていたような気がします。別にわたしの身の回りの方々に限ることではなくて、とくに海産無脊椎動物の発生に関する論文の中に、いわゆる「実験計画法」を意識した研究はすくなかったんじゃないかと思います。
一方でそうでは無い方々も少なからずいて、だいぶ以前から定量生物学などという明確な分野があって、大変活発に研究されています。
どうもこの、実験計画法を道具として使っている発生生物学と、多くの海産無脊椎動物の発生学との間に、もやもやとしたなんとも言えない壁というか、橋の無い川が流れているような気がします。
昨日(2013年11月12日)、所属する勉強会でおそるおそるそのことを話しますと、だいぶたくさんの方々同意してくれました。同意してくれたというのは、「モヤモヤした何かがあるが、言語化できない」ということについての同意です。
このモヤモヤを、なんとか言語化していけないかとおもっています。
2013年11月13日 記
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To Do
ギルバートとウォルパートの発生生物学教科書をぱらっとながめて、モデル化や定量生物学的センスで書かれた章をピックアップ。
雑誌、Developmental BiologyやDevelopment, Genes and Development, Developmental Cellなどを、ざーっと眺める。
雑誌、Quantitative Biologyの投稿のうち、発生生物学的なものを眺める。
計量生物学会の会報を眺める。