Business plan

2018年ごろより、ゲノム解析に関するビジネスを立ち上げる必要性を感じ、プランを練っている。まだ非常に大雑把なアイデアしかないが、記録のためのメモを以下に記しておく。

* まず個人的な理由と背景

現在多くの生物学系の研究者が、安定したポストを得ることができず苦しんでいる。わたしも(苦しんではいないが)その一人だ。国の研究予算総額は長期的にずっと増加してきているが、大型予算の枠が増えているのであり、つまり数年のプロジェクト単位の研究ポストばかりが増加している。教授や准教授の肩書きの方でも、多くは時限性である。わたしは40代後半の現在まで、基礎生物学関係の職についてずっと楽しく面白く研究活動を続けてきたが、そろそろプレイヤーとしての職には限界が近づいてきている。

中でも、自分の今後について大きく考えさせられたのは、2019年に発表された日本学術会議の提言書である。

第6期科学技術基本計画への提言

http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-t283-1.pdf

多方面についての記述があるが、その中に「1973年前後生まれの研究者向けのポストはないけれど、大学以外のところに何か作らないといけない(川島による超訳)」ということが書かれている。まさにそのど真ん中の人間としては、今後の身の振り方を考えないといけない、という思いにかられた。幸いにも様々な理由から、わたしは今日明日の食い扶持に困る状況ではない。PIのポストにつけそうにないのであれば、まだ元気のある今のうちに、大きく職種を転換して、長く続けられるビジネスを開始したいと考えるようになった。

家族が名古屋近郊での暮らしを望んでいるので、名古屋か愛知県内でビジネスを始めるのが妥当なところだ。

ずっと生物のゲノムを解析する仕事をしてきた。どこに住んでいても、インターネットにつながってさえいれば、ゲノム解析関係の受託仕事ならできそうだ。これを軸に考えようと思う。

* 公的な研究費のシステム?的な理由と背景

愛知県内には基礎生物学研究所、名古屋大学、名古屋市立大学があり、また近隣県として静岡県の国立遺伝学研究所が近いなど、中部地域は国内の基礎ゲノム生物学の中心的な役割を担っている。わたしは基礎生物学研究所にも国立遺伝学研究所にも所属していたことがある。これらの研究所の同僚たちと緩く繋がりながら、公的なポジションについている研究者にはやりにくい仕事が、いろいろあるはずだと思う。

特に、最近の研究費の大型化と、予算利用の厳格化は、年度後半における研究者の活動を疲弊させている。予算をスケジュール通りに執行しなければ、研究が進まないのだが、これが意外に難しい。とくに10-11月に予算関係の書類を作成時期に、外部の受託研究者が解析を進めてくれる、ということになれば助かるという人は多いだろう。

* ゲノム解析分野の特徴

課題:ゲノムデータ関連の解析に関連するツールやデータベースは日々進歩しており、生物学者がその全てをフォローし続けるのは極めて困難になっている。ゲノム解析に用いられるバイオインフォマティクスのツール群の最新情報を生物学者に提供することで、生物学者が本来の研究課題に集中できるようサポートすることができればニーズは多い。ゲノムの解析ツールは日々アップデートしており、そのツールの使い方の知識をフォローすることに多くの生物学者が苦労している。生物学者が多くの自分の研究の時間を、自分の興味のある生物の研究に費やすことができるようになるだろう。

* 社会的な背景

これまで、上記のようなゲノム解析に関するサポート体制は、公的な研究機関および大学の研究チームや技術者が支えてきた。これは、一つには専門知識を必要とすることに加え、大型計算機等の利用が必要とされてきたためである。昨今は、AWSに代表されるようなクラウドサービスを用いることで、大型計算機をオンプレミスで持たなくても良くなったこと、フリーの解析ソフトが世界的に多く作られるようになってきたこと、そして専門知識の源泉である科学専門誌の内容がオープンジャーナルに掲載されることが推奨されるようになってきたことから、小規模なビジネスとしても展開することが比較的用意になってきた。これらが、「いま」このビジネスを開始する主たる理由である。

まだいろいろ、ある。随時書きます。