第9回岩手医療情報研究会 開催報告
教育講演
○HL7-FHIR基本の「キ」
千葉大学医学部附属病院 病院長企画室 特任講師 企画情報部副部長
土井 俊祐 先生
演者は、同病院のシステム情報管理部門で仕事をされております。年末に自院の電子カルテ更新を控えてお忙しいなかで来県されました。また、土井先生の祖父が岩手県の松尾鉱山で働いていたということもあり岩手県へ親近感も感じて来県されたそうです。
ご講演内容は、
1、医療DXの推進と「医療情報の標準化」の必要性
2、病院の立場から見た「将来的な業務」への活用の期待
3、FHIRはこれからの「医療システム」や「社会システム」にどのようにかかわってくるのか。「HL7-FHIRとは」から、電子カルテの相互運用性や標準化、日本と欧米の電子カルテの違い、「医療システム」や「社会システム」にどのようにかかわってくるのか。など基礎からデータの活用、今後の発展性まで幅広くご講演頂きました。
運用事例紹介
○HL7-FHIRの取り組み事例のご紹介
株式会社インテック
社会基盤事業本部 医療ソリューション事業部 第一医療ソリューション部
大浜 隆雅 先生
メーカーからのお立場から次の内容でご講演を頂きました。
1、医療連携プラットフォーム
2、FHIRへの取り組み
3、導入事例
メーカとして提案する医療情報連携プラットフォームでは、電子カルテ中心から情報中心の考え方へとした構成としており、そのHL7-FHIRの活用例では、医療安全や医療の質の向上、データ活用、医療機関連携などがあります。現時点でFHIRサーバーを立てるには、海外製オープンサーバー、日本製オープンサーバー、FHIR対応製品を採用などがあります。FHIRサーバー構成としては、リポジトリ型(蓄積変換)とファサート型(都度変換)の方式があり使い分けが必要で、臨床支援研究や3文書6情報などの取り組み事例についてご講演頂きました。
○業務に最適なアプリ開発の基盤と標準化の関係
~がん研有明病院におけるFHIRを活用したアプリ開発~
がん研究会有明病院 医療情報部副部長 データベース開発室室長
鈴木 一洋 先生
演者は、病院でのシステム開発室に勤務されFHIRを利用してのシステムやアプリ開発などを手掛けられています。その中で、データの利活用では日本と米国を比較したデータでは、院内で自社開発にするよりも外部のパッケージングされた商品を導入するケースが多い。これは、日本の病院にIT関連を手掛ける人材不足が招いている結果です。その多くの病院情報システムでは、システムが提供する機能と実際の業務範囲に多くのミスマッチが生じてそれが紙運用や人海戦術となっています。また、院内での検体トレーサビリティや腎機能検査チェックシステムなどFHIRを用いたシステムを開発し医療安全や業務効率に大きく貢献している事例をご紹介頂きました。
特別講演
○医療界隈の情報化を俯瞰する
~何を目指して、何が始まろうとしているのか~
国立研究開発法人国立国際医療研究センター
医療情報基盤センター長
美代 賢吾 先生
演者は、大学病院などにおいて様々なメーカーの電子カルテの導入や開発などに携わっておりそのご経験から次の内容でご講演を頂きました。
1、Dxとデジタル化
2、医療とは情報処理である
3.診療情報利活用の流れ 一時利用も二次利用も
4,JH JASPEHR Project
5,電カルテ改革と医療DX
1990年代の病院では、紙カルテの時代であり、「紙の数だけ業務の種類があり、紙の数だけ情報処理をしていた」多くの業務が紙を中心に行われており、医療の本質の半分は情報処理とではないかと言われている。その電子化は1966年には医事会計システムが導入され1999年には電子保存の三基準が厚労省から通知として出されて電子カルテが医療の現場に導入された。現在の電子カルテでは、紙カルテで出来ていた範囲と電子カルテシステムとは大きく異なることを多くの医療者にも理解してもらう事が必要である。国内全体での電子カルテ普及率では約50%となっている。
医療情報の活用では、「データは、資源だ」と言われており、電子カルテデータは、天然資源でそのままでは使用できない。しかし、電子カルテメーカーや医療施設が異なっても情報を共有ができる取り組みとして、 JASPEHR Projectが立ち上がっており、国が推進しているFHIR標準規格を採用しテンプレート定義を標準化し、出力形式もFHIRで標準化することで電子カルテベンダーに依存しないデータ抽出が可能となることで、「原石は金に生まれ変わる」としています。おわりに、国民皆保険の日本では、偏りのない医療データが高い水準で蓄積されており健康医療情報資源の大国としての高いポテンシャルを医療安全や医療AI開発、創薬、医療機器開発新しい治療方法の開発に貢献できるのではないか。という内容で締めくくりました。