回岩手医療情報研究会 開催報告

テーマ「医療情報システムのこれから」

◇日時:令和5年3月11日(土)13時~16時30分

◇場所:ZOOMによるWEB開催

◇人数:参加者220名

◇内容:特別講演1題、一般講演5題、

◇後援:日本医療情報学会東北支部会、日本医用画像情報専門技師会、岩手県看護協会

       一般社団法人医療情報安全管理監査人協会(iMISCA)

 

今回で第8回目を迎えました当研究会は、病院・企業・教育関連など様々の分野から約220名のご参加を頂き、昨年に引き続きWeb配信による開催となりました。ご参加いただいた皆様には厚く御礼申し上げます。

本来であれば例年通り12月開催を予定しておりましたが、コロナ渦での場所の確保やスケジュール上の都合など開催時期がズレましたことをお詫びいたします。

さて今回は「医療情報システムのこれから」をテーマとし、特別講演1演題、一般講演5演題の計6演題を企画しました。

皆様のご協力のもと無事に会を終えることができましたことを御礼申し上げます。

以下、ご報告いたします。

 


講演内容ダイジェスト

講演1

「医療文献の複写・複製のルール 図書館における著作権」

岩手県立大学 司書 遠藤 夏奈子 先生

 

図書室の司書としてご勤務しており、そのご経験から図書や文献に関する様々なルールを

「著作権法第31条」をもとにご説明いただいた。図書館での本をコピーする場合の枚数やデータをメール送信する際の著作権料について、学術論文の文献検索方法や文献の保存形式、大学での研究成果を閲覧できるリポジトリやサーバー変更等のリンク切れの場合でも閲覧できるDOI(デジタルオブジェクト識別子)などについてご講演いただきました。

 

 


講演2

「医療機関に潜むセキュリティリスクと求められる対策」

アライドテレシス 福田 香奈絵 先生

 

医療機関のセキュリティに関して、病院を狙ったサイバー攻撃は2年間で11件の報道がされている。感染経路はランサムウェア感染、フィッシング詐欺メール、私物USB、Wi-Fiの不正アクセスなど様々で、もとめられるセキュリティ対策としてはリモートメンテナンス環境、バックアップ環境、インターネット分離、エンドポイントセキュリティの見直しなどの技術面を中心にご講演いただいた。

 

「リモートサービス」に関しての職責

岩手県立宮古病院 中川 雄介 先生

 

 病院では、医療機器や医療情報システムにおいてリモートサービスは当たり前のように使用されている。提供側と利用側双方で「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理のガイドライン」や「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」などの熟知が必要で、保健所の立ち入り検査でも「サイバー攻撃対策」について確認されているとご講演いただいた。

 

「リモート接続の現状把握に向けた取り組み」

岩手県立中央病院 尾田川 隆臣 先生

 

放射線部門における外部接続の問題点としては、RIS/PACS、各モダリティなどの外部接続数が多い点と、外部接続の構築を全てベンダー任せにしていたことなどから、セキュリティに関する脅威の把握に苦慮していることである。医療情報システムの安全管理に関するガイドラインでは、システム概要の書類、ネットワーク構成図、システムのリストアップなどが求められているが、ユーザーが主導し医療情報安全管理監査人協会(iMISCA)のチェックリストを用いることで、セキュリティ対策での運用的対策と技術的対策が明確となった。今後はベンダー任せではなく、ユーザーが能動的に情報提供を求めることが必要であるとご講演いただいた。

 


講演3

「PHRを活用した医療情報の可能性」

PSP株式会社 重森 章郎 先生

 

PHR(personal health record)とは生涯型電子カルテのことで、厚生労働省が進めている国民の健康管理に関する事業で、その一端を担っているPSP株式会社の医療情報クラウドサービス「NOBORI」についての機能と国が進める方向性についてご説明いただいた。

また今後は健康診断データ、乳児検診、学校健診など生涯データの活用や待ち時間管理、会計、処方、病院から患者への連絡、患者から病院へ連絡、歩数計の活用など、様々な分野で発展し活用されていくだろうとご講演いただいた。

 



特別講演

「医療人と企業臣がわかりあえる対話(コミュニケーション)とは?

~医療現場のニーズと企業のシーズの融合を目指すために~

岩手県立大学 看護学部教授 岡田 みずほ 先生

 

岡田先生は本年度より長崎大学病院看護副部長から岩手県立大学へ着任されました。

大学病院で臨床から経営まで幅広い分野でのご経験から、医療情報との関わり、医療現場と企業との関係性、看護師の視点からの医療現場の現状、紙カルテ運用時代、電子カルテ時代について過去から現在に至るまでの幅広い内容についてお話をされました。その中で、看護ケアをもっと効率的に実践するために、業務の可視化と問題の洗い出し、音声入力の実験、看護師自体の意識改革について研究をされています。

そこで、医療現場での様々なアラーム音、業務フローの可視化、異業種間での対話の重要性、現場ニーズと企業シーズの不一致は何故起こるのかなどについて、今後はICTの活用、医療現場の当たり前を疑う姿勢、医療情報に携わる人が中立であるということが求められることなどをご講演いただいた。