第三十六回 広島CBT勉強会

●日時: 平成24年9月18日(火)19-21時

●場所: 広島大学病院外来棟 3階 大会議室

●特別講演;岡本泰昌先生(広島大学大学院 精神神経医科学)

●タイトル;「双極性障害の精神(心理)療法」

●内容; 双極性障害の治療において、薬物療法はその根幹をなします。2000年以降、双極性障害の薬物療法に関する大規模の無作為化比較試験がおこなわれ、様々な臨床知見が得られたことにより、進展がみられますが、しかし薬物療法を継続することの難しさや、薬物療法が継続できたとしても改善が十分でない方が多く存在することも指摘されています。双極性障害の精神(心理)療法は、これまであまり取り上げられることはありませんでしたが、これらの問題や課題に資することが期待され、関心が高まっています。精神療法は、決して薬物療法の代替となるものではありませんが、薬物療法を補完する双極性障害の治療上欠かすことのできないものと考えられます。本発表では、現時点で双極性障害に対する有効性が確認されている精神療法である、心理教育、家族療法、認知行動療法、対人関係・社会リズム療法などの具体的な技法の解説や臨床場面での応用法などを概説したいと考えています。Goodwinは、著書の中でうつ病、統合失調症の治療の発展との対比の中で、双極性障害をネグレクトされた疾患と呼んでいます。わが国の双極性障害の治療において、薬物療法はこの10数年間にいくつかの進展がみられていますが、精神療法は残念ながら現時点ではネグレクトされた治療といえます。双極性障害の臨床において、適切な薬物療法にあわせて、エビデンスに基づく精神療法が日常的に実践され、多くの双極性障害で苦しむ人々が救われる時代がくることが望んでいます。本発表が、その際の参考になれば望外の喜びです。