脳の研究は、研究対象の尺度、アプローチ方法によって大まかに4つに分類することができます。
ミクロレベルというのは、脳の中で、遺伝レベル、分子細胞レベル、ネットワークレベルを研究対象としています。
マクロレベルというのは、行動やより心理学に近い研究分野を指します。
それぞれに対して、生き物を使った実験的なアプローチと、コンピューターなどを用いる理論的なアプローチがあります。
マクロレベルの脳研究は一般的に「脳科学」と呼ばれます。一方、細胞を対象とした脳研究のことを「神経科学」と呼びます。
しかしながら、現状、脳科学と神経科学の間には大きな隔たりがあります。
それは、細胞レベルで得られる知見と心理実験から得られる知見の間に大きな乖離があるということだけではなく、研究者同士の相互理解の難しさもあります。
また、脳科学という言葉が独り歩きして、メディア等で誤った用法で利用されることが増えてきており、研究者の中で「脳科学」という言葉に対してネガティブなイメージが付きまとうようになっていることも問題です。
さらに、実験的なアプローチを取る研究者と理論的なアプローチで脳のことを研究する研究者がおりますが、この間にも隔たりや相互不理解があり、お互いに「実験屋」や「理論屋」と揶揄し合う事態があることを目の当たりにしてきました。
私は、脳研究における理論的なアプローチと実験的なアプローチの両方を学んできた経験を活かし、実験と理論、ミクロとマクロの間にある隔たりを埋めるための橋渡し的な役割を果たしていきたいと考えています。