経頭蓋マクロイメージングを利用して、経頭蓋直流電気刺激 (tDCS)の作用メカニズムを明らかにしました。
tDCSは、頭蓋骨の上から極めて微弱な電流を流すことによって脳を刺激する手法で、ヒトではうつ病の改善や、リハビリテーションの促進、さらには記憶力の向上などの効果が報告されており、様々な分野への応用が期待されています。
しかしながらその作用メカニズムは解明されていませんでした。
そこで、覚醒下のG7NG817マウスにtDCSを行なった結果、驚いたことに、非常に明るくてゆっくりとした応答が顕著に増加しました。
二光子顕微鏡で観測したところ、このCa2+上昇は、アストロサイト由来であることを見出しました。
一方、テールピンチとは異なり、ニューロンの応答には変化はありませんでした。
薬理学的実験からアストロサイトのCa2+上昇は、広範囲調節系の神経修飾物質であるノルアドレナリンが引き金となって生じることが分かりました。
tDCSによって誘導されるシナプス可塑性やうつ様行動の改善にもノルアドレナリンを介したアストロサイトのCa2+上昇が必須であることを見出しました (Monai et al., 2016, Nat. Commun.)。