生体組織などの屈折率が高く厚みのある物質を、顕微鏡を用いて観察する際、対物レンズから出射された光は焦点面に正しく集光せず、観察像が劣化することが知られています(球面収差)。球面収差は、観察位置が深くなるにつれて増大するため、深部観察を行う場合には無視できない問題です。
そこで我々は、これらの問題を解決するために、自動球面収差補正システム (Deep-C)を開発しました。Deep-Cをマウス生体脳イメージングに適用した結果、特に大脳皮質深部において光学的収差の少ないより鮮明な画像が得られることを見出しました。今後は、学習や記憶の神経基盤と考えられている神経棘突起(スパイン)の形態変化のより精密な計測などへの応用が期待されます。Deep-Cを搭載した対物レンズは、2018年から「TruResolution」(オリンパス株式会社)という商品名で実用化されます。
2018年5月7日 理化学研究所プレスリリース 深部微細構造を鮮明かつ定量的にイメージングする自動球面収差補正システムを共同開発-産業界との連携制度(バトンゾーン制度)を活用-
オリンパス株式会社 2018年1月17日ニュースリリース 脳科学研究における深部観察を最適化「多光子励起レーザー走査型顕微鏡専用のTruResolution対物レンズを発売」業界初の自動球面収差補正機能を理化学研究所と共同開発