第2回目の道場長インタビューです。
今回は、子供クラスや一般クラスの活動について伺いました。(広報部)
問:子供クラスについて教えてください。
子供クラスは、「気は優しくて力持ち」、そのような子ども達の育成を目標に稽古に取り組んでいます。特徴としては、子ども達の能力を最大限に引き出すために「姿勢の正しさ」を最も重視し、「強く、正しく、美しくあれ」を基本理念に指導を行なっているところです。
問:「気は優しくて力持ち」とは‥
これは、日本人の求める理想的な人間性を表現したものです。この表現は、基本的に男の子の理想的な人間性について述べたものだと思いますが、現代は、男女共同参画社会が進みつつありますので、これからは、女の子にもあてはまる時代なのではないかと考えています。
また、当会の「人間性の向上と健康的な心身の獲得」という理念を子ども達や保護者の皆さんにも分かりやすく表現したものです。
問:解説をお願いします‥
「気は優しくて」については、自分の事だけを考える小さい人間にはなってほしくない、「思いやりのある人間性の持ち主に育ってほしい」という願いを込めています。
次に「力持ち」についてですが、力には、腕力、知力、経済力、政治力等々、たくさんありますが、現実問題として、まずは「力」を身に着けてほしいという願いを込めました。例えば、力がないと大事な者も守れない‥、これが社会の現実です。事が起こってからでは遅い。若い時には、がむしゃらに力を身につけるべく行動してほしいと願います。この力は、何でもよいと思いますよ。腕力がないものは知力でいく、腕力も知力ないが友達が多い者は政治力でいくなど、それぞれが得意な分野で力を発揮するように努力を惜しまないでほしいと思います。
そして、その過程で艱難辛苦を舐めつくし、成長した暁に総合的な人間力「徳」を磨くことに尽力する。これが一番よい生き方なのではないかと思います。昔は、これは男性だけに当てはまる生き方だったかもしれませんが、現在は現実問題としてそうもいかない時代になりました。このため、女の子に対しても、この方針で臨んでいます。この二つの願いを込めました。
問:男の子と女の子の性質はけっこう異なるものですか‥
持って生まれた性格・資質はやっぱり違いますね。男の子は「強くなりたい!」、これが持って生まれた性(さが)で根本的資質です。女の子は「美しくなりたい!」、これが根本的資質。指導する際には、このことを基本に誘導すると素直に従ってくれますね(笑) 例えば、「イチロー選手の能力、それは姿勢の良さにある、ああなりたければ姿勢を正しくしていくべきだよ‥」、「私は以前、政治家の秘書として一流、そして成功者と呼ばれる方にたくさんお会いしたが、姿勢がいいことが共通点だった‥」、とか、「この前モデルさんと仕事をしたらみんな美人ばかり‥、でも、やっぱりみんな姿勢がよかったね‥」、「せっかく可愛く生んでもらったのに眉の間にしわを寄せるのはもったいないよ‥」などの言葉で誘導しています。けっこう真剣になりますよ。可愛いですよね。
問:求めることが「強さ」と「美しさ」で異なりますね‥
一見そうですが、私は本質的には異ならないと思っています。強さを求めていくと結果的に機能美というものが生じますし、美しさの中に凛とした強さがないと私には何か軽くて物足りない、あくまで表面的なもので美しいとは感じない。結局、強さを求めると美しさが身につき、美しさを求めると強さが必要になる。あくまで比重の問題ではないかと考えており、究極的には一致すると思います。しかし、本質的には、男性は強さ、女性は美しさを求めることが遺伝子にインプットされているようですね。子ども達もいつかは、強さの中には美しさが包含され、美しさの中には強さが包含されていることを理解する日が来ると思います。
また、話が変わりますが、どちらを求めて続けても最終的には真・善・美の世界、いわば芸術の世界を求めることになると思います。
問:子供クラスの稽古内容について
礼儀作法、体力づくり、運動神経の向上を主な目的として稽古しています。そして、古典の素読を通じての「徳育」、道着の着用、正座や礼法などを通じての「美育」を行っています。きっと意味が分からないことのほうが多いのでしょうが、覚えるのは早いですね。みんな凄い能力を持っていますよ。
通常の稽古は60分で、初めに準備運動で、身体を柔軟にすることで心身を快活にします。次に鍛錬で、腕立て伏せ・四股踏みなどを通じて、体力・精神力の向上を図ります。次に受身等の基本技で、ケガ防止のため基本技を丁寧にゆっくりと行います。次に技の稽古で、様々な技を自分のペースで稽古します。最後に古典の素読を通じて様々なことを学び、同時に礼儀作法等も学びます。それから、最後の最後に清掃を行って終了になります。
問:特徴としては‥
あまり知られてはいませんが、合気道の創始者植芝盛平先生流の教育というのがあります。それは、①「気育」、②「知(智)育」、③「徳育」、④「体育」、⑤「美育」です。植芝先生は、これをもって全人教育としています。素晴らしい考え方だと思います。卓見ですね。
ついでに言えば、先ほどの「五育」に「常識の涵養」、武道の「技(術)」、そして、最後に「和」、これら全てで八つになりますので、この八つを鍛錬することが目的です。ちなみに早朝稽古を八練会と称していますが、この名称はここからきています。
これを60分という枠にまんべんなくを盛り込むのはたいへんですが、できる限り、これらを万遍なく織り込めるように努力しているところです。
問:運動が苦手な子も出来るでしょうか‥
子供の部では礼儀作法はもちろんですが、子供の成長に必要な運動能力・俊敏性の向上を目指しています。稽古を続ける事でいつの間にか自然とテキパキとした行動が身につきます。 また、鍛錬として、運動神経のよくなる運動や体力向上のための運動を織り交ぜながら稽古していますので、能力に差異はあっても少しずつですが上達していくものですよ。
問:そうですね‥
はい。それに合気道という武道は、数ある武道やスポーツの中で身体能力を高めるという点では、一番優れているのではないかと思っています。両手、両足をバランスよく使用し、上達の度合いによって複雑化していく‥、合気道を学ぶことで、実際に運動神経やバランス感覚などは自然に向上すると思います。必要なのはやる気だけです。
また、野球、ゴルフ、テニスなどのスポーツは、身体を片方だけ使いますよね。しかし、合気道は左右両方を均等に使用する。この点からも身体能力を高め、身体のバランスを偏らせない‥、このため、健康法としてとても有効だと思いますよ。そして、児童からシニア世代までできる武道はそうないでしょう。これらは、合気道の優れた点だと思います。
問:照れ屋で対人関係が苦手な子は大丈夫でしょうか‥
ぜひ、そういう子にやってほしいと思います。合気道は、稽古で誰とでも組む必要があります。正直なところ、苦手な子や嫌いな子もいると思いますが、みんな心の中で葛藤しながらも上手くやっていますよ。そのような稽古を通じて自然と上手く対応できるようになります。そして、そのことを通じて相手を理解し思いやる心が自然と生まれるようです。習うより慣れろです。ぜひ、チャレンジしてほしいと思います。
問:昇級審査は‥
夏と冬に年2回実施しています。現在は、8月と2月の一番暑く、一番寒い時期にあえて行っています。嫌がらせではありません(笑) これも子ども達を鍛えるためです。
特徴としては、「美育」の審査を行っています。特に難しいことをやっているのではなく、道着の着用、正座や礼の仕方など、いわゆる容儀や立ち居振る舞いを細かくチェックしています。社会に出た時には、いつもはできていなくても、一応、一通りの作法は常識的に知っている‥、これが大事だと思いますので、頭の柔らかいうちに覚えてもらうようにしています。
問:子供でも大人のクラスで稽古はできますか‥
これは体力的な問題と技術的な問題がクリアできていると判断できた場合は、一般クラスでの稽古を勧めています。一般的には、6年生以上が基準となりますが、昇級状況で技術的に問題ないと判断できた場合は特別に許可しています。
問:指導上で注意されていることは‥
この前、ある神社で宮大工の方が作業されているのを拝見しました。宮大工とは、通常の大工仕事と異なり、加工済みの真っすぐな柱ではなく、自然の丸太などを活かしながら釘を使用せずに建築されるそうです。話を伺ってみるとただ組み立てるだけではダメで、将来、この材料が経過年数とともにどうなっていくか、その性質を見越して作業をするそうです。素直な木、曲がりくねった木、それぞれ癖があり、その性質を見極めて適材適所で使用する。手を加える物もあれば、そのままその癖を活かす場合もあるらしいです。
問:はい‥
この話を聞いてから、そのまま真っすぐ伸びようとしている子供はあえてあまり手を加えないようにしています。ポイント毎に指導する程度です。変に手を加えると逆によくない気がしています。逆に癖の強い子供は、要所要所できちんと手を加えていくようにしています。ただ、癖が強いからと言って決して悪いというわけではない。その癖を活かしつつさらに伸びていくように手を加えていくという感じですね。現段階では、この指導方法が正解だと感じています。
問:子供クラスの入会希望者に伝えたいことは‥
そうですね。60分という短い時間ですが、私も全力で指導しています。正直、終了後はクタクタで甘いものが食べたくなります(笑) それはさておき、私は合気道は一生の財産になると思っています。ぜひ、自分のペースで稽古に参加してほしいですね。詳細は、「入会案内」、「子供クラス入会案内」、「よくある質問」をご覧ください。
問:次に一般クラスについて教えてください。
一般クラスは、中学1年生から、社会人を対象としているクラスです。希望者は、特別な場合を除き小学6年生以上であれば参加を許可しています。このクラスは、「人間性の向上と健康的な心身の獲得」を目的に稽古しており、小学校の高学年からシニア世代まで幅広い年齢層の方が稽古しています。最高齢は71歳です。次が66歳。皆さん元気ですよ。かっこいいですよね。私も先輩方に負けないように頑張りたいと思います。
問:どのような目的で始められた方が多いのでしょうか‥
そうですね。基本的にはいろんな意味で「強くなりたい」という理由ですが、具体的には、護身術、心身鍛練、健康法、美容法、ストレス解消法、精神的に強くなりたい、鬱・ノイローゼ・腰痛を治したい、さらには、道を求める方など目的はそれぞれ異なりますね。面白いところでは、「フィットネスクラブより安いから‥」と言われて唖然としたこともあります(笑) でも動機は何でもいいと思いますよ。稽古を継続するうちにだんだん目的が変わってくるものです。きっと精神的に成長するからでしょう。その点がとても嬉しく感じます。
問:どのような雰囲気ですか‥
子供クラスは、躾の意味もありますので、キッチリとした感じですが、一般クラスは、合気道の稽古心得にある「練習は常に愉快に実施するを要す」のとおり、稽古を楽しむことを主体に実施しています。和気あいあいといったところです。しかし、この雰囲気を維持するには、礼儀を守る、正しい言葉使い、空気を読む、調子にのらない、苦手な人が相手でも嫌がらないなど、大人としての対応が求められます。結果的に中高生にもよい影響が出ていると思います。
問:中高生について教えてください‥
子供クラスと同様に、自身の能力を最大限に引き出すために「姿勢の正しさ」を最も重視し、「強く、正しく、美しくあれ」を基本理念に稽古を行っています。これからの日本を背負ってくれる若者達です。少しでも彼ら、そして彼女達の将来に有益であるように努めています。思春期真っ只中の多感な時期ですが、私のいうことは不思議ときちんと聞いてくれます。ありがたいですね。
実は私には、この年代の子ども達を鍛えたい願望があります。私もそうしてもらっていた経験があるからです。興味のある方は、ぜひ、一度見学に来てください。きっと得るものは多いと思いますよ。
問:社会人の稽古について教えてください‥
私は、合気道はぜひ社会人の方にやってほしいと願っています。私自身、辛い時期、たいへんな時期、いろいろありましたが、合気道に支えられてきました。合気道の哲学は、社会生活上の糧や仕事上の戦略としてたいへん有効ですし、しかも、私は合気道を始めてから、二日酔い以外は、寝込んだことがない(笑) しかも今までインフルエンザにも罹ったことがないくらい健康です。初めのうちは運動不足やストレスの解消目的で十分です。精神的な成長とともに目的が変わっていきます。最終的には道を求めることにつながると考えています。
問:人間関係をうまく構築できない中高生などは‥
子供クラスの時にも話しましたが、ぜひ、そういう方達にやってほしいと思います。合気道は、稽古で誰とでも組む必要がありますので、稽古を通じていつの間にか上手くやれるようになります。そして、そのことを通じて相手を理解し思いやる心が自然と生まれます。習うより慣れろです。そのような多感な時期の中高生には、ぜひ、チャレンジしてほしいと思います。社会人になるためのよい訓練になると思いますよ。
問:女性でも出来るものでしょうか‥
全く問題ありません。女性もたくさん稽古していますよ。合気道は、力に頼らず技により大きな相手でも倒すことができますので、特に女性は護身術として始められる方が多いようです。皆さん自分のペースで楽しんでいらっしゃいます。
問:年齢が60歳を過ぎた方は出来るものでしょうか?
全く問題ありません。年齢に関係なく始められるのが合気道です。たしかに若い人と比べると習得に多少の時間は必要です。しかし、試合もありませんし、型稽古をゆっくりと反復して行いますので年齢に応じてじっくり取り組む事ができます。当会では50代、60代、そして、70代の方も稽古しています。あとやる気だけは必要ですね。
問:体力に自信がなく、また運動が苦手な方は出来るものでしょうか‥
合気道は競技ではありませんので、自分のペースでゆっくりと稽古することができます。また、試合もありませんので、勝ち負けにとらわれずに、いつまでも続けることができますよ。これが合気道のいいところだと思います。無理をせず、着実に稽古をつめば、体力がない人や運動が苦手な人でも習得できます。
問:運動経験がほとんど無い場合は出来るものでしょうか‥
運動の経験は全く必要ありません。稽古生のほとんどが武道未経験者ですので、ご安心ください。合気道は他人と優劣を競うことをせずに心と身体を磨くことが目的ですので、年齢性別・老若男女を問わず、どなたでも楽しめる生涯武道です。ぜひ、細く長くゆっくりと楽しみながら、ご自身のペースで稽古を続けていただければありがたいですね。
問:一般クラスは開始時間に仕事で間に合わない場合は‥
わざと遅れてくるのは困りますが、一般クラスの対象者は、基本的に中学生から社会人で、皆さん良識のある大人なので全く問題ありません。学業や仕事、その他の事情でピッタリの時間に来られない場合があるのはしょうがないことだと思います。それに同様の理由で私自身が遅れる時もある(笑) こういったことから、開始時間に遅れてもまったく問題はありません。開始時間に間に合わないからと稽古に参加しないのではなく、「今ならあと30分稽古できる‥」という感覚で稽古に来てほしいと思います。
問:一般クラスの稽古内容を教えてください‥
時間は90分です。始めに準備運動で、身体を柔軟にすることで心身を快活にします。次に養命呼吸法で、全身に生命エネルギーを取り入れることで心身を浄化します。次に受身等の基本技で、ケガ防止のため、基本技を丁寧にゆっくりと行います。次に技の稽古で様々な技を自分のペースで稽古します。次に自由稽古で、課題の技、苦手な技、本日稽古した技などを自由に稽古します。最後に整理運動・養命呼吸法で、明日への活力を得るため、全身に生命エネルギーを循環させて終了です。そして、最後の最後に清掃を行います。
問:一般クラスの入会希望者に伝えたいことは‥
合気道は、スポーツはなく武道です。武道を学ぶということは、道を学ぶということですので、当会は、体力と技術、それだけあれば十分だとは思っていません。「一人の人間として価値があるのか」、そこが一番重要だ‥、という立場をとっています。このため、社会性、人間性、教養も必要であり、人として幅と奥行きのあり、かつ度量も持ち合わせた君子‥、分かりやすく言うと「現代の『士』」(サムライ)を目指してほしいと思っています。私の言う士(サムライ)とは、決して威を張った猪武者のことではなく、一通りの礼儀・マナーを備え、世界基準で物事を考えられ、そして、この世の森羅万象の原理原則を理解している人物、そのような人の事です。心掛けしだいで誰でもなれます。
問:なるほど‥
そして、最近思うことは、「老い」には二種類あるということ。
まずは「普通の老い」。老化とは、身体が消耗することによって心身の機能が衰え、頭の回転も遅くなり、そして見た目も衰えていくこと。「騏驎も老いては駑馬に劣る」、どんなにすぐれた才能を持つ人でも、年をとって衰えると平凡な人にも及ばなくなります。どんな人もいつかは通る道‥、これは仕方がないことです。ただ、この心身の老化に任せて生きていくだけの場合‥、これが普通の老い。
そして「老熟」。これは、長く経験を積んで物事に熟練することで、常日頃の習慣による積み重ねを大事にし、日々物事を考え一日一日と成長してきた人、大局観が身に付き風格が備わった人物に例えることができます。なお、中国では、紹興酒などを長期熟成させて風味の増したものを老酒(ラオチュウ)と呼ぶように「老」を良い意味でも使いますね。どうせ老いるならこうありたい‥、そう思います。そうですね、剣豪の小説で例えると、剣客商売の秋山小兵衛などは老熟していると言えるのではないでしょうか。
問:確かにそうありたいですね‥
こうなるには、常日頃から新聞やニュースなどを読むことはもちろんのこと、人生を豊かにする読書はかかせません。そして、真善美の表現である芸術に触れる時間、博学で信頼できる友との語らいの時間、自然と対話する時間、静かに自分を見つめ直す時間などは必要でしょう。そして、これらにもう一つプラスして、奥が深く、生涯を通じて学ぶことができるものがあると、素晴らしい有意義な人生になるのではないかと思います。ぜひ、素晴らしい師匠を見つけて、世の中の原理原則を教えていただきながら、細く長くを基本に生涯に渡って学んでいかれると良いと思いますよ。このことが結果的に「老熟」に繋がっていくのだと思います。
問:最後に‥
心身浄化法としても優れた合気道は、年齢性別を問わず楽しめる生涯武道で「自己を高め、魂を磨く武道」と称されています。私達は、この素晴らしい合気道を一人でも多くの人に伝えたいと考えています。興味のある方は、ぜひ一度見学にお越しください。詳細は、「入会案内」、「一般クラス入会案内」、「よくある質問」をご覧ください。
(広報部)ありがとうございました。
道場長インタビュー3につづく