渡邊太
韓国からYamagata Tweaksterが来る、と聞いて興奮した。見に行きたい。同じく韓国のインディバンドであるwedanceとのジョイント・ツアーが東京と大阪で開催された。2013年1月のことだった。
大阪では、心斎橋のクラブconpassでwedanceとYamagata Tweaksterのパフォーマンスが披露された。Yamagata Tweaksterがいつものようにクラブを飛び出し、心斎橋筋商店街を全速力で駆け抜けると、オーディエンスも必死で追いかける。再びクラブに戻ると、カセットコンロで湯を沸かし始めて、こんどはジャパゲッティ(韓国のインスタント焼きそば的な大衆食)をつくってふるまう。wedanceの熱くうねるロックンロールもかっこよかった。
さて翌日、大阪では、「猫に踊らせられろデモ!」と称した、謎のデモが企画されていた。以下にビラの文章を引用する。
「猫に踊らせられろデモ!」
踊ることが許されないどころか、音楽に合わせて肩を揺らすことすら許されないとは、どこの未来世紀ブラジルやねん、というグローバル都市オオサカ。「維新ッ維新ッ」のかけ声のもと、踊ることを許されない人民は道頓堀プールで泳ぐしかないのか? アホンダラ、アホンダラ、アホンダラ! お前はアホダラ教の教祖か!?
ところで、猫と人間の関係の歴史は数千年前にさかのぼると言われています。地中海キプロス島では、約7000年前に人間が住みつく以前には島にいなかった猫の遺骸が、人間定住後の遺跡から発見されました。つまり、7000年前の人々は島に移住するときに猫を一緒に連れて行ったと考えられます。
もう音楽で踊れないなら、猫によって踊らせられるしかない! 猫に踊らせられろ!
日時 2013年1月30日 10時集合~11時出発~12時終了(のち交流会)
* 午前10時集合の朝デモです!
集合場所 南堀江公園
予定経路 南堀江公園~アメリカ村~北堀江~南堀江公園
主催 キャッツ・愛
http://odoraserarero.tumblr.com/post/41520891679
どうやら、風営法によるクラブ規制に反対するデモンストレーションのようである。怪しい雰囲気を感じつつも行ってみたら、デモの途中から前日、心斎橋conpassでパフォーマンスを見せたYamagata Tweaksterが飛び入りで参加し、大いに歌い踊りながら、アメリカ村を練り歩いた。さすが、境界を超える音楽家だ。「猫に踊らせられろデモ!」とは、じつはYamagata Tweaksterの路上パフォーマンスを意図して企画されていたのではないか。警備の警官たちは本気で怒っていた。なぜなら自分たちの敷いた秩序のラインからはみ出されることを何よりも嫌う警官たちにとって、Yamagata Tweaksterのダンスは手に負えないものだからだ。
破天荒なパフォーマンスが目立つものの、ふだんのYamagata Tweaksterは物静かな青年で、資本主義経済のなかで音楽活動をいかにして持続していくかを緻密に思考する理論家でもある。また大阪に来てほしい。