現在、バーチャルリアリティ(VR)や、現実世界に仮想的な情報を付加した拡張現実(AR)の技術開発が盛んに行われています。このような仮想的な空間に没入するため、視覚だけではなく、全身を動かしながら触った感覚も表現できれば、スポーツや身体トレーニングといった応用が期待できます。仮想的な物体に触れたときに、反力(力覚)を提示する装置は力覚提示装置というものがあります。
しかし、従来装置は、モータで駆動するため、軽量さと硬い物体から柔らかい物体まで幅広い提示の両立が困難であり、卓上型となって利用者が身体を動かす範囲が限定されている場合がほとんどでした。
そこで、軽量かつ幅広い剛性(硬さ/柔らかさ)変化域を持つ空気圧人工筋肉とMR流体ブレーキを使用した可変粘弾性関節を使用した装着型の装置(上肢,下肢)を開発しています。
加えて,落下や上昇といった重力感覚の力覚が提示可能な靴型装置も開発しています。
将来的には,現在開発中の上肢装置,下肢装置,靴型装置を組み合わせて全身動作への力覚提示を目指しています。これらを全て組み合わせることで,様々な環境下での全身動作の力覚提示が可能になります。
上半身への力覚提示が可能な装着型装置を開発しています。粘度の高い(ねばねばした)液体を混ぜたり、歩きながら柔らかいものを運んだり、物を押し込むなどの力覚の提示が可能です。
下半身への力覚提示が可能な装着型装置を開発しています。様々な路面や水中での歩行、サッカーボールのキック動作、重いものを引きずりながら歩行するといった多様な下肢運動の力覚(撃力、摩擦力、粘性力など)提示を目指しています。
VR空間内での落下感覚の向上を目的とした靴型装置を開発しています。VR空間内の落下は映像だけでもある程度現実感を感じることが可能ですが、落下装置により現実の落下加速度よりも小さな加速度を提示することで、よりリアルな落下体験を目指しています。
これまでに、昇降リフターを用いて実際に被験者を落下させ、落下感覚の提示に必要な落下加速度や必要な落下高さを求めました。落下開始時に、落下加速度を与え、ある程度の時間経過のち装置を停止させ、着地手前でまた落下加速度を与えることで現実感の高い落下感覚が得られることがわかりました。この手法を用いることで、高いところからの落下も再現が可能です。
現在、装置を開発中で、装置を装着して歩行が可能なように小型・軽量化を進めています。将来的には、上肢・下肢の力覚提示装置と同時に使用して、様々な全身運動の感覚を提示することを目指しています。