現在、パワーアシストや医療・リハビリテーションシステムなど人とロボットが協調活動するようなシステムが広く求められています。
このようなシステムに用いられるアクチュエータには、軽量・高出力で柔軟性が高いといった特徴が求められています。
当研究室では、オリジナルの空気圧ゴム人工筋肉を開発し、さらにこの人工筋肉と機能性流体を組み合わせることで関節が硬くなったり柔らかくなったりするような関節を持つロボットを開発しています。
軸方向繊維強化型人工筋肉
超伸長型人工筋肉
空気圧ゴム人工筋肉(以下:人工筋肉)とは、ゴムのような弾性媒体材に空気等の流体を注入して動力を得るアクチュエータのひとつです。
通常、風船のような膨張体は内部に空気圧を印加すると,パスカルの原理より四方八方に膨張します(図1)。
しかし、この膨張体に繊維を複合させることで、ある特定の方向に膨張が偏り、その繊維の形状変化に伴う伸長及び収縮力が発生します。
とりわけ、空気の印加によって「収縮力」が得られるアクチュエータを空気圧ゴム人工筋肉と呼んでいます。
図1 普通の風船の膨らみ方
空気圧ゴム人工筋肉は、一般のモータや油空圧アクチュエータに比べて以下の特徴を持ちます。
・軽量で出力密度が高い(重量に対して発生力が大きい)
・生体筋と同様に可変剛性特性を持つ(かたさを変化できる)
・水中や粉中で使用可能であるなど,耐環境性に優れている
・摺動部がなくスティックスリップが生じない
・材料費が安価である(消耗品として使用可能)
以上から、人工筋肉は工場内での直動アクチュエータとしての利用だけでなく、リハビリテーション機器やウェアラブルパワーアシスト機器等、人間に直接接触する機会の多い機械システムに適したアクチュエータとして注目されています。
現在、学術界で広く利用されている人工筋肉として、McKibben型人工筋肉が挙げられます。本人工筋肉は、Joseph McKibbenによって開発され、当初リハビリテーション用アクチュエータとして利用されました。その後、ブリヂストン社によって「ラバチュエータ」として商品化され、日本中に広く知られることとなりました。人工筋肉といえば、McKibben型を思い起こさせるほど一般的になっています。
この人工筋肉は、ゴムチューブに網目状のスリーブを覆った構造(図2)となっており、チューブが膨張したときにスリーブの網目の角度がアコーディオンのように変化することによって、軸(長手)方向に収縮する力が得られます。
図2 McKibben型人工筋肉の構造
当研究室でオリジナルの人工筋肉やソフトアクチュエータを開発しています。
従来のアクチュエータでは実現困難であった運動を引き出すことが可能となり、ソフトロボティクスの可能性を広げることができます。
天然ゴムと炭素繊維やアラミド繊維のような補強繊維を用いることで世界最高レベルの出力を持つ空気圧ゴム人工筋肉である軸方向繊維強化型空気圧ゴム人工筋肉を開発しました。
薄い肉厚と20%以下の最小半径方向膨張を維持しながら、元の長さから520%以上の軸方向伸長を達成した円筒ゴム構造を利用した空気圧アクチュエータを開発しました。
軸方向繊維強化型人工筋肉の持つ伸び縮みする特性に、機能性(MR)流体を組み合わせることで関節が硬くなったり柔らかくなったりする関節を開発しました。