カタツムリは、前斜筋と後斜筋という2種類の筋肉(図1左)を使って、尾部から頭部に向かって筋肉を順に伸縮させ、腹足波と呼ばれる進行波を伝播させて(図1右)移動します。カタツムリの移動には以下の利点があります。
波が形成されていない部分が地面に接地しているため、摩擦力の変化に左右されず安定した移動が可能です。
広い面積で接地して移動するため、接地圧力を分散し、壁面登攀時には小さい圧力で吸着できます。
この特性を応用し、凹凸の壁面登攀や全方向移動が可能なロボットの開発しました。特に曲壁面での全方向移動が得意で、船や飛行機の点検、ビルの壁面検査ロボットとしての応用が期待されています。
キーワード:進行波移動、全方向移動、壁面登攀ロボット
図1 カタツムリの進行波の伝播
このロボットは、四節平行リンクを円形に配置し、摩擦と低摩擦キャスターを切り替えて全方向に移動可能な設計です。磁場回路の切り替えにより、常磁性の壁面や天井でも自由に移動できます。曲壁面にも対応し、任意の方向に移動できるため、柔軟な操作が可能です。
螺旋軌道を用いて進行波を再現し、遠心ファンによる負圧吸着機構で壁に付着するロボットです。広い接地面積により、従来よりも小さい圧力で壁面に付着し、凹凸のあるレンガ壁や天井での移動が実現されています。
航空機検査カタツムリロボット
研究目的
近年、飛行機の運用機体数が増加し、機体点検の効率化が求められている。 しかし、飛行機の点検作業の多くは人の手で行われており、効率化が困難である。 そこで、作業ロボットでの代行が期待される。 構造物を検査するロボットとしてマルチコプターの開発が盛んである。 しかし、マルチコプターは風雨に弱いというデメリットがあり、野外での作業が多い飛行機点検では不向きである。 そこで、本研究では飛行機点検を目的とした壁面移動ロボットの開発を行う。
アメンボは水上に浮かんでいるイメージですが、陸上も歩行できますし空も飛ぶことができます。本研究はアメンボの機動性や水上での安定的な走行に着目しアメンボ規範とした「船」+「ロボット」という新しい概念のロボットを開発し、環境調査ロボットへの適用を試みました。
キーワード:水陸両用、環境調査ロボット、レスキューロボット
アメンボの移動機構
アメンボは6本の脚で水面を広く押さえて浮いています。 水上移動時は前脚と後脚で体を支え、中脚を前方から後方へ掻くことによって推進力を得ています。
水上移動時、アメンボは水面をすべる様に移動します。 そのとき前脚と後脚で水面を押さえ、体を支えます。 また、中脚は前方から後方へオールの様に動かします。 この中脚の動きによってアメンボは推進力を得て前進します。
旋回時は、旋回方向と反対側(外側)の中脚を前方から後方へ動かし推進力を得ます。 また、旋回方向側(内側)の中脚は後方へ掻ききらず、体を支え、回転を制御します。 つまり、外側の推進力の方が内側の推進力より大きいため、アメンボは旋回します。
研究概要
アメンボを規範とした6脚型水陸両用移動ロボットHARo-Ⅰ、HARo-Ⅱを製作しました。
HARo-Ⅰは、アメンボロボットのプロトタイプとして開発しました。前後4脚を歩行用、 中脚をオール用として用い、水陸両用移動機構を開発しました。前後4脚にフロートを取り付け、 浮力で水上を浮揚することが出来ます。実機にカメラ等を搭載し、水上陸上で活用することができます。
HARo-Ⅱは、HARo-Ⅰを改良し、大型化、中脚を脚とオールの併用を可能にしました。 陸上歩行時は6脚すべてを用い、歩行方法として、交互三点接地歩容を用いました。 水上移動時は、中脚をオールに切り替え、前後4脚を支持脚として、水上移動を実現しました。
実地実験(琵琶湖環境調査ロボット)
ゾウの鼻は筋肉で構成されているため、複雑に入り組んだ場所に入り込んだり、 あらゆるものを包み込んで把持したりすることが出来ます。ゾウの鼻のように自由自在に動くマニピュレータを開発しました。
研究背景
一般的なマニピュレータは、エンドエフェクタのすべての位置・姿勢を指定するには少なくとも6自由度が必要となります。 しかし原子炉内や化学プラント内などでは、機器が錯綜しており大変複雑な環境であるため、 エンドエフェクタの位置・姿勢のみでなく、根元から先端までのすべてのリンクの形状についても指定する必要があります。 一方ゾウの鼻は筋肉で構成されているため(下図)、複雑に入り組んだ場所に入り込んだり、 あらゆるものを包み込んで把持したりすることが出来ます。このような機能を備えたマニピュレータは、 空間の自由度をはるかに超えた自由度を有していることから、超冗長マニピュレータと呼ばれ、 これは上記のような環境下における活躍も期待できます。そこで本研究室ではゾウの鼻に着目し、超冗長マニピュレータの開発を行いました。
(↑図の参考文献)K.K.Smith,W.M.Kier,"Trunks,tonques,and temtacles:moving with skeletons of muscle",Am.scientist 77,2pp.8-35(1989)
ユニット構造(3-RRS)
研究概要
本マニピュレータは3-RRSパラレルメカニズムを直列に複数連結して構成されています。 各ユニットの幅や角度を変化させることでマニピュレータ全体の形状を柔軟に変化させることが出来ます。
超冗長マニピュレータ(横スイング) 超冗長マニピュレータ(縦スイング)
超冗長マニピュレータ
研究背景・目的
近年、大腸ガンの患者数が増加傾向にあり、胃ガンに次いで第2位の結果となっています。 大腸ガンの検査に用いられる大腸内視鏡は、診断だけでなく、ポリープ切除などの治療処置が可能であり、 広く使用されています。しかし、内視鏡操作は高度な技術を必要とするため、未熟な医師にとって非常に困難です。 そこで本研究では、既存の内視鏡に取り付け可能なミミズロボットの開発を行い、医師が行う作業を補助することを目的としています。
研究概要
本ロボットは、管内走行に有効なミミズの蠕動運動を規範としており、ミミズの体節に相当する部分には 人工筋肉(本研究室で開発)を用いています。 医療の現場での実用化を目指し、現在はロボットの新構造案を練りつつ、実際に試作を行いながら、ロボット外径の小型化・前進速度の向上・ 安全性の考慮などを主なテーマとして研究を進めています。