医療・リハビリ・トレーニング装置は、身体に装着して使用することが多いため、身体の動きを阻害しない柔らかさを持った機構であることが求められています。
中村研では、オリジナルの人工筋肉や超伸長アクチュエータの柔らかさを生かした医療・リハビリ・トレーニング装置を開発しています。
以下に、一部を紹介します。
長時間同じ姿勢を強いられる高齢者や手術後患者、飛行機移動中の人々には、さまざまな身体的問題が発生する可能性があります。これには、深部静脈血栓症(DVT)と呼ばれる、命に関わる疾患も含まれます。DVTは、主に下肢の静脈に血栓ができる病気で、放置すると重症化してエコノミークラス症候群(肺血栓塞栓症)になることがあります。この状態が再発すると、命に関わることもあるため、予防が重要です。
現在、DVTの予防にはいくつかの方法が用いられています。たとえば、抗凝固剤の投与や、ふくらはぎを圧迫する装置、理学療法士による足首運動などがあります。しかし、これらの方法には、出血リスクや予防効果の限界、人手不足などの課題が存在します。
そこで、本研究では、これらの課題を解決するために、新しいDVT予防装置の開発に取り組んでいます。この装置は、理学療法士の代わりに足首運動を補助することを目的としています。提案する装置は、関節への負担を軽減する内骨格型構造を採用し、柔軟な伸長型空気圧アクチュエータを使って足首の自然な動きを再現します。さらに、本装置は空気圧迫装置と組み合わせることも可能です。装置の効果は、超音波画像診断装置を用いて静脈の血流速度を計測することで検証しています。
キーワード:深部静脈血栓症,内骨格,リハビリテーション
近年、国際宇宙ステーション等の有人拠点による宇宙空間への長期滞在が実現しています。 宇宙長期滞在による重力環境の変化は人間の筋力を大きく低下させます。その中でも抗重力筋と呼ばれる地上での姿勢制御をつかさどる筋力の低下が著しいとされています。 この抗重力筋が弱ると、地球帰還後や、他惑星探査時に宇宙飛行士は立つことができず、生活や探査ができません。
現在、有人拠点でも筋力低下の対策として、トレーニング装置を用いてトレーニングを行っていますが、一般的な筋力トレーニングでは抗重力筋を十分に鍛えることはできません。
そこで、本研究室では、他惑星探査も含めた宇宙空間での長期滞在への応用をめざし、微小重力環境下で抗重力筋を維持可能であるトレーニング手法の提案とトレーニング装置の開発を行っています。 提案手法では地上での抗重力筋の作用に着目し、重力を用いず不安定な姿勢を装置により再現し、その際に姿勢を安定させるように筋肉を使用することで抗重力筋をトレーニングします。
キーワード:抗重力筋、トレーニング、宇宙
尿道カテーテルは、自力での排尿が困難な患者に対して、膀胱内の尿を体外へ排出するために用いられる柔軟なチューブであり、医療現場で広く使用されています。前立腺肥大や尿道狭窄のほか、加齢、脊髄損傷、重度の認知症などによる神経因性膀胱で尿道に閉塞が生じる場合、尿道カテーテルの使用は不可欠です。一方で、カテーテル挿入時には疼痛や合併症のリスクがあり、その主な原因は尿道内壁との摩擦や屈曲部での衝突による損傷にあります。
そこで本研究では、患者の負担を軽減することを目的として、「反転伸長アクチュエータ」を用いた尿道カテーテルの挿入補助機構の開発に取り組んでいます。反転伸長アクチュエータは、薄肉チューブを折り返した構造を持ち、内部を加圧すると折り返し部が外側へ反転しながら前進する機構です。この動作により、外表面が環境と相対的に滑らずに進むため、摩擦抵抗を大幅に低減できるという特徴があります。
開発した機構では、反転伸長アクチュエータの先端に尿道カテーテルを取り付け、その伸長動作によって尿道内へ牽引する手法を提案しています。これにより、尿道内での摩擦や衝突を軽減できると考えています。具体的には、最小径6 mmの尿道内で牽引が可能なアクチュエータの開発手法を確立し、その伸長挙動を実験的に検証しています。さらに、尿道特性を模擬したゲル状の尿道モデルを作製し、提案機構の性能評価を行っています。
脊柱側彎症(Scoliosis)とは脊柱が側方に彎曲する疾患であり、その進行予防が重要です。予防としては手術療法と装具療法が存在しますが、手術療法は患者への身体的負担が大きく、装具療法は装着時に拘束され自由に動けないなどの課題が存在します。本研究では、装着者の拘束の軽減と十分な矯正力の発揮の両立を目的としています。
キーワード:脊柱側彎症、矯正装具、人工筋肉