介護ロボットやリハビリシステム、パワーアシストなど、人間とロボットが協調活動するようなシステムに必要とされる技術として、人間の筋肉のように柔らかく、かつ優れた特性をもったアクチュエータ(駆動装置)が必要とされています。本研究室で開発した人工筋肉とMRブレーキを組み合わせることで関節が硬くなったり柔らかくなったりする関節を持つロボットを開発しています。
本関節はハード的に柔らかく、衝撃力に強いという特徴を持っています。さらに、本関節は人間の関節駆動原理を模倣しているため、従来のモータ駆動のロボットと比較して構造的に人間に近い動きが可能です。
MR ブレーキは外側ケースと内部コア、それらが内包するMR 流体、磁場を発生させるコイル、内部コアと連動して回転する多層ディスクによって構成されます(図1)。
MR 流体は、磁場の変化によって見かけの粘性が可逆的に変化する機能性流体です。コイルへの入力電流を制御することにより、ブレーキ内部の磁場を変化させることができます。これにより、ディスクと流体間に任意のせん断力が生じ、任意の摩擦トルクが発生します。
MRブレーキは、高出力密度かつ応答性が高い(数十ミリ秒オーダ)という特徴があります。
図1 MRブレーキ
可変粘弾性関節の駆動原理図を図2に示します。
本関節は、人間の関節駆動原理を模倣し、拮抗配置した2 本の人工筋肉と1つのMR ブレーキにより構成されます。人工筋肉で関節剛性を、MRブレーキにより関節粘性を表現します。
2本の人工筋肉それぞれに空気圧を印加することで、人工筋肉の長さや弾性が変化します。これにより、関節の角度や関節の剛性が変化します。それぞれに印加する空気圧を制御することで、これらは独立して制御することができます。
MRブレーキは出力軸に接続されています。MR ブレーキの摩擦トルクを出力軸の角速度に応じて制御することで、関節の可変粘性を実現できます。
マイコン・空気圧源等をコンパクトにまとめた可変粘弾性関節モジュールも開発しました(図3)。
図2 可変粘弾性関節
図3 可変粘弾性関節モジュール