第27回 慈愛(2)

「慈愛のシステム」の根底に流れているのは、人の「情(じょう)」です。

「情」はどのように生まれたのでしょうか?

ヒトはサルから進化したとき、確かな「意識」と言うものを手に入れました。

「意識」は、いままで環境の影響に対応するだけだった生命が、

初めて、環境自体をを変化させることを可能にするものでした。

身を寄せ合って、風を防ぐだけだった生き物が、

囲いを作って、風を防げるようになったのです。

「意識」は、ヒトがものごとを仮想できるという能力から生まれました。

すなわち、動物はヒトにまで進化して、記憶容量が増し、

いくつかの記憶を組み合わせることが可能になったのです。

短絡思考から、複合思考が可能になりました。

ものごとの組み合わせ、一部から全部、原因から結果と、

頭の中で、仮の状況を浮かび上がらせ、分析、推理出来るようになったのです。

それらは「想像力」として働きます。

「情」は、「感情」です。

「感情」は、人がものごとを認識して、自分の「快追求・不快苦回避」の欲求に

照らし合わせ、その対応として、脳を含む全身に送る反応信号のことです。

「感情」は、一般に自分の認識に対して起こる反応ですが、

「情」は、自分から他人の認識までも含んで起こる反応です。

すなわち、想像力で他人の認識、他人の欲求を、自己と同一化して、

「感情」反応を起こすことです。

たとえば、自分がひどい目に会えば、怒ったり悲しんだりしますが、

他人がひどい目に会っても、それを自分のことのように感じて、

怒ったり悲しんだりするということです。

それが「情」です。

他者や環境との「共鳴(きょうめい)」です。

「情」の豊かな人間は、「想像力」の豊かな人間のことになります。

しかしその「想像力」が、正しいものごとの把握(はあく)でなくてはいけません。

そしてその後に、出来るだけ正しい対応をしなくてはいけません。

そうでないと、「情」は空回りしてしまいます。

「情」が環境に対して、正しくはりめぐらされている状態が、

「慈愛のシステム」です。

そしてそれは、生命神の導きです。

「慈愛のシステム」の中で、あなたの願いは必ず叶います。

あなたは、ただ「祈る」だけでいいのです。

それは決して、他力本願(たりきほんがん)ではありません。

あなたは、あなたに祈るのです。

あなたの中の、生命神に祈るのです。

あなたの中の、「正しさ」に祈るのです。

あなたの中の、「優しさ」に祈るのです。

あなたの中の、「強さ」に祈るのです。

願いが叶っても、あなたが何かの代償(だいしょう)を払うことはありません。

あなたが、あなたのために願いを叶えただけだからです。

あなたが、何らかの苦しみの中にいたとしても、

それはあなたの成長の糧(かて)です。

すべてが、あなたと、生命神の導きだからです。