第13回 生きる苦しみ

生きることは、苦しみを伴います。

生物はすべて競い合って生きています。

他の生物とも、同属の仲間とも、激しい生存の競い合いを繰り返しています。

環境に適したものが生き残るという、弱肉強食の世界です。

しかし生物間での、共存、共生、協力も存在します。

個であるよりも、複合、集合であった方が、環境に適し、

生き残りやすいからです。

群れを作れば、個の能力を集合して、相乗(そうじょう)効果で

より発揮力を増します。

また、能力の違うものが集まって、能力の補い合いを行うことが出来ます。

人の世界も同じです

競争と協力が存在します。

そして、人の場合、三大本能の一つである「存在本能」が大きく影響します。

「存在本能」とは、自己の存在価値を主張する本能です。

この本能から、自尊心や競争心、自己顕示欲、征服欲を生み出します。

しかし社会的、組織的な仕組みから、集団意識、擁護(ようご)心、

埋没心、服従心も生み出します。

これらが複雑に絡み合って、様々な人間関係を作り出します。

これらの欲求などは、生きるため、また社会的生活を行うために必要で、

生み出されたものですが、「自己・環境秩序」を作り、維持するために、

それらは、ある程度、制御されなければならないものです。

しかし、「宿業」に心を縛(しば)られたものは、自己制御が出来ず、

秩序形成の阻害者(厄介者)となります。

環境を混乱させる:理不尽(りふじん)で構わない者

「嘘をつく」「約束を守らない」「形式にこだわる」

自己中心的である:他人の気持ちを考えない者

「他人を利用する」「プライドが高い」「自分の意見に固守する」

消極的である:やる気がなく、逃げ腰の者

「なまけもの」「臆病」「屁理屈を言う」「否定的」

非難的である:相手の落ち度に、攻撃的になる者

「情け知らず」「不満屋」「完璧主義」

人は誰も、多かれ少なかれ「業(ごう)」に縛られています。

それらの人が集まる社会では、当然多くの葛藤(かっとう)が生まれます。

通常の人同士の欲求の衝突でも、人はストレスを受けますが、

その程度のストレスは、成長の糧(かて)となりえます。

しかし、上の秩序形成の阻害者(厄介者)がいると、周りにいるものは、

非常に大きなストレスを受けます。

そして問題の解決、状況の回復に大きな障害となります。

これらの者が集団や組織の要(かなめ)や上位にいると、

状況はさらに悪くなります。

しかし、これらの者を容易に排除は出来ません。

また、「宿業」に縛られているため、自己の成長もなく、

何年経っても同じ阻害を繰り返します。

これら秩序形成の疎外者たちとの、終わりなき競争と不安定な協力から、

人は、苦しみを受けます。

彼らは、理不尽にあなたを非難するでしょう。

彼らは意味もなく、あなたにいやがらせをするでしょう。

あなたの望む自己秩序は、いつまでたっても未完成です。

あなたの回りの環境秩序は、いつまでたっても不完全です。

あなたの意識は、見果てぬ完全を望み、あなたをムチ打ちます。

あなたは、我慢(がまん)出来ず、諦(あきら)めきれず、苦しみます。

生きることは、かって苦痛でした。

そして今も、生きることは苦しみです。