22q11.2欠失を持つ4名のDiGeorge症候群患者由来iPS細胞の樹立

Generation of human induced pluripotent stem cell lines derived from 4 DiGeorge syndrome patients with 22q11.2 deletion.

Shimizu et al., Stem Cell Res. 2022.

iPS細胞高次特性解析開発チーム | 理化学研究所との共同研究

DiGeorege症候群とは?

DiGeorge症候群とは、23対の染色体のうち22番染色体の片方で生じる特定の領域(22q11.2領域)の欠失が原因となる疾患です。発症頻度は4,000人に一人と推定されており、比較的頻度の高い染色体異常疾患です。臨床像として、先天性心疾患、特徴的顔貌、口蓋裂、胸腺低形成、精神発達遅延など様々な症状がみられます。22q11.2領域の欠失がどのように患者の症状に関わっているのか、分子メカニズムが明らかにされておらず、病態解明を目的とした基礎研究が望まれています。 

本研究では、DiGeorge症候群の病態モデル作製および分子メカニズム解明を目的とし、その第一歩としてDiGeorge症候群から得られた体細胞をもとにiPS細胞を作製しました。作製された患者由来iPS細胞は通常のiPS細胞と同様に未分化状態を維持し、あらゆる細胞への分化能を有しており、DiGeorge症候群患者と同様の遺伝子欠失を保持していました。(図1)

この患者由来iPS細胞を適切な細胞へ分化させることで、患者の症状を模倣した病態モデルを確立することができ、分子メカニズムの解明や新規治療法の開発の手助けになることが期待されます。

執筆:清水 智哉