maneuver
軌道投入シミュレーション・ゲーム
「マヌーバ」
あなたは静止衛星の軌道投入(マヌーバ)を統括する責任者です。基幹ロケットH-IIAで打ち上げられ、国際宇宙ステーション(ISS)と同じ地上408kmの地球低軌道(LEO)を周回している第二段ロケットを、地上35,800kmの地球静止軌道(GEO)に載せましょう。
限られた燃料で、無事静止軌道に乗せることができるでしょうか…?
対応機種
PB-SIM(高速モード推奨) PB-100シリーズ(拡張メモリ不要)
本プログラムはPB-100シリーズ実機で動作しますが、よりスピーディに楽しみたい方はPB-SIMの高速モードをお勧めします。謎エラーが出るのでPokecomGOは未対応です。
はじめに
プログラムを入力又はロードします。プログラム・サイズは474stepsです。Shift+[0]でゲーム開始です。中断後の再開はREADY P0においてRUN 30[EXE]です。
遊び方
H-IIAで打ち上げられた後、第二段ロケットが分離されて高度408kmのLEOへ投入され、安定した円軌道を周回しているところからスタートします。
通常画面
操作方法
操作はLE-5Bエンジン又はスラスターのON/OFFだけです。ロケットの姿勢変更はなく、現在の進行方向に加速するかしないかだけです。
ゲームの進め方
1)タイトル表示後、円軌道(LEO)を周回するロケットが表示される。
2)任意のタイミングで[0]を押しLE-5Bを噴射する。1ショットが15秒相当で、初回は数ショット噴射してよい。高度が上がり始めたら噴射は一旦停止する。
3)高度表示を注視し、遠地点の高度をメモしておく。
4)次に近地点に戻ってきたら、再度噴射する。徐々に遠地点の高度が上がる。
5)遠地点がGEO高度(358(x100km))に近づいたら[.](スラスター)を使用して慎重に高度を上げる。
6)遠地点がGEO高度になったら(超えすぎないこと)、静止トランスファー軌道(GTO)の完成。
7)次にGTO遠地点で[0]LE-5Bを噴射する。今度は近地点高度(メモする)が徐々に上がる。
8)近地点がGEO高度に近づいたら[.]スラスターで慎重に高度を上げていく。
9)近地点がGEO高度以上となったら、GEO到達を自動的に判定し、残燃料量を表示して終了する。
静止軌道投入の方法
人工衛星は、一定の速度で飛行することにより地球を安定して周回しています。低い高度では短い周期で(低軌道 LEO)、高い高度では長い周期で周回します。周期が地球の自転と同じになる軌道を静止軌道(GEO)と呼び、赤道上空高度35,800kmの円軌道です。GEO上の衛星は地上から見て常に同じ位置になるため利用価値が高く、多くの静止衛星が打ち上げられています。ロケットで打ち上げられた静止衛星は、まずLEOに載せられ、その後以下の手順でGEOに移行されます。
LEO①上でロケットエンジンを一定時間噴射する(ペリジキックという)。
ロケットは加速し、円軌道から楕円軌道②に遷移する。
近地点でロケットエンジンを再度一定時間噴射する。徐々に楕円軌道②の遠地点の高度が上がる。
やがて遠地点がGEO高度(35,800km)、近地点がLEO高度(408km)の楕円軌道③となる(GTO:静止トランスファー軌道)。
GTO遠地点においてロケットエンジンを一定時間噴射する(アポジキックという)。徐々に近地点の高度が上がる④。
近地点の高度がGEO高度に達すると、軌道全体がGEO円軌道⑤になる。
(実際には)近地点・遠地点がGEOに一致し正確な円軌道となるよう、微調整される。
注意
低軌道では地球重力が強く、長く噴射してもなかなか高度が上がりません。逆に高軌道では少しの噴射で高度が大きく変わるので、スラスターを使用して繊細に噴射して下さい。
できるだけ近地点または遠地点近くで短く噴射し、マヌーバの回数を稼いだ方が正確な軌道に載せられます。近地点・遠地点での高度をメモしておき、次回マヌーバでのエンジン選択・噴射回数をあらかじめ決めておきましょう。
近地点又は遠地点から外れたところで噴射すると、次回噴射時の近地点・遠地点の高度が変わってしまい、噴射タイミングが難しくなります。
残燃料量が多いときはロケット重量が大きく加速度は小さいですが、残燃料量が少なくなると加速度は大きく増大するため注意が必要です。
このゲームでは、GEO到達後の残燃料量が多いほうが優秀なマヌーバと評価します。そのためには、GEO高度(35,800km)に極力近い円軌道に載せる必要があります。但し一旦高度が上がってしまうと下げる手段はありません。(実際は減速噴射を行えば可能)
軌道高度が高くなると飛行速度は低下し、地球周回に時間がかかります。また円軌道に近づくと高度変化が少なくなり、近地点や遠地点の識別が難しくなります。
ヒント
[0]LE-5Bの1ショット(15秒間)で燃料を1.7%消費します。[.]スラスターはその1/6です。燃料は共用です。
普通にプレイすると、静止トランスファー軌道(GTO)には残燃料量50%で、静止軌道(GEO)には残燃料量30%で到達します。言い換えると、残燃料量30%の重量に相当するペイロードをGEOに載せることが可能ということです。
16,900kg(全燃料量) x 30% = 約5,000kg
PDFには、興味のある方向けの技術解説も記載しています。よろしければご覧ください。
![](https://www.google.com/images/icons/product/drive-32.png)
プログラム・リスト(PB-SIM形式)
[P0]
5 VAC
10 SET F0
15 T=15:Q=6371EX3:N=5972EX21*T*6674EM14:G=9.807:L=422EX5
20 X=Q+408EX3:W=7707:M=2EX4:F=137EX3*.6:I=448
25 PRINT:PRINT ")\TR maneuver"
30 S=X*X+Y*Y:D=E:E=R:R=SQR S:P=N/S/R:IF E<L THEN 40
35 IF D>E;IF E<R;PRINT:PRINT "GEO!";:GOSUB #1:END
40 V=V-P*X:W=W-P*Y:X=X+V*T:Y=Y+W*T:C=1+(R-Q)*2EM7
45 PRINT:PRINT ")";CSR8;(R-Q)*1EM5;
50 IF C<12;PRINT CSR C;"\TR";
55 K$=KEY:IF K$="" THEN 30
60 U=SQR(V*V+W*W)
65 IF K$="Q";PRINT:GOSUB #1:PRINT U;"v":GOTO 30
70 IF M<3100 THEN 30
75 J=1:IF K$=".";J=6:GOTO 90
80 IF K$<>"0" THEN 30
90 A=F/M/J:V=V+T*A*V/U:W=W+T*A*W/U
95 M=M-F/G/J/I*T:PRINT CSR0;:GOSUB #1:GOTO 30
[P1]
1 PRINT (M-3100)/169;"%";:RETURN
PB-100実機形式
注 定数の中の"EX"や"EM"は10の指数表示(エキスポーネント)につかうは小さい"E"や"E-"です。(行番号15,20,40,45)
あとがき
アーサー・C・クラークの小説「2001年宇宙の旅」で描写される木星スイングバイの場面にインスピレーションを受け、当初はスイングバイをネタにゲームを考えていたのですが、PB-100の1行表示では情報不足でどうにもゲーム成立の目途が立ちませんでした。で、あるとき衛星軌道投入のアイデアが降りてきました。これならエンジンON-OFFだけ、情報は高度だけでいいし、実データを使えばリアリティ出るし、何となく憧れる宇宙ミッションを最低限でもPB-100でできたら面白いのではないかと。
マヌーバ時刻が近づいたときの緊張感や、重力を振り切るのは大変なのに静止軌道への投入はとても繊細なこと、エンジン性能がペイロード投入能力に直結すること、さらには天体運動がとてもシンプルな法則で成り立っていることなど、宇宙うんちくがちょっぴりでも実感頂けたら嬉しいです。